前回、予防歯科の基本について、お伝えいたしました。
予防歯科において重要なことは、自分で行うセルフケアと歯科医や歯科衛生士が行うプロケアの2点が重要であるという観点からお伝えいたしました。
今回は、いよいよ、予防歯科の選び方について解説致します。
予防歯科医の選び方
予防歯科を行っている歯医者さんは増えています。そのため、どうやって選んだら良いのか、どんな基準で選んだら良いのか悩んでしまう事もあるでしょう。虫歯や歯周病の予防についてしっかりと考えている予防歯科医院を選ぶために、次のようなポイントに注意してみましょう。
医院が清潔に保たれている
医院の設備や治療器具が清潔に保たれている事が重要です。歯科医療現場では、患者さんから患者さんへ細菌が感染しないようにするのが基本です。それは、虫歯菌や歯周病菌はもちろんですが、ウイルス性肝炎やエイズの感染を避けるためにもとても重要な事です。
歯科治療は、唾液や血液が治療器具に付着する可能性があるため、治療する患者さんごとに、細菌やウイルスを死滅させる処理「滅菌・消毒」を行う事が基本です。
器具の滅菌・消毒が適切にされているのかを判断する事は難しいので、待合室や受付や洗面所、診療台が清掃され清潔に保たれているかをチェックするのが良いでしょう。院内が清潔であれば、恐らくですが、治療器具や設備の滅菌・消毒も丁寧にされている可能性が高いでしょう。
院内感染へはこちらの記事を参照:院内感染を怠っている歯科医院に気をつけて
スタッフや受付の対応
電話口や受付でのスタッフや受付の対応が良い歯科医院を選びましょう。その歯科医院が、患者さんの事を第一に考えている医院であれば、丁寧な対応をしてくれるでしょう。
会話をしたスタッフは、多くのスタッフの中のひとりかもしれませんが、スタッフの対応には、院長の経営方針が反映されるものです。歯科医院内で、きちんと方針を共有し合っている医院であれば、患者さんにとって最善の丁寧な対応をしてくれるはずです。
予約をすれば、待ち時間が少ない
ほとんどの歯医者さんは予約制になっています。歯科治療において、患者さんひとりひとりに合った治療を十分に行うためには、必要な時間をきちんと確保しておく必要があるためです。
予約どおりに診てくれる歯医者さんは、それだけ患者さんの歯科治療を計画的に行い、それぞれの患者さんの事を考え、待たないよう配慮している歯医者さんです。
予防歯科に力を入れている歯医者さんでは、一般歯科治療枠とは別に、クリーニング専用の予約枠を設けてある所が多く、予防歯科に十分な治療時間を確保してもらえます。
記録をしっかりとり、管理して残している
歯科治療の治療記録はカルテをきちんと残す事が義務づけられていますが、例えば、歯磨き指導の記録、汚れの付着部位の記録などは、義務づけられているわけではありません。予防歯科には必要な大切な記録やメモであっても、治療には直接関係の無い記録である事も多いでしょう。本当に予防歯科の事を考えている歯医者さんは、過去の指導記録などをきちんとしっかりとっています。
また、お口の状態の経過は、レントゲン写真や口腔内写真を参考にしますので、それらの記録がきちんと整理された状態である事も必要です。
記録をしっかりとっているか、管理して残しているかは、説明の時にきちんと過去の記録内容を提示して状態の変化などを、説明してくれるかどうかでわかります。
予防歯科医の良い悪いをホームページから読み取るには
最近では、ほとんどの歯科医院がホームページを持っており、ホームページで歯科医院の情報を知る事ができます。一般の診療情報だけではわからない事も記載されているので、事前にしっかりと目を通しておく事をおすすめします。具体的には次のような項目に着目すると良いでしょう。
歯科医院のコンセプトに予防歯科についての記載があるか
ホームページのトップページや医院紹介ページには、その歯科医院のコンセプトが記載されています。その歯科医院が、どのような考え方で歯科医療に取り組んでいるかがわかります。その考え方の中に予防歯科についての記載がある歯科医院がおすすめです。
予防担当の歯科衛生士が在籍している
歯科衛生士は予防歯科のプロフェッショナルです。歯の治療に関しては、もちろん歯科医師がプロフェッショナルですが、訓練された歯科衛生士は、予防歯科の知識やクリーニングなどの予防処置に関しては、歯科医師よりもプロフェッショナルです。歯科医院に予防歯科担当の歯科衛生士が在籍している所は、予防歯科に力を入れているといえます。
歯科衛生士が在籍している歯科医院でも、人でが足りず、歯科衛生士が予防歯科では無く、診療補助ばかりしているところもあるので、ホームページで“予防歯科担当”の歯科衛生士がいるかどうかを確認しておくと良いでしょう。
唾液検査を行っているか
予防歯科に力を入れている歯科医院は、歯磨きやクリーニングをするだけで無く、虫歯になる原因を探り出し、その内容に応じて、患者さんひとりひとりに合った予防歯科を提供しています。
歯磨きやクリーニングだけでなく、虫歯の原因を唾液検査によって科学的に調べ、根拠に基づいた予防歯科をしている所がおすすめです。
予防に唾液検査は既に常識になりつつある。
こんな予防歯科はおすすめしません!
治療優先の歯科医院
治療ばかり優先する歯科医院は、おすすめしません。もちろん悪い箇所があれば治療が大切です。最終的には、「治療の必要のない状態」を作る事が目標です。あちこち治療ばかりを勧められ、予防歯科の話が出てこないような場合には、少し注意した方が良いかもしれません。
説明が不十分
治療計画などについて説明不十分だと感じる場合には、歯科医師と患者さんとの信頼関係が作りにくく、おすすめできません。何より、説明がよくされていなかったり、説明がわかりづらいと、とても不安になりますよね。自分の健康を預けるのですから、説明をしっかりとしてくれる安心できる歯科医院を選びましょう。
歯磨き指導をしない
予防歯科は、歯科医院でのクリーニングだけでなく、自宅での歯磨きが重要です。歯磨き指導をしないで、クリーニングばかり勧めてくる歯科医院は、あなたの歯を「治療の必要のない状態にしていこう!」と本当に考えてくれてないかもしれません。
土日祝診療・夜遅くまで診療している
一概にだめな予防歯科医院とは言い切れませんが、場合によってはおすすめできない歯科医院になります。
土日祝もやっていたり、夜遅くまで診療していると、仕事の合間に通いやすい良い歯医者だと思う事があります。しかし、一般的に歯科医療従事者向けのセミナーや勉強会は土日祝に行われる事が多く、夜遅いと勉強する時間も取れていない可能性もあります。
もちろんこのような医院でも、スタッフが多く、交代で勉強会に行くなど、予防歯科に大変力を入れているとても良い医院もあるので、だめな予防歯科だとは言い切れません。自分の予約の取りやすさだけで選ばない事が大切です。
悪い予防歯科にひっかかってしまったら
悪い予防歯科にひっかかってしまうと、“ただ通っているだけで、予防ができない”という事になります。そのまま通院を続けていても意味がありません。別の歯科医院に変えるのが良いでしょう。
(1)セカンドオピニオンに頼る
まず、治療の内容に疑問を感じたら、セカンドオピニオンに頼ってみましょう。セカンドオピニオンとは、現在受けている治療について、主治医以外の意見を求める事をいいます。
歯科医師によって、経験や考え方も違いますから、主治医とは違った意見を聞く事で、今行っている治療が適切かどうかを自分で判断する事ができます。
セカンドオピニオンを快く受け入れてくれる歯科医院は多いので、安心してください。予約の際に「セカンドオピニオンで、お口の中をみてもらいたい」旨をあらかじめ伝えておくと安心でしょう。
(2)連絡をして通院を止める
自分の意見をすぐに言え、行動に移せる人ばかりではありません。「なかなか通院をやめたい事を言い出せなくて、ずるずる通院をしてしまっている」といった場合もあるかもしれません。
理由は何でも良いですので、連絡をして通院を止めましょう。「近くの歯医者に変えるので」「都合で通院できなくなるので」など簡潔な連絡でもかまわないと思います。マナーとして無断で予約キャンセルをするのは止めましょう。
基本的な予防歯科診療の流れ
最後に基本的な予防歯科診療の流れを簡単に説明したいと思います。
a. カウンセリング(お話を伺い治療や予防歯科の希望を把握します)
b. レントゲンや口腔内写真撮影
c. 歯周病の検査
d. 唾液の検査
e. 歯磨き方法の改善
f. 歯石除去やPMTCによる汚れの除去
g. 治療が必要な箇所の治療
h. 定期的なクリーニング
歯周病がある場合には、長期的に通院が必要な場合もあります。治療を続けながら、歯周病が進行しないための予防や、虫歯をつくらないための予防処置を行っていくという場合もあります。
いかがでしたでしょうか。ご自分の大切な歯を守っていくためには、良い予防歯科のパートナーとなる歯科医院をみつける事が大切です。予防歯科は、歯がある限り一生続きます。今回説明したポイントを参考に、ご自分にあった歯科医院で予防歯科を始めてみましょう!
今回は以上になります。
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