口の中にほくろのようなものが!見慣れないものを見つけてしまうと「悪いものではないか?」などと不安になってしまいますが、実際口の中にできるほくろのようなもののほとんどは良性です。今回は口の中にできるほくろのようなものに関して一体それは何なのか、ということを解説していきます。
そもそも口の中にもホクロはできる?
口の中の粘膜は皮膚に比べてメラニン色素の分布がはるかに少ないのは確かです。しかし、黄色人種を含む有色人種においては歯茎や、唇、頬の粘膜にメラニン色素が沈着することは決して珍しくありません。大人、子供関係なくできます。また、盛り上がったいぼのようなほくろ(色素性母斑)もできることがあります。
また、ほくろのように見えるもので、血豆である場合もよくあります。これは頬を噛んだり、歯ブラシで傷つけたりなどの刺激でできる内出血です。
また、 ポイツ・ジェガーズ症候群という内臓の病気が原因で口の中の粘膜に色素沈着を起こすこともあります。ですがこの病気は12万人に1人と非常に稀な病気です。
口の中のホクロが悪性腫瘍だった時に出やすい特徴や症状。こんなホクロの場合は病院に!!
■口の中の悪性腫瘍とはそもそもどんなもの?
口の中のホクロが悪性腫瘍の場合、悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれます。悪性黒色腫は皮膚や粘膜にでき、全身のうちの10%は口の中にできると言われています。はじめは黒や黒褐色、黒青色のシミの状態で現れ、その後盛り上がってホクロのようになってきます。またガンのなかでも非常に悪性度が高いとして知られています。
悪性黒色腫は、日本において人口10万人に1.5-~2人の割合で発生する程度であり、発生頻度的には多くはありません。家族内に多発するとの報告もあり遺伝的にかかりやすい家系があるとも考えられています。
血豆やホクロの場合、円形、楕円形をしており境界がはっきりとしています。また、血豆の場合は数日経つとなくなります。それに対し悪性黒色腫はいびつな形をしており境界がはっきりしません。また消えてなくなることもありません。
■口の中のホクロが悪性腫瘍だった場合、出やすい特徴は?
悪性黒色腫においては次のような特徴、症状がでます。
- 膨らみが急に大きくなる
- 色が点状に変色する
- 色が濃くなる
- 色がまだらになる
- 縁が不規則ないびつな形である
- 出血する
- そこの部分の皮膚が破れる
- かゆみがある
- 痛む
これらの症状がある場合には医師の診察を受けてみましょう。
■どんな治療法がある?
粘膜内で増殖していないものは手術でほぼ100%が治ります。手術では腫瘍とその周囲の粘膜を切除します。しかし、内部に1mm以上侵入している場合、血管やリンパ管を通じて転移する可能性が高くなってきます。転移した場合は化学療法で治療を行います。
悪性黒色腫は非常に悪性度の高い腫瘍です。ゆえに、ある程度進行してしまった悪性黒色腫は、手の爪、足の爪からできたものは手首、足首から切り落とす、ほどの治療がおこなわれていました。しかし、口の場合、首から切り落とすわけにはいきませんので、どうしても手術で取りきれない部分が出てしまうため、放射線治療も併用します。
一般的に転移してしまった悪性黒色腫は治癒することはほとんどないと言われています。様々な治療を行っても余命が数ヶ月、ということも少なくありません。ですが個人の免疫能力によっても違いが見られ、健康な状態で数年生き延びる人もいます。最近ではインターロイキン-2 (体が悪性黒色腫の細胞を攻撃するように働きかける)やワクチンなどの新しい治療法によって将来有望な結果が出ているという報告もあります。
■何科に行けばいい?
口の中のほくろのようなものが気になったらまずは歯科医院で診てもらうとよいでしょう。その際、口の中の粘膜の病気に詳しい口腔外科の医師がいる歯科医院だとより確実です。その後必要に応じて大学病院などの大きな病院に紹介され治療を受けることになるかもしれません。ほくろが悪性であるかは生検といって、組織を切除した後に細胞を顕微鏡で見ることによって診断します。
部位別口の中のホクロの原因や対処法
1歯茎にホクロが出来た。
歯茎にホクロ状のものが見られる場合、メラニン色素、銀歯などの金属のイオンが歯茎に入れ墨のように溶け出したもの(メタルタトゥー)、などが多いです。これらの場合はのちに通常変化することはなく、放っておいても問題はありません。ですが、まれに悪性のものもあります。その場合は点状のものが膨らんだり、周囲に広がってきたりしますので診察を受けましょう。
2ほほの内側にホクロが出来た。
ほほの内側の場合に多いのが血豆です。血腫とも呼ばれます。誤って噛んでしまったり、歯ブラシなどでつついてしまったりすることでよく起こります。真っ黒な円形のほくろのような感じで現れます。これは数日経つと消えてなくなりますので心配ありません。また、メラニン色素の場合もとくに問題ありません。悪性のものの場合は消えてなくなったりすることはなく、膨らんできたり大きくなってきますので放って置かないほうがよいでしょう。
3口の中の粘膜にホクロが出来る
他の口の中の粘膜、例えば口蓋(口の中の天井の部分)や舌の下の粘膜にも良性のメラニン色素の沈着は起こります。その場合は様子を見ても大丈夫です。
口蓋は歯茎とともに口の中で悪性黒色腫ができる好発部位のひとつですが、見えにくい場所であるため、気づかないことが多く発見が遅れがちです。このような異変をいち早く発見するためには、定期的に歯科の検診を受けることが非常に重要です。
口の中にホクロができたらやってはいけないこと
口の中にほくろができたら、勝手に「血豆だから」などと自己判断をして破ったり針などでつついたりするのは止めましょう。仮に単なる血豆だったとしても、破ってしまうことにより感染を起こすもとになる可能性がありますし、もしもそれが悪性黒色腫だった場合、ガン組織を刺激することにより、がん細胞が血管やリンパ管を巡って全身に飛んでしまう場合があります。
また、単なるほくろの場合でも触りすぎて過剰な刺激を与えることによって、がん化する場合もある可能性がありますので、気にしすぎて触ることは止めましょう。
口の中のホクロ まとめ
■口の中のほくろ状のものの正体
- メラニン色素の沈着
- 盛り上がった良性のほくろ
- 血豆
- 内臓の病気の一症状として口の中にメラニン色素沈着が見られるもの
- 悪性黒色腫(メラノーマ)
■悪性黒色腫とはどんなもの?
- 皮膚や粘膜にでき、全身のうちの10%は口の中にできる
- はじめは黒や黒褐色、黒青色のシミで現れ、その後盛り上がってホクロのようになる
- 日本では10万人に1.5-2人の割合で発生
- 家族内に多発することもある
- 非常に悪性度が高い
- 良性のほくろのように円形、楕円形でなく境界不明瞭ないびつな形をしている
- 血豆のように消えて無くなることはない
■悪性黒色腫の特徴、症状
- 膨らみが急に大きくなる
- 色が点状に変色する
- 色が濃くなる
- 色がまだらになる
- 縁が不規則ないびつな形である
- 出血する
- そこの部分の皮膚が破れる
- かゆみがある
- 痛む
■悪性黒色腫の治療法
<粘膜内で増殖していないもの>
手術でほぼ100%が治る。手術では腫瘍とその周囲の粘膜を切除。
<内部に1mm以上侵入しているもの>
転移している可能性がある。その場合は化学療法で治療。
<ある程度進行した口腔内の悪性黒色腫>
大幅に切除手術ができないため、放射線治療も併用。
- 転移すると治癒はほとんど見込めない。
- 最近ではインターロイキン-2やワクチンなどの治療法によって有望な結果が出ている。
■悪性黒色腫はどの診療科?
- 口の中のほくろが気になったらまずは歯科医院へ(口腔外科医のいる医院がより良い)
- その後必要に応じて大学病院や口腔外科のある病院へ紹介される
■部位別口の中のホクロの原因や対処法
1歯茎のほくろ
- メラニン沈着、メタルタトゥーの場合には経過を見ても問題無い
- 膨らんできたり広がってきたリする場合は悪性黒色腫の疑いがあるため診察を
2ほほの内側のホクロ
- 血豆やメラニン沈着の場合は経過観察
- 血豆のように消えてなくならず、膨らんだり大きくなる場合には診察を
3口の中の粘膜のホクロ
- メラニン沈着の場合は様子を見ても大丈夫
- 悪性黒色腫の多発部位である口蓋は発見が遅れがちになるため、歯科での定期検診が需要
■口の中にホクロができたらやってはいけないこと
- 血豆などと自己判断をし、潰そうとしたり、針などでつついたりしない
- 無駄に触らない
<理由>
血豆の場合、感染を起こす可能性
悪性のものの場合、転移を起こす可能性
ほくろの場合、刺激によりがん化させる危険性
口の中にほくろやそれらしきものを見つけると気になって、舌や指でいじったりしたくなるかもしれません。しかし、あまりいじりすぎるのは禁物です。そもそも、悪性黒色腫はガンの中でもそれほど罹患率の高い病気ではありません。ちょっとほくろのようなものを見つけたからといって「がんかもしれない・・」と思うのは早合点です。
口の中にもほくろは普通にできますし、血豆などもよく見られるものですので、口の中に黒いものを見つけたからといっても慌てず、急に大きくなったりするようであれば、歯科を受診してみましょう。また、口の中でも見えにくい部分などの場合は気づきにくいため、虫歯や歯周病を予防する上でも、歯科医院で定期的に検診を受け、口の中の異常をできるだけ早期発見できるようにしておくのは非常に大事であると言えるでしょう。