近年、虫歯でも何でもないのに「歯の痛み」を訴える方が急増しています。原因がわからないにも関わらず、歯がしみてしまったり、うまく食べ物を噛むことができない、顎がカクカクし、違和感を感じるなどの症状が増加しています。
こうした症状を感じた時に、それがあまりにもひどければほとんどの方は“歯医者”さんに行きます。しかし、「虫歯」のような原因がない歯の痛みを訴えると通常の歯医者さんは困ってしまいます。歯ぎしりの癖があるようだから、マウスピースをして様子を見てみましょうという対処や、中には“かみ合わせ”を調整しましょうと言って安易に歯を削ってしまう歯医者さんもいます。
この、歯を削るという行為なのですが、歯にとってタブーである治療法なのです。もちろん、歯を削らなければいけない場合もあります。しかし、歯を削るという行為は最後の最後の治療として考えなくてはいけません。歯科治療の基本はできるだけ“削らない”ことなのです。
今回は、近年増加している虫歯ではない歯の痛みと、その歯の痛みに対して歯医者さんでよく陥りがちな治療ミスについて解説致します。
歯をすぐに削ってはいけない
医療のなかで最も大切なことは“患者”を守ることです。歯科ならば、“患者の歯を守る”ことが何よりも大切になります。歯を削ることは一見、痛みを取り除くという行為で患者を守っているように見えますが、実はそうとも限りません。初回の治療でいきなり歯を削る治療を提案された場合は少し疑問をもった方がいいです。
中には患者の了解を得ず、「少し歯を削っておきました」といきなり歯を削る方もいます。この、「歯を削る」という行為に私達はもっと敏感でなくてはなりません。
歯の痛みの8割は削る必要がない。歯を削る危険性をもっと考えなくてはいけない (EZSMILE)
なぜ、歯を削ってはいけないのか
人体には自然治癒力というチカラが備わっています。怪我をしたり、病気をしたりすると自らのチカラで治すことができる力のことです。カラダの病気や傷は自然治癒力で治るのです。しかし、人体の器官の中で歯のみが唯一自然治癒力を備えていないのです。一度歯を削ってしまえば、二度と再生することはないのです。ましてや、歯は一度削れば寿命が大きく減ります。歯は何ものにも変えられないにも関わらず、歯の寿命を常日頃から削ってしまっている私達。
どんなに高価なもの、高機能なものでも持って生まれた歯に叶うものはない。localeben
だからこそ、歯が痛いからといって歯をいきなり削る行為は避けなくてはいけません。患者の症状に合わせてできるだけ侵襲度(しんしゅうど:患者のカラダを治療器具で傷つける度合い)の低い治療から始めていくことが医療の基本的な考えになっています。
歯科ではMIという言葉を使うことが増えてきました。「MI」というのは、Minimal Intervention(ミニマル・インターベンション:最小限の侵襲)の略で、「歯を削る量をできる限り少なくして、今ある歯をできるだけ残す」という考え方のことです。このMIの概念ですが、歯科では増えてきているものの、まだまだ認識の浸透度は低いのが現状です。治療の一環であったとしても、身体が元に戻れない状態にすることは重大なことであるという認識を持っている方は残念ながら医科の方が進んでいるのが現状です。
胃がもたれるからといって、いきなり胃の切除はしない。しかし、いきなり歯を削ることはある。CAFY
歯科は削ってナンボという考えを持っている先生もいらっしゃいますが、そんなことはありません。虫歯でもないのに、いきなり削るという行為に対してはしっかりと「NO」とおっしゃって下さい。
では、なぜ虫歯でもないのに歯が痛むのか
実際に虫歯や歯周病ではないのに歯の痛みを訴える患者さんは多くいらっしゃいます。現在は特に若い世代を中心に歯科の啓蒙活動が進んでおり、虫歯の数は激減しています。にも関わらず歯科医の数は増加しています。これは、単純に歯科大学の数が増えているという指摘もありますが、虫歯以外に歯の痛みを訴える患者さんが増加していることも関係しているのではないでしょうか。歯科医の増加は新たな歯の痛みの登場と関係しているのかもしれません。
今や12才児の平均虫歯数は1本を割ってきている。にも関わらず、歯の痛みは増えている(毎日新聞)
この、虫歯以外の歯の痛みの原因ですが今最も有力視されているのが「噛み締め」です。
ストレスが何かと多い現代、人は無意識のうちに歯にチカラが入り、「噛み締め・食いしばり」を行っているのです。噛み締めは歯痛以外にも、頭痛、嫌悪感、肩こりなど全身的にも様々な影響を与えてしまうのです。
いやいや、私は噛み締めなんか・・・。と思っているアナタ、今、歯を噛み締めているのでは??100homeremedies
噛み締め・食いしばりのちからを舐めてはいけない
何かの衝撃に耐えたり、目標に向かっていく時など私達は無意識に歯をぐっと食いしばります。この時、歯には200キロにも及ぶ負荷がかかっているのです。タスマニアデビルが敵を噛む力は170キロ程度とされており、オオカミが噛む力は180キロ程度とされています。彼らよりも強い力が人間には備わっており、その衝撃が歯にそのまま負荷をもたらしているのです。
オオカミ、タスマニアデビルよりも強い力が私達の歯にかかっている 動物の噛むチカラベスト10
人間の歯の自然な状態は上下の歯同士が数ミリ離れてキープした状態です。何かを噛む時以外は上の歯と下の歯は接触していないのが普通なのです。実際に1日のうちに上下の歯が接触している時間は最大でも20分程度だとされています。上下の歯は常にくっついていると考えている方が多かったのではないでしょうか?しかし、実はこの程度のものなのです。
口を閉じた時に上下の歯がくっついている人は噛み締め予備軍。要注意! 楽天キレイドナビ
歯の噛み締めがなぜ、歯に悪いのか
常日頃歯を削るということが当たり前になってしまっている私達にはびっくりかもしれませんが、歯というものは鉄やガラス、オパールよりも硬く、水晶と同程度の硬さです。ですので、それを削る歯科医院で使われている装置はダイヤモンド加工されています。
ダイヤモンド加工されている装置。
これほどまでに硬い歯ですから、噛みしめると歯同士で接触が起こり、接触面が次第に削れ、摩耗し、変形していってしまうのです。
奥歯のかみ合わせがずれており、前歯がすり減り、変形している患者 あき歯科医院
前歯の噛み締めが強すぎて、歯の中にある象牙質という部位が見えている患者。象牙質の露出は神経がキーーンと痛む知覚過敏を引き起こす。しのざき歯科医院
歯と歯のすり合わせが癖で歯が半分程度すり減っている。あき歯科医院
また、こうした歯のすり減りは大人だけではありません。かみしめ、くいしばりをしている幼児は多く、全体の8割に見られるという報告も。しかし、本人やお母さんは気がついていない場合が多いです。
歯をすり合わせる癖を持つ5歳児の前歯。歯が半分ほどなくなっている。畑中歯科矯正歯科
前歯がすり減ってしまっている子供。歯科進化論
歯がすり減り、内部の象牙質まで達してしまうと非常に危険です。歯の内部は外側のエナメル質と異なり、硬くありません。ですので、歯が丸ごとバキッと割れてしまうこともあるのです。歯が割れてしまうと、ほとんどのケースで破損した歯を抜歯するしかなくなります。
割れてしまった歯は抜歯になることが非常に多い。あき歯科医院
歯の噛み締め、食いしばりがアナタのカラダを狂わせる
噛み締め、食いしばりが癖になってしまっている人は、歯そのものだけではなく、歯の中心に通っている神経にも負担をかけます。噛みしめることで歯の神経は常に刺激され、興奮状態になってしまい、痛みの信号を脳に送るようになります。これが虫歯でもないのに歯が痛み、熱いものや冷たいものがしみる知覚過敏の原因になるのです。
噛み締めを続けると、文字通り神経が過敏に反応し、痛みを引き起こす。これが知覚過敏
他にも歯に強い圧力を書けることで顎にも負荷がかかり、顎を動かす時にイオンがしたり、口を大きく開けられなくなってしまう顎関節症を引き起こします。
顎の痛みも食いしばりが原因。webmed
さらには、食いしばりの癖は虫歯治療でいれたセラミックの詰め物や被せ物がすぐに破損したり、とれる原因を作ります。せっかく高価なものを入れたにも関わらずすぐにダメになる原因はここにあるのです。
食いしばりが原因でせっかく入れたセラミックも壊れやすくなる。dr.wong dentidtry
アナタは噛み締め癖がある?ない?今すぐにわかるセルフ判断
噛み締めグセがアナタにあるかどうか、実は簡単に判断できるのです。自分の舌の位置と頬の内側の状態を観察することで推測が可能です。
噛み締めをしていると舌の位置が口腔内におちてきて、歯に押し付けられるカタチになるため、舌の両縁が歯列のカタチに合わせてギザギザになります。このギザギザは舌ではなく、頬の内側に起こっている場合もあります。
噛み締めをしている舌にはギザギザがついている。酒井歯科医院
噛み締めをしていると頬の内側に跡が残っているケースも (デンタルハイジーン2012)
歯科治療において、ブラッシングや定期的な歯石取りは有効です。しかし、それにも関わらず虫歯や歯が痛いなどの口周りのトラブルを起こしてしまう方が増加しています。そうした方は日頃からの食いしばり癖に問題がある可能性が高いです。
ストレス社会と言われる現代、今までになかった病が私達を襲っています。虫歯や歯周病ではない歯のトラブルは様々なカラダのトラブルに苦しみ、色々な歯科をめぐるデンタルショッピングを余儀なくされます。こうした、現代社会が産んだ歯科の新たな問題は保険治療のみを行っている歯医者さんでは治療に限界がどうしても起こります。保険で対応できない病が登場しているからこそ、これは仕方がないことなのかもしれません。しかし、患者さんの主訴をしっかりと判断し、適切に処置を行い、原因を取り除けば問題は必ず消えるのです。
レントゲンを撮っても痛みの原因がわからない、口腔内に大きな異常は見られないという患者さんは全体の半分だと言われています。それは、木を見て森を見れていない処置を行っているからです。歯は一本かもしれませんが、それは単体で成立しているものではなく、カラダ全体の有機的なつながりで成立しています。そのことを歯科医も私達も忘れてはならないのです。
カラダは全てがつながっており、それぞれがバランスを保って存在しているのです。
現在、歯科治療は見直されており新たに知識を吸収し、治療に反映している先生も多くいます。そうしたあなたにとって最適な先生が見つかることを心から願っています。歯はあなたの大切なカラダの一部です。こうしたサイトで適切な知識を身に着け、治療に妥協せず、いつまでも健康なカラダを保って頂きたいです。
長文になりましたが、最後までありがとうございました。以上になります。
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歯科・医療・健康業界ほど、皆様の努力が世の中に届いていない業界はないのではないかと私は個人的に考えています。私は元々カラダについて無知の人間でした。しかし、いつのまにかこの世界に浸っており、日々勉強させていただいております。この業界について素人だったからこそ世の中と皆様の架け橋になれると思い、情報を発信しております。
今後とも、何卒よろしくお願い致します。
今回は最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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