歯茎が下がった気がするんですが、そんなことある?
歯茎が下がるという現象は普通、じわじわとゆっくり起こってきます。ですので、大抵はある日突然見た目の変化に気がついたり、冷たいものがしみるなどの知覚過敏が起こって初めて歯茎が下がったことに気がつくパターンが多いようです。一般に、
平均的な値として歯茎は10年で2ミリ下がる、とも言われています。
気がついていないアナタの歯茎も実は下がってきている可能性があるのです。
歯茎が下がる原因
それでは、歯茎が下がる原因とはいったいどういうものなのでしょう?当てはまるものがないかぜひチェックしてみてください。
1.歯周病
歯茎が下がる原因でもっとも多いのが、この歯周病です。歯周病とは歯を支えている骨が溶けてしまう病気ですが、それに伴って歯茎もだんだんと下がっていきます。通常歯周病は初期症状はほとんどなくゆっくりと進行していきますので、気がつくと歯茎が全体的に痩せていた!というようなことも少なくありません。
また、歯周病の治療において歯石とりをした後に、歯茎が引き締まっていきなり歯茎が下がる、ということもよくあります。これは患者さんには結構ネガティブにとらえられがちなのですが、プラークコントロールがしやすくなってセルフケアがしやすくなる、というむしろ良い変化なのです。
2.誤った歯磨き方法
力を入れてゴシゴシ磨いていたり、硬い歯ブラシで日常的に磨くことで歯茎が傷ついて下がってきてしまいます。一生懸命みがいている人によく見られます。
3.歯並び
歯並びがデコボコしているところは、ところどころ歯が埋まっている表面の骨が薄くなっています。骨がもともと薄いところは厚いところに比べて下がりやすいため、そのような部分は歯茎も下がりやすいのです。また、歯並びが悪いとプラークコントロールが悪くなりがちなので、歯周病になりやすいために歯茎が下がりやすい、歯並びが悪いと噛み合わせが強く当たる歯が出てきてしまい、その部分の骨が減りやすくなる、というのも一因です。
4.歯ぎしり、食いしばり
夜間寝ている間に、歯ぎしりや食いしばりをしている場合、歯に非常に強い力が持続的にかかり続けます。多いときは100キロほどの力がかかるとも言われています。それが続くことで、歯は揺さぶられ、その周囲の骨は溶けてしまい、歯茎も下がってしまいます。
5.加齢
生理的な現象として、一般的に歯茎は年齢とともに下がることが多いです。でもこれはブラッシングの仕方の違いなどで個人差もありますので、何十年たってもほとんど下がらない人もいます。
6.歯列矯正後
一般的に成人になってから歯列矯正をすると、多かれ少なかれ歯茎は下がる傾向があります。とくに歯を抜かずに行う非抜歯矯正においては、狭い顎の骨に歯を無理に並べようとするため、骨の幅から歯並びが外れてしまい、その部分の歯茎が下がる、ということが起こる場合があります。
7.不適合な詰め物、被せ物
詰め物、被せ物の辺縁が合っておらず、歯茎に炎症を起こしてしまうことがあります。その炎症は持続し、そのうちにその部分の骨を溶かしてしまい、いずれ歯茎は下がってきます。
8.悪習癖
爪を噛んだり、舌で歯を押したり、歯をカチカチやったりするような癖は、それが繰り返されることにより歯に負担がかかり続けます。そうすることでその周囲の組織が破壊され、歯茎も下がってきます。
自分で治せる?
歯茎が下がってしまった場合、それを自分で治す方法はまずないといっていいでしょう。できるのは、「これ以上下がらないようにする」ということです。時々、「歯石を取ると歯茎が下がって歯がしみるようになるから、歯石は取りたくない」という人がいますが、歯石を放置することで、骨はますます溶かされてしまいますので結果的に歯を早く失ってしまいます。
治療する場合はどんな治療をするの?
どうしても下がった歯茎を回復したい!というような場合には、歯科医院で外科処置を受けるしかありません。現在行われている治療には次の2つがあります。
遊離歯肉移植術
これは歯茎が足りない部分に、よその歯茎を切り取って移植するという方法です。保険診療でも行うことができ、
3割負担で1万円〜1万五千円程度です。
見た目の回復はこれでできますが、歯茎の歯周ポケットを作ってしまうことになりますので、ポケットの中に細菌がなるべくたまらないように、歯科医院で定期的に歯周ポケットのクリーニングをする必要があります。そうしないと、逆に歯周病を進行させる原因になってしまいます。
歯周組織再生療法
歯茎だけでなく骨や歯周組織の再生できれば、それに越したことはありません。歯茎だけ戻しても、歯周ポケットという細菌のたまる場所をつくるだけ、という結果になることもあるからです。一般的なものにはGTR法(歯周組織再生誘導法)、エムドゲイン法、骨移植があります。
<GTR法(歯周組織再生誘導法)>
歯茎の下にGTR膜と呼ばれる膜を滑り込ませて、その上から歯茎を覆うことで骨ができるように誘導する、というものですが、アジア人は歯茎が薄い人が多いため、十分にスペースがとれずに膜がとびだしてきてしまったりすることが多く、いまいち成功率が高くないようです。
<エムドゲイン法>
豚の歯の芽から取り出したタンパク質を、骨がなくなってしまった部分に塗りこみ、骨を作り出す、というものです。歯が生える時と同じ環境を人工的に作り出すことで、骨ができるのを誘導します。ただし、歯の周囲の一部のみ骨がなくなっているケースでしか効果がありません。
<骨移植>
骨がなくなった部分に骨を移植する方法です。自分の顎の骨などから移植するもの(自家骨移植)、牛骨由来やヒトの死体から採取したものを移植するもの(他家骨移植)、人工骨を移植するもの(人工骨移植)などがあります。
歯茎が下がると何が起こる?
歯茎が下がるとこんなことが起こります。
1.見た目年齡が老けて見える
歯茎が下がるとやはり老けて見えてしまいます。
2.歯がしみる
歯茎が下がって歯根が出てくると、とくに冷たいものなどでしみる知覚過敏が起こりやすくなります。
3.ものが詰まりやすくなる
歯茎が下がると歯と歯の下の方のすき間が三角形に空いてきます。そうすると食事のたびに詰まった食べカスをシーハーシーハー爪楊枝で取らなければならなくなります。
4.歯根から虫歯になりやすくなる
歯根部は、歯の上の部分(歯冠部)のように硬いエナメル質で覆われていないため、露出すると虫歯に非常になりやすいという弱点があります。
歯茎が下がらないように注意しなければいけないことはある?
それでは歯茎が下がらないようにするために注意した方が良いことをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
1.歯磨きの仕方に注意する
歯磨きはあくまでも優しく、が基本です。また、硬すぎる歯ブラシは歯茎を傷めます。できれば一度歯科医院でブラッシング指導を受けるのも良いでしょう。
2.歯科医院でメインテナンスを受ける
歯周病から歯を守るために、定期的なクリーニングを受けましょう。歯周病は一度かかると元には戻りません。進行させないことが大事です。
3.ナイトガードをつける
歯ぎしり、食いしばりをしている人は、寝ている間に歯に力がかからないようにナイトガードをつけると良いでしょう。
4.歯列矯正をする
歯並びがガタガタな場合、思い切って歯列矯正をしてみるという方法もあります。しかし、無理な非抜歯矯正はやめて、担当歯科医師とよく相談して歯や歯茎に優しい方法でやるのがよいでしょう。
5.悪習癖をやめる
歯や歯茎をいためてしまう悪い癖は今すぐにやめましょう。忘れてしまう場合には、付箋などを家のいたるところに貼って見えるようにしておくと効果的です。
歯茎が下がる時の注意点 まとめ
最後に歯茎が下がった時の原因や対処法についておさらいしておきましょう。
歯茎が下がる原因
- 歯周病
- 誤った歯磨き方法
- 歯並び
- 歯ぎしり
- 加齢
- 歯列矯正後
- 不適合な詰め物、被せ物
- 悪習癖
歯茎が下がった場合の治療方法
- 遊離歯肉移植術
- 歯周組織再生方法
歯茎が下がることで引き起こる不具合
- 老けて見える
- 虫歯になりやすくなる
- しみる
- ものが詰まりやすくなる
歯茎が下がらないようにするために注意すべきこと
- 歯科医院でメインテナンスを受ける
- 歯磨きの仕方に気をつける
- ナイトガードをつける
- 歯列矯正を行う
- 悪習癖をやめる
いかがでしたか。我々が運営しております”どくらぼ”には、他にも皆様の大切な歯に関する情報が盛りだくさんです!是非他の記事にも目を通していただき、正しい知識を身に付けてくだされば幸いです。今後とも”どくらぼ”を宜しくお願い申し上げます。最後までご覧頂きましてありがとうございました。
歯茎に関する他の記事:
実年齢より老けて見える!歯茎が下がる前に絶対に知っておきたい7つの原因