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本当に、日本の歯科医はダメなのか?

2016年09月23日 18時00分
コンビニよりも多い歯科医院。歯医者はボッタクリ。歯医者は大工・・・。なぜ、歯科医はこんなに言われないといけないのか。

本当に、日本の歯科医はダメなのか?

コンビニより多いといわれる歯科医院。歯科医師数は約10万人おり、ワーキングプアの歯科医師や倒産する歯科医院が相次ぐなど、歯科医師過剰問題で日本の歯科業界は悲鳴をあげています。

一方、インターネット上では「歯医者は儲けすぎ」「ヤブ医者」「歯医者はバカ」など国民からのイメージはあまりよくありません。

医師達から歯医者は大工だと見下される

 

また、一部では「日本の歯医者はダメだ」という声も聞こえます。では、本当に日本の歯医者はダメなのでしょうか?

なぜコンビニよりも多いと揶揄される歯科医師過剰な状況に陥っているのでしょうか?今回は、そんな日本の歯科の現状を日本の歯科医療の歴史と背景から探っていきます。

 

コンビニよりも多いと言われる歯科医師過剰になった理由と歴史

歯科医師過剰問題は、最近取りざたされているように思いがちですが、実は昭和50年代にはすでに歯科医師過剰問題が指摘されていました。にもかかわらず、なんの根本的な対処も行われなかったので、どんどん状況は悪化しています。

なぜ現状のように歯科医師過剰になっていったのか、日本の歯学部の歴史から見てみましょう。

 

【1.高度成長期 虫歯の大洪水が発生】

昭和40年頃の高度成長期、国民の食生活が欧米化し、加工食品やお菓子などが日常的に手に入るようになって国民の虫歯が大洪水のように発生しました。

その時代、歯科医院の数は現在のように多くなく、患者は朝から歯科医院の前に行列し、虫歯に治療を受けたといいます。歯医者は一日中虫歯の治療に追われ、なかなか治療を受けられない患者の存在が社会問題となり、歯医者の数を増やすことが叫ばれるようになりました。

まだ歯科医が多くなかった昭和36年の様子 橋本歯科医院

 

その頃、人口10万人あたりの歯科医師数が30名のところ、人口10万人あたり50名まで増やすことを目標として政府で閣議決定されました。

 

【2.歯学部を一気に増設】

その頃の田中角栄内閣が、歯学部増設を推し進めます。

1960年代までは、日本の歯学部は以下の7校しかありませんでした。

【私立】東京歯科大学  日本歯科大学  日本大学歯学部  大阪歯科大学

【国立】東京医科歯科大学 大阪大学

 

歯学部全体の入学定員は、約1100名しかありませんでした。しかし、1965年までに以下の6大学に歯学部が新設されました。

【私立】愛知学院大学 神奈川歯科大学 岩手医科大学

【国立】広島大学 東北大学 新潟大学 岩手医科大学

 

さらに、1980年代までに以下の16校が新設されました。

【私立】北海道医療大学 奥羽大学 明海大学 昭和大学 鶴見大学 松本歯科大学 

    朝日大学 福岡歯科大学 日本大学松戸歯学部 日本歯科大学新潟生命歯学部

【国立】北海道大学 岡山大学 徳島大学 九州大学 長崎大学 鹿児島大学

結果、歯学部全体の入学定員は約3500名となりました。

 

昭和40年から増加を続ける歯科医師養成大学 ホームメイトリサーチ

 

 

歯科医師過剰問題の背景には、田中角栄元総理がいた

なぜ、歯科医師はここまで、増えたのでしょうか。それは、田中角栄の手腕と歯科医師会が関係しています。

その頃、歯医者は地位が高く、高収入を得られる職業とあって国民の間でも人気で、非常に倍率が高くなっていました。歯科医師は自分たちの子供を歯医者にすべく、子供が入れる新設歯学部を希望します。世間の「歯医者が不足している」状況と、歯医者側の「子供を歯学部に入れたい」要望が重なり、さらに田中角栄の手腕によって歯学部が一気に新設されたのです。

歯科医師は自民党支持者が多い。それは、田中角栄さんの時代から続いている伝統なんだとか・・・。yahoonews

 

【3.歯科医師過剰に気づく】

人口10万人あたりの歯科医師数を50名にするという目標は、閣議決定してから10年もたたずに達成されました。その後、昭和57年にはすでに歯科医師過剰問題が指摘されるようになり、歯科医師数の削減が叫ばれるようになります。

しかし、一旦新設した歯学部をそう簡単に統廃合することはできません。特に、私立大学の数、定員数ともに多いのですが、私立のため国は「目標提言」をすることしかできず、直接的に削減させることができません。

一方、私立大学側は「国の意向で新設した国立大学をむしろ統廃合すべきだ」との声をあげています。国立大学では、現在定員60名程度に削減している大学も存在しますが、地域医療と大学の研究施設という面もあり、統廃合することが難しい要因となっています。

私立大学では、定員150名程度ですが、定員を削減することは経営を直に圧迫することになり、安易に定員削減を実施することが難しい状況です。このように歯学部・定員削減がなかなかできずにいる中、状況はさらに悪くなっていきます。

定員削減はそう簡単にはできない

 

【4.健康保険負担が増加&虫歯減少で国民の歯科受診率が減少】

1961年に国民皆保険法が制定後、日本では国民全員が健康保険に加入するという国民皆保険体制が確立されました。その当時は本人の負担率がなんと0割だったため、患者は気軽に歯医者を受診し治療を受けることができました。

「痛くなってから歯医者に行けばいい」「虫歯ができたら歯を削って詰めればいい」という国民の意識はこの負担率の低さも影響しているといわれています。

その後、健康保険組合の財政がだんだんと悪化するにつれ、国民の負担率は0割→1割→2割→3割と上がっていきます。医療費が家計を圧迫するため、歯科受診を控えるようになります。

さらに、あれだけ虫歯の大洪水であった国民の歯も、8020運動やフッ素塗布など予防意識の浸透で虫歯が減少していきます。

 

その結果、歯科受診が減り、歯科医院あたりの患者数はますます減っていきました。歯科医院での1日あたりの平均患者数は昭和57年で約30人だったのに対し、平成22年には約18人まで減っています。(日本歯科医師会調べ)

患者数の激減は保険診療の収入悪化となり、歯科医院の経営は悪化し、倒産に追い込まれたり、年収300万未満の歯科医師を生み出したりしています。

毎日数十人の口の中をひたすら治療しているにも関わらず、300万を下回るものも。儲け過ぎとは言い難い・・・ gareergarden

 

【5.歯科医師国家試験の超難化】

歯科医師の間でこれ以上歯科医師過剰を放置しておけないと大きく声が上がる中、大学側は歯学部削減や定員削減を行えない状況が続いています。厚生労働省は、歯科医師数を削減する措置として、歯科医師国家試験を超難化するようになります。

従来は歯学部で学んだ内容を真面目に復習しておけば合格できる、資格試験の意味合いが強い試験で、合格率は80−90%ありました。現在の医学部も90%を超えています。

医師国家試験は9割の合格率が続いている。医師資格SEEK

 

しかし、2000年以降、歯科医師国家試験は急激に難化し、合格率が60%台まで下がっています。これは他の国家試験と比べても異常な数値で、多肢選択問題(スーパーX問題)の導入など、歯科医師国家試験のみ難問奇問を導入しています。私立大学では、合格率が3割にも満たない大学も出ています。

【第108回歯科医師国家試験合格率ワースト5】

松本歯科大学 28.4%

奥羽大学   38.65%

岩手医科大学 49.48%

日本歯科大学新潟生命学部 53.91%

朝日大学 54.61%

 

このように歯科医師国家試験を難化しても、実際の歯科医師国家試験合格者は毎年2000名を超えています。日本歯科医師会では需要供給のバランスから新規参入歯科医師数を毎年1500名を上限に掲げており、まだ500名ほどオーバーしています。

これ以上国家試験を難化させて合格者数を減らすことは資格試験の性質上難しく、また定員削減や歯学部統廃合も難航しています。

歯科医師過剰問題は解決しそうにありません。

 

◼︎歯科医師過剰の問題点

歯科医師過剰になると、歯科医院の間で競争が起こり、患者側にとっては選びたい放題で良いことだ、と思っている方がいるかもしれませんが、実は違います。歯科医師過剰は、患者にとっても不利益を被ることになります。

それでは、歯科医師過剰による問題点をみてみましょう。

 

1)歯科医院収入減少による、過剰診療

1日あたりの患者数が減り、収入が減少すると、経営のために当然コスト削減と収入増加させようと院長は考えます。

その結果、

・必要のない治療を行い、保険点数を稼ごうとする過剰診療

・消毒滅菌管理を怠って、コストを減らす

・カルテ上に行っていない診療を請求する、過剰請求

・歯科衛生士を雇わず、資格のない歯科助手に治療行為まがいをさせる

・中国など、精度や衛生管理の低い海外の技工所に技工物を発注してコストを減らす

など、違法で悪徳な行為をする歯科医が増える要因となります。これらの行為を患者が見抜くことは難しいです。

全ての歯科医師がそういうわけではないです!私は健全な経営を行っている歯科医師を多く知っています!しかし、中にはこうした歯科医も存在するということを患者である私たちは知るべきです

 

2)歯学部志願者数減少により、歯科医師のレベルが落ちる

歯科医師過剰問題は国民にも知れ渡っており、歯学部の人気は落ち続けています。特に、私立大学の入学志願者数減少が顕著で、一部の私立大学では半数が定員割れとなり、全入となっています。私立歯学部では、留年者を増やすことで国家試験合格率を下げないようにしており、退学者も続出しています。留年、国試浪人すると高額な学費がさらにのしかかります。

開業資金を踏まえると投資に見合ったリターン(開業医の稼ぎ)が得られないため、親たちは子供を歯学部に入れるのを敬遠するようになっています。その結果、以前は医学部の滑り止めとして歯学部を受験していた者も、受験すら敬遠するようになり、歯学部の偏差値が落ち込んでいます。現在では、偏差値40台の学力の低い者が歯学部に入学する事態が生じています。

基礎学力がない者が歯科医師になることは、日本の歯科研究界でも臨床現場でも問題視されています。

基礎的な学問しっかりとやりましたか?という歯科医も中には存在する TBD

 

3)開業医が保険診療を捨て、自由診療ばかりを推奨するようになる

多くの歯科医師は、歯科医師過剰問題をとても深刻に受け止めています。歯科診療に対して不当に低すぎる保険点数への不満(諸外国の10分の1!)と、患者数の減少により、「真面目にやっても赤字になる保険診療がバカばかしい」と保険診療を捨て、自由診療にシフトする歯科医院が増加しています。

自由診療は、もちろん悪いものではありません。良い素材を制限なく使用でき、患者さんにとって最高の治療を行うことができます。しかし、一方で全額自費治療になるため患者さんの負担は増します。

そこで、良識のある歯科医師達は自由診療を勧める一方、患者さんに「痛くなってから歯を治療すればいいという意識を変えて、虫歯をつくらないような予防意識を高めてほしい」と予防歯科を勧めています。実際に、ここ10年で予防歯科を掲げる歯科医院が急増しています。

患者さんのためを考えれば自由診療は当然の選択。しかし、残念なことに中には技術もないのに、お金のために自由診療をすすめる歯科医もいる。toonpool

 

本当に日本の歯医者はダメなのか?

ここまで読んで、歯医者に対してどのような印象を持たれたでしょうか?

「今の歯医者は気の毒」「イヤイヤ、やっぱり歯医者はダメ」でしょうか。

「歯医者の自己責任、自業自得だ」とお思いでしょうか。

 

国民の口の中に銀歯が多く、「痛くなってから歯医者に行く」という意識が強く、予防が浸透ししていないのは、ひとえに安価で受けられる保険制度のせいといわれています。

アメリカでは全額自由診療なので、国民の予防意識が非常に高く、中流以上の人で銀歯の人はまずいません。予防を怠った低所得者は、高額な治療費を支払えないため、根の治療を行えば助かるところを抜歯しか選択肢がなく、若者でもほとんど歯がない人が存在します。しかし、「予防を怠ったのだから自業自得」とされています。

世界でもワーストクラスに歯医者さんに通い予防を行う習慣がない日本人(北久米どい歯科)

 

日本の歯科のレベルは世界でもトップクラス

日本の歯科医療レベル(歯を削る技術、詰め物・差し歯などを作る技術)は世界的にみても遜色なく高いレベルを誇ります。しかし、その技術に対する対価(保険点数)は先進国平均の10分の1にも満たしていません。

治療費が世界的に見ても安すぎる日本。つまり、歯科医は適切な報酬を手に入れることはできない

 

なのに、「日本の歯医者はダメだ」といい、過当競争をさせ、設備や内装、接客に至るまで高級店並みのサービスを保険診療でしろと望んでさせているのが現在の日本です。

 

歯科医師過剰でかつ保険制度が破綻しつつある現在、歯科医院が保険診療から自由診療へシフトしていくのは当然の流れといえます。虫歯や歯周病は、一部の遺伝子疾患を除いて食生活改善や歯磨き、定期健診でほぼ100%予防できる病気です。ある意味、虫歯になるのは「自業自得」なのです。

 

厚生労働省は、社会保険費を削減しようと、歯科保険適応範囲をさらにはずし、自由診療に移行させる考えを持っています。予防を怠り、虫歯を放置していると、そのうち自由診療でしか治療を受けられない時代が来るかもしれません。

日本の保険制度は素晴らしいものです。国民に負担が少なく平等な医療を受けさせることができる世界でも胸を張れるシステムです。しかし、そのシステムも月日が経つにつれ、崩壊の一途を辿っています。年金が崩壊するのと同じように、国民皆保険制度もまもなく崩壊すると言われているのです。

私たちは、自分たちのカラダを自分自身で守らなければならない時代に差し掛かっています。しかし、そうした時代がくるということに危機感をもっている人はほとんどいません。安心、安全な日本という国が私達の危機感を和らげてしまいました。

保険制度が崩壊し、怪我をしても自ら傷口を縫い、歯の激痛に耐えられず自分自身で歯を引っこ抜かねばいけない時代がすぐ側にきているのです。アナタはそれでもまだ健康について、無関心でいられますか?

 

世の中には勉強熱心な歯科医がたくさんいる

今や、SNSやWebメディアが盛んなので、情報は驚くほどに手に入ります。そして、勉強熱心な歯科医の方々はFacebookで最新の医療の情報発信を行っている方が非常に多いです。内科医と連携を行い、医科と歯科の情報を発信している方、世界の学会に参加し世界の医学の情報を発信している方など非常に多いです。

医師と異なり、競争にさらされている歯科医だからこそ、医療の危機感に対し医師よりも敏感です。そうした彼らから多くの情報を得て頂ければと思います。最後にもう一度くりかえしますが、アナタのカラダを守るのは、あなた自身です。

以上になります。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

また、今回記事を書かせていただいたこちらの医療メディアを運営しております内田もフェイスブックで医療の情報を発信しておりますので、いつでもお気軽にともだち申請をしてください。内田個人のFacebook

私はこちらの歯科のサイトの立ち上げから関わり、世界の医師、歯科医を中心とした方々と連携し医療や健康の情報を発信し続けてきました。おかげさまで今や月に60万人の方が訪れるサイトにまで成長致しました。これからも皆様のお役に経つ情報を発信していきますので、何卒よろしくお願いいたします。

 

今回は最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 

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