前歯が欠けてしまった時の応急処置と治療法まとめ
前歯が欠けてしまうことは、誰にでも有り得ることです。そんな時には焦らず冷静にしかるべき対処を取ってください。
前歯が欠けてしまった時の応急処置
食事中や運動をしている時、固いものを噛んだり、ボールが前歯に当たったり、前歯が欠けてしまうことがあるかもしれません。もし痛みが出ている鎮静剤を打ってください。そして、
早めに歯科を受診する
ことが大切です。決して、自分で接着剤をつけてなおそうとしたり、欠けた部分を触ったりしないでください!
前歯が欠けた時の治療
ほんの少し欠けた
少し欠けた部分で舌や口唇を傷つけないように丸めます。見た目が気になるような欠け方の場合は「コンポジットレジン」というプラスチックの詰め物を欠けた部分に詰めていきます。色は元の歯の色に合わせて詰めていきますので、腕のいい歯医者さんであればどこが欠けた部分かわからない位綺麗に治ります。ただ、歯の先端等取れやすい場所にプラスチックを詰めた場合、少し力が加わっただけで(前歯でかみ切る等)簡単に取れてしまいますので注意が必要です。また、プラスチックですので何年もするとその部分の色が変色してくるので色が気になったらやり直す必要があります。
<プラスチックで詰める方法>
プラスチックで詰める方法は保険内での治療と自費での治療の2通りがあり、その違いは「色」の選択の広さにあります。
- 保険内
保険内ですと3〜5色程度から患者さんの歯の色に近い色を選択するので、自分の歯の色から浮いてしまう可能性もあります。
- 自費
自費ですと十数種類の中から、患者さんの歯の色に合わせて色を再現するため、より審美的に治すことができます。また、使用するものによっては保険内のプラスチックよりも強度が高いため、詰めたものが取れにくくなります。
<治療費>
- 保険内での治療…約1500〜2000円程度
- 自費での治療 …約5000〜10000円程度
やや欠けた
やや欠けてしまった場合治療方法は3つあります。まず1つ目は「ほんの少し欠けた」時と同じようにプラスチックで治す方法、2つ目が、ネイルチップのように歯の表面にラミネートベニアを貼り付ける方法。そして3つ目が歯に被せ物をする方法です。
<ラミネートベニア>
歯の表面を少し削り、自身の歯の表面にセラミックでできたチップをくっつける方法です。治療は診療所にセラミックブロックを削り出す機材がある場合は1回の治療ですみます。ない場合は型取りを行い技工所に出すため2度通院が必要です。ラミネートベニアはセラミックのため、プラスティックと違い色の変色がありません。また、歯の表面全体にくっつけるため境目が気になりません。デメリットとしては、前歯でかみ切る等の力を加えると欠けてしまう恐れがあります。
- 治療費…約8万〜10万円程度
<クラウン(被せ物)>
歯を全体的に削り、歯の型取りを行います。治療回数は2回で済みますが、被せ物が出来上がるまでに1〜2週間程度かかります。その間、削った前歯には仮歯を入れて過ごすことになります。前歯の仮歯は取れやすいので食事をとるときは注意が必要です。
<被せ物の治療>
被せ物の治療では、保険か自費かの選択ができます。
- 保険内の治療
保険での治療になると裏打ちが金属になりますので、長年使用していくと歯茎の縁がメタルタトゥーにより黒ずんでくる可能性があります。また、表面に盛ってある白いレジンも着色しやすいために色が変色してきます。歯茎ラインが下に下がってくると金属の部分が見えてきますので長年使用すると審美的問題が色々とでてきます。
- 自費での治療(オールセラミックの場合)
セラミックで被せ物をつくった場合、変色も着色もありません。またメタルタトゥーも起こりませんので長く綺麗な状態を保つことができます。ただ、切端咬合(上前歯と下前歯が切端で当たっている)の場合、セラミックが欠けてしまう可能性があります。普段の食事の際も、前歯で硬いものを噛み切ろうと負荷をかけすぎないようにしてください。
<治療費>
- 保険内での治療費…約7000円程度
- 自費での治療費 …約8万〜15万円程度
自費治療は各歯科診療所が値段を決めるため大きく値段に開きがあります。オールセラミックの全体が白いタイプのものですと1本約10万〜になります。
大幅に欠けた
痛みがある、歯の中から出血するほど大幅に欠けた場合、欠けた部分が神経まで到達していますので神経を抜く処置が必要になります。通院回数は約6〜7回程度と少し時間がかかってしまいます。最終的な被せ物ができるまで約1か月程度期間が必要になります。
<1、神経の治療>
麻酔(ムシ歯治療で使用するものと同じ)を使って治療を行います。回数は約3〜4回で済みます。完全に神経を取り除いたら、歯根に最終的なお薬を詰めて終わります。
<2、土台をたてる>
神経を抜いて空洞になった歯に土台(コア)をたてます。この時、保険か自費かの選択ができます。歯医者さんの治療法によりますが、土台を立てる治療は1〜2回の通院が必要です。
- 保険内での治療
金属の土台が入ります。土台の治療で保険を選択した場合、被せ物も保険になります。金属の土台のメリットは治療費が安く済むことにありますが、金属は撓まないので歯根が割れやすくなるデメリットがあります。歯根が割れてしまったら、抜歯しか次の治療手段はなくなります。
- 自費での治療
自費で土台を入れるとファイバーコアが入ります。金属の土台のデメリットである歯根が割れるリスクが低くなります。(ファイバーコアが撓んでくれるので、歯に負荷がかかりにくくなります)
<3、歯型をとる>
土台が出来上がったら、上下の歯型をとります。約1〜2週間程度で技工所から歯の被せ物が出来上がってきます。この時、歯の色合いをシェードという歯の色見本で確認します。
<4、被せ物をつける>
試適して問題なければ歯科用の接着剤でつけていきます。自費の場合、担当の歯医者さんの方針にもよりますが仮着して、日常的に使用してみて形や色合いに問題なければ接着します。
<治療費>
神経治療費…約4000〜5000円程度
- 保険内での治療…約7000〜8000円程度(メタルコア+前装冠)
- 自費での治療 …約11万〜13万円程度(ファイバーコア+オールセラミック)
セラミックで欠けた前歯の治療をする場合
治療手順
- 歯を削る(1日目)…麻酔をかけて歯を削っていきます。削った歯には仮歯をつけますので、最終的な被せ物ができるまでは仮歯で過ごします。
- 歯型をとる(2日目)…上下の歯型をとります。この時、色見本を使用しながら作成する被せ物の色を決めていきます。約1〜2週間程度待ち時間ができます。
- 被せ物をつける(3日目)…試適して問題なければ歯科用の接着剤でつけていきます。
神経の治療や土台を立てる必要のない場合(「やや欠けた」ような時)は3回の通院でセラミックの被せ物ができます。治療期間は3〜4週間程度必要になります。その間仮歯で過ごすことになります。前歯の仮歯は取れやすいため、前歯でものを噛み切ろうとしない等の注意が必要です。
治療の種類と、かかる費用
<メタルボンド>
金属のフレームにセラミックを焼き付けたものです。
メリット
- 強度が強い
- 表面がセラミックなので変色することがない
デメリット
- 歯茎が黒ずんでくるメタルタトゥーのリスクがある
- 透明度のない白になることが多い(色調はオールセラミックに劣る)
- 歯を裏側からみると金属が出る
- 将来的に歯茎が下がってくると歯と歯茎の境目が黒く見える
- 金額が高い
費用…約10万〜12万円程度
<オールセラミック>
全てセラミックで作成してある被せ物です。
メリット
- 透明度の高い自然歯に近い色合いを再現できる
- 変色しない
- 金属を使用していないため、金属アレルギー等の心配がない
デメリット
- 陶器と同じ材質のため欠けやすい
- 将来的に歯茎が下がってくると歯と歯茎の境目が見えてしまう
- 自身の歯を削る量が多い
費用…8万〜10万程度
<ジルコニアセラミック>
メタルボンドの金属のフレームの代わりにジルコニアを使用ている被せ物です。
メリット
- オールセラミックよりも強度がある
- 全て白のため審美的である
- 金属が溶け出さないためメタルタトゥーのリスクがない
デメリット
- マットな白になるため、オールセラミックに色調が劣る
- 歯を削る量が多い
- 将来的に歯茎が下がってくると歯と歯茎の境目が見えてしまう
費用…10万〜15万円程度
費用は「ジルコニアセラミック」が一番高くなりますが、一番強度に優れ審美的ではあります。ただ、マットな白色になるため、オールセラミックの方がより自然歯に近い色合いになります。メタルボンドの選択もありますが、メタルタトゥーになる可能性もあるし、色調も他の2つに比較して劣るので前歯の治療にはあまりお勧めできません。審美が重要視される前歯の治療にはオールセラミックがオススメです。ただ、歯が黒ずんでいる(もともと金属を入れていた歯)場合はオールセラミックだと色が透けてしまうのでマスキング効果のあるジルコニアセラミックの方が綺麗に仕上げることができます。
前歯が欠けた時に起こりうることと対処法
前歯をぶつけてかけてしまった場合、神経が徐々に死んでしまうこともあります。その場合、色がどんどん変色し黒ずんできます。変色してしまった歯を治すには「大幅に欠けた」時と同じように神経を抜く治療からやっていきます。
被せ物をしたくない場合
被せ物でセラミックを選択できれば一番綺麗になおすことができますが、自分の歯をあまり削りたくない方や変色がさほど濃くない場合はウォーキングブリーチで歯の色を白く戻すこともできます。
歯の管に高濃度の過酸化水素と過硝酸ナトリウムのペーストを封入します。入れ替えが必要なので、数回の通院が必要になります。費用は被せ物を入れるより安価で済み、自分の歯を残すことができます。
費用…10000〜50000円程度
前歯が欠けた時の対処まとめ
最後に、前歯が欠けた時の対処法について重要な点をおさらいしておきましょう。
ほんの少し欠けた
治療方法
- プラスチック(コンポジットレジン)
治療費
- 保険内での治療…約1500〜2000円程度
- 自費での治療 …約5000〜10000円程度
やや欠けた
治療方法
- プラスチック
- ラミネートベニア
- 被せ物
治療費
- プラスチックの保険内での治療…約1500~2000円程度
- プラスチックの自費での治療…約5000~10000円程度
- ラミネートベニア…約8万〜10万円程度
- 被せ物の保険内での治療費…約7000円程度
- 被せ物の自費での治療費 …約8万〜15万円程度
大幅に欠けた
治療方法
- 神経を抜く治療
治療費
- 神経治療費…約4000〜5000円程度
- 保険内での治療…約7000〜8000円程度(メタルコア+前装冠)
- 自費での治療 …約11万〜13万円程度(ファイバーコア+オールセラミック)
セラミックで前歯治療を行う
審美性をとるなら
オールセラミック>ジルコニアセラミック>メタルボンド
(ただし、歯の色が元々黒くなっている場合はジルコニアセラミックの方が綺麗にできる)
強度をとるなら
ジルコニアセラミック=メタルボンド>オールセラミック
- メタルボンド費用…約10万〜12万円程度
- オールセラミック費用…8万〜10万程度
- ジルコニアセラミック費用…10万〜15万円程度
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