そもそも何故、親知らずの抜歯後に臭いがキツくなる?
さて、まずはそもそも何故、親知らず抜歯後の口臭がキツくなるのでしょうか。そのメカニズムを解説していきます。抜歯直後と、しばらく経てから、大きく分けて二種類のケースが考えられます。
抜歯直後に臭う理由
親知らずを抜歯するとそこに大きな穴が開きます。血餅(けっぺい)という血の塊が、かさぶたの役目を果たし、その穴を覆うことで患部は治癒していきます。この過程には1~2ヶ月かかります。その間も人間は食事をしなければいけません。そしてどんなに気を付けていても食べかすは穴の中に入っていきます。穴の中に入り込んで取れなくなった食べかすは、湿度が高く温かい穴の中で細菌に分解されます。わかりやすく言えば徐々に腐っていくのです。これが臭いの原因です。
また、もう一つの原因として出血が挙げられます。抜歯すると数日間は微量の出血が続きます。実は血液はたんぱく質からできていて口の中の細菌の餌になるんです。血液の中にあるたんぱく質を細菌が分解して、メチルメルカプタンや硫化水素などの硫黄化合物を作り出し口臭の原因となるといわれているのです。ちなみに抜歯後に限らず歯周病になると日常的に微量の出血が起こるため口臭が酷くなるのです。
抜歯後、しばらくしてから臭う理由
うがいや、口の中にかかる陰圧など、何らかの原因で血餅が取れてしまわない限り、それほど物が詰まるということはありません。しかし、傷が治ってくるにつれて、今度はじくじくしていた穴がぽっかりと開いたきれいな穴になり、ご飯粒大のものがとても詰まりやすくなります。実は歯茎というのは増殖するスピードが速く、抜いた穴の中に骨ができて完全に塞がる前に表面だけに覆いかぶさってくるため、入り口が狭く中が広い状態になります。そうすると食べかすや汚れが穴の中に入ってもなかなか取れなくなってしまいます。そして取れなくなった食べかすや汚れが腐敗して臭いの原因となるのです。
親知らず抜糸後の口臭対策と、やってはイケないこと
さて、ここからは、実際に口臭対策として役立つことと、口臭が気になるからといってやってはイケないことをご説明いたします。
親知らず抜糸後の口臭対策
まず大前提としていえるのは、時間が最良の薬だということでしょう。栄養や休養をしっかり摂り傷が早く治るように努めるということです。すなわち明らかに有効な手段というのはありません。しかし、応急処置のような方法はあります。
適切なうがい
一つ目は、殺菌作用のあるコンクールやイソジン、ネオステリングリーンなどで、食後や寝る前に軽くうがいをすることです。ただし抜歯後2~3日は血餅が取れてしまう恐れがありますのであまり強くぐちゅぐちゅうがいしてはいけません。もちろん細菌の繁殖を抑えるためにハミガキは優しく丁寧に行いましょう。詰まっているものを無理に取り除こうと爪楊枝や歯間ブラシなどでつつくと逆に傷をつけたり押し込んでしまうこともありますから絶対にしてはいけません。
簡単な応急処置
それ以外の方法として、口臭を他の人に感じさせないようマスクをしたり、スプレータイプのマウスウオッシュで一時的に臭いを紛らせるのも手段の一つです。ガムを噛むのもいいでしょう。ただし、抜歯していない方で噛むことを忘れずに。
やってはイケないこと
口臭がキツイとついやりたくなるのが、うがいや歯磨き。しかし、抜いた傷を塞いでいる血餅が取れてしまうことがあるため、親知らず抜歯直後には、過度の歯磨きやうがいは禁物です。この血餅がニオイの原因と勘違いしている人もいるようですが、実は血餅は抜歯後の傷をかさぶたのように保護している大切なもの。もしこれが取れてしまったら剥き出しの穴に食べかすや汚れが溜まり臭いや細菌感染の原因になるだけでなく抜歯後に酷い痛みが襲ってくるドライソケットになることがあります。マウスウォッシュや口臭予防効果のある歯磨き剤などは効果がありそうに思えますが、過剰に使うと逆効果になりかねないのです。
さらに、気を付けてなければいけないのが舌磨きです。抜歯後などの外科手術後は細菌の働きが活発になり舌苔が増えることがあります。舌磨きグッズもいろいろと販売されていて「舌苔は不潔だから取らなければ!」とゴシゴシ舌を擦って取り除く人がいますが実はこれが逆効果。舌の表面は小さな突起がたくさんあり擦ることによって傷ができてしまうのです。そうするとその傷から出血して、この血液が細菌によって分解され口臭の原因物質を作り出すのです。
どのくらいで臭いはなくなる?
抜歯後の臭いはいつの間にかなくなっているのがほとんどです。つまり傷が治れば物がつまることもなくなり口臭も治まってきますが、具体的な期間は個人差があります。糖尿病などの全身疾患がある人は傷が治りにくいため余計に時間がかかることがありますが、一般的にはおおよそ1ヶ月~2ヶ月程度かかります。
穴の中がまだじくじくとしている時期は、食べ物や汚れが付着しやすく細菌の活動も活発なのでニオイも強くなりがちです。治りかけの時期になるとちょうどご飯粒が入り込んで取れないくらいの穴になりとても気持ちが悪いものですが、うがいなどで比較的取りやすくなります。いずれにしても傷が塞がるまではしばらく我慢するしかありません。
ただし、化膿してしまった場合や骨壊死など重い炎症が起こった場合にはさらに時間がかかることがあります。適切な治療をしなければいつまでも臭いがなくならないばかりか炎症が広範囲に拡がったりすることもありますので、数ヶ月経っても臭いが治まらない時は一度受診して調べてもらった方がいいでしょう。
数ヶ月経っても臭いが治まらない時は歯医者さんを受診しましょう。
親知らずの抜歯後に抜歯した箇所から臭い汁のようなものが出るのですが、これはなに?飲んでしまっても大丈夫?
親知らずの抜歯後の穴を吸うと、中からなんだか臭いのする汁が出てくることがあります。唾液とは明らかに違ってなんともいえない臭いがして苦い液体なので、自分でもすぐわかるほどです。この原因としてまず考えられるのが穴の中に詰まった食べかすが腐敗して唾液と一緒にその成分が流れ出てくるものです。ドブの臭いに似ていると言う人もいます。
飲み込んでも大丈夫なんだろうか…?と心配になる人もいるでしょうが、単刀直入に言えば大丈夫です。あまり気持ちのいいものではありませんし正常な状態ではありませんが、体内に入って分解され排出されますしあくまでも治るまでの一時的なものですので健康被害が出るようなことはほとんどないといえます。
また、傷が細菌に感染し、化膿してしまい膿が出ている可能性も考えられます。その場合腫れや痛みを伴うこともありますので、早めに受診することをおすすめします。化膿している場合には傷の中を消毒して抗生剤を服用する必要があります。
親知らず抜歯後の臭い まとめ
親知らずの後に臭いがきつくなる原因
- 抜歯後の穴から血餅が取れて食べ物や汚れが詰まって腐敗してしまうため
- 血液中のたんぱく質を細菌が分解してっ口臭の原因である硫化ガスを産生するため
口臭対策としてやってはいけないこと
- うがいや歯磨きを強くすること…血餅がとれやすくなるため
- タバコ…傷の治りを遅くします
口臭対策としてやるべきこと
- 殺菌作用のあるうがい薬で優しくうがいする
- キシリトール100%のガムを噛む
- マスクやスプレー式マウスウォッシュでとりあえず臭いを抑える
- 傷の治りが早くなるよう栄養補給と休養をしっかりとる
- 静かに治りを待つ
臭いがなくなる期間
- 個人差がありますが、傷が治る1~2ヶ月が目途
抜歯後の穴から出てくる汁の正体
- 抜歯後の穴に入り込んで腐敗した食べ物や汚れの成分と唾液が混ざったもの
抜歯の穴が塞がるまでの間は仕方ありません。うがいなどで清潔にするよう心がけましょう。
- 化膿している場合は膿かもしれません
抗生剤を服用する必要があります。痛みや出血がある場合歯早めに受診しましょう。
いかがでしょうか。親知らずの抜歯後には様々な苦悩が付きまといますが、痛みや腫れとは違って、直接他人にまで影響を与えるのが「臭い」です。今回の記事を参考にしていただき、適切な対処をしていただければ幸いです。私どもが運営しております”どくらぼ”では、他にも親知らずや、お口の健康にまつわる情報が盛りだくさんです。是非他の記事にも目を通していただき、知識を深めてくだされば幸いです。最後までご覧頂きありがとうございました。
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