そもそも唾石症って何ですか?
唾石症は明確な原因は不明ですが、唾液腺から剥がれた部分や細菌を中心として、その周りに唾液に含まれるカルシウムが張り付いていき、結石(けっせき)、つまり石のようになったものと言われています。唾液腺には様々なものがありますが、その中でも唾石症は顎下腺(がっかせん)という顎の下にある唾液腺に起こりやすいと言われています。唾液腺は他にも大きなものとして耳の前や舌の下にあり、小さいものは様々な部分に散らばっていますが、それらの部分に唾石ができる事は少ないと言えます。
また唾石症は唾液腺や排泄導管に対してどのような位置にできているかによって分けられ、それぞれで治療法が異なっています。詳しく記載すると唾石ができる場所は3つに分けられます
- 唾液腺そのものの中(腺内唾石;せんないだせき)
- 唾液腺からつながっている排泄導管の根元の方で、排泄導管の中にあるけれど唾液腺の外に出ていない部分(移行部唾石;いこうぶだせき)
- 唾液腺の外にある排泄導管の中(管内唾石;かんないだせき)です。
唾石症の症状
唾石が小さく、唾液が流れている場合は症状が無いことが多いです。問題となる場合は唾石によって唾液が流れ出なくなった時です。この時は食事の際に唾液が出ても唾液は口の中に出ていけないため、鋭い痛みが現れます。そしてこの唾石症を原因として炎症が起こった場合、多くの症状が現れます。炎症とは身体が細菌や刺激に対して防御をしている状態ですが、そのために体に症状がでます。ここでは唾液が口の中に放出される、小さい穴のような出口が赤くなり、そこが腫れてきて、膿が出ることがあります。さらに状態が悪くなると、口腔底(こうくうてい)と呼ばれる舌の裏側のあたりから下の前歯の裏あたりにかけて、赤くなる事、むくむ事があります。
顎下腺からの排泄導管の中にできた唾石、つまり管内唾石はある程度の大きさになると肉眼でも見えます。また腺内唾石や移行部唾石については、炎症を起こすと上記の部位に加えて、首の横辺りから顎の下にかけて症状が起こります。この時は蜂巣炎(ほうそうえん)と呼ばれる、皮膚やその下に起こる炎症も起こる可能性があります。蜂巣炎により赤くなる事や腫れる事、痛みに加えて、発熱なども現れることがあります。
唾石症の原因
上記の通り明確な原因は特定されていませんが、現在最も支持されている説は上記の通りです。唾液腺からでてきた物や細菌に対して唾液に含まれるカルシウムが付着していき、カルシウムの石が結石として表れていると言われています。
併発する可能性がある病気
唾石症は上記の通り、唾液腺および排泄導管の中に結石、つまり石ができる病気を指します。唾石症に伴って引き起こされる病気の代表としては、非特異性唾液腺炎(ひとくいせいだえきせんえん)に分類される急性唾液腺炎(きゅうせいだえきせんえん)、あるいは化膿性唾液腺炎(かのうせいだえきせんえん)があります。この病気により、発熱や全身がだるいという症状、そして上記のような赤くなる事や腫れる事、膿が出る事といった症状が現れます。治療はまず安静を保ち、抗生物質での治療を行います。また急性唾液腺炎のように激しい症状は無い場合も、気付かずに慢性唾液腺炎(まんせいだえきせんえん)という状態で過ごしている可能性があります。この場合、全身の状態が悪い時、例えば疲れている時などに急性唾液腺炎となる事を繰り返すことになります。これらのような場合は唾液腺を見るためのX線写真で調べる必要があります。
また、唾石症の治療では手術を行う事も少なくありません。この手術には状態に合わせて2つの方法があります。その内1つは、排泄導管を切り開いて唾石を取り出すものです。この場合は粘液嚢胞という、中に液体がつまった袋が現れる事があります。治療法については下に詳細を記載します。
治療法
唾石症の治療は手術を行います。手術の方法は2種類あり、唾石ができた場所によってどの方法で治療するかが決まります。
1、排泄導管の中にできた唾石症、管内唾石に対する手術について
この場合は先述のように口の中から、排泄導管を切り開いていき、唾石を取り除きます。ここではX線の写真から、唾石の形や個数を調べてから手術に入ります。取り出した後は排泄導管を開いた状態にする場合と、縫う場合があります。
2、腺内唾石や移行部唾石に使用される方法について
ここでは症状がない場合は様子を見ていきます。そして症状が繰り返して起こる場合は、唾液腺を全て、そして唾液腺内に入っている排泄導管である移行部を含めて取り除きます。
その他の方法について
上記の方法の他に、一部では漢方の使用によって唾石症を治療しているという報告があります。使用される漢方は唾石散料というもので、研究では2人の患者が治療に成功しています。しかしながらそれぞれの研究結果からは、未だ漢方は効果があるとは断定できない研究途上の治療と判断できます。そのため漢方による治療を希望する場合、主治医の判断のもとで適切に治療を受けることが望ましいと思います。
再発の可能性
唾石症は摘出後に再発する可能性があります。特に管内唾石は再発しやすいものと言えます。管内唾石だけを摘出した後に再発し、特に奥歯の近くにある唾石については、上記の腺内唾石や移行部唾石と同様に、顎下腺ごと摘出することになります。基本的にはこの手術を行う事で、摘出した側については再発の恐れはなくなります。再発する可能性がなくなる理由は、摘出した側の唾液腺が無くなることで、唾液を作ることができなくなる事ためです。しかしながら摘出をした方と反対側には唾石ができる可能性は残ります。これは反対側の顎下腺に通常通り唾液を作る機能が残っているためです。
予防方法について
明確な原因は上記の通り不明です。そのため海外の研究結果を含め、現在は明確な予防法は確立していません。しかしながら早期に発見できた場合、顎下腺摘出といった大掛かりな手術を避ける治療法があります。その治療法は唾液腺内視鏡(だえきせんないしきょう)と呼ばれるものです。口の中から排泄導管に小さい入り口を作り、そこから内視鏡を入れて唾石を取り出します。つまり胃カメラのように排泄導管の中を見ながら、唾石を取り出すことができます。この治療法によって5mm程度までの管内唾石が摘出できます。さらに5mm程度以下であれば移行部唾石まで摘出できるため、顎下腺の摘出を予防することができます。
また早期の発見から顎下腺の摘出を予防するにあたり、口の中の軽度の違和感から歯科医院を受診することが重要です。例えば1つの症状として口の中の唾液の量が減ったという事が、上記の痛みや腫れなどの症状より先に現れることがあります。乾いている感覚がない場合でも、口の中がべたつく事や飲み込みにくくなるという事等も口の渇きから起こっている可能性があります。これは他に飲んでいる薬の可能性もありますが、唾液がつまって出なくなっている可能性もあります。歯科医院で口全体を写すX線写真であるパノラマX線という写真を撮影すると、唾石が映る事があります。顎下腺を摘出しなければならない可能性は残りますが、上の内視鏡のような治療で対応できる場合などもあります。少しでも違和感がある時には、歯科医院を受診することが望ましいと思います。
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