厚生労働省の発表によると2015年に生まれた命の数は、100万8000人となり、これは60年前と比較し73万人の減少となり調査開始以来過去最低の数となっています。
対して、2015年に亡くなった方は130万2000人となり、60年前と比較し60万人の増加となり、こちらは調査開始以来過去最大の数となっています。
- 2015年出生数100万8000人
- 2015年死亡数130万2000人
そして、気になる死亡原因なのですが、
2010年まで、長い期間日本人の死因ベスト5は
- がん
- 心疾患
- 脳血管疾患
- 肺炎
- 事故
というランキングでした。
しかし、2011年から死因ベスト5に変化が現れるようになりました
- がん
- 心疾患
- 肺炎
- 脳血管疾患
- 事故
肺炎が脳血管疾患を抜き、第三位となったのです。
この数字は2015年も変わらず
- がん
- 心疾患
- 肺炎
- 脳血管疾患
- 事故
となっています。
肺炎での死亡者数が年々増加している
肺炎での死亡者数は年々増加しており、
- 2003年:94,942人
- 2008年:115,317人
- 2013年:122,969人
- 2015年:123,000人
という数字になっています。
肺炎は“ひどい風邪”ではない!死に直結する危険な病。
日本人の死因として皆さんがイメージされるのは、がんや心疾患などの病だと思います。この2つは全体の死因ランキングで不動の上位です。しかし一方で、高齢者の直接の死因トップは肺炎なのです。
体力のない高齢者にとって肺炎ほど恐ろしい病気はないのです。肺炎では高齢者ほど死亡率が上がり、死亡者の96%が65歳以上と発表されています。
高齢者は肺炎が原因で命を落とす。肺炎予防.jp
死に至る肺炎の原因は口で作られていた
高齢者の肺炎の中でも60%〜80%が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と言って年齢などの後遺症で嚥下(飲み込むこと)や咳をする力がなくなり、口の中のものや口内の細菌が器官や肺に入って起こる病気のことを指します。
また、口腔内ケアを怠り、口腔内が不衛生であるがゆえに、細菌が繁殖し、気道に入り込み炎症を起こします。
口腔内で細菌が繁殖するといっても、あまりイメージ出来ないと思いますので、画像を添付いたします。
少し衝撃的な画像ですので、心して御覧ください
口から栄養を摂取していない高齢者にも関わらず、口腔内はこういった様子。痰が絡み、口の中の皮膚はめくれ上げっている。ここで繁殖した細菌が肺に到達する(高齢者の口腔ケアに関する講演会)
上顎に食物の残りや唾液がこびりついて変色を起こしている(嚥下障害支援サイト)
劣悪な口腔環境が原因で作られた細菌がカラダの中に侵入し、炎症を引き起こすのです。
私たちはもっと、口に興味を持たなくてはいけない。
生物の授業で習ったことを思い出して見てください。私たちは単細胞生物ではなく、多細胞生物です。そして、多細胞であるがゆえに私達は巨大化します。巨大化すると、すべての細胞に効率的に栄養を供給することが困難になります。そこで初めて細胞の一部が変化し、口の原型となるものが作られるのです。これを原口(げんこう)と言います。
球体の細胞から、口が出来始める(your biology origin)
口が出来ることで栄養効率が増加します。そうなると生物はますます巨大化し、さらに多くの栄養が必要となります。栄養をさらに効率的に取り込むために口が深くなり、大腸や小腸などの腸管ができあがるのです。
生物学の視点から考えると、単細胞生物と多細胞生物を分けているのは口だといえる
栄養を体内に取り込むと、細菌が進入するというリスクも
栄養を体内に取り込みやすくなった生物は同時に細菌も体内に侵入することを許すようになりました。病原性の細菌が体内に取り込まれてしまえば、生物の命に関わります。
そこで、腸管に免疫細胞である原子マクロファージと呼ばれる細胞が生まれたのです。これが私たちにとって身近な白血球の元となる細胞です。私達人間には、細菌への免疫機能が備わっています。そして、その免疫細胞は口内や腸管周辺にあることが多く、体内のすべての免疫細胞の実に60%以上が口腔内・腸管の周囲に存在しています。
特に、のどの周囲には様々な免疫細胞が集まっています。それらがよく耳にするリンパ組織と呼ばれるものです。口腔周辺にこの組織が集まっているのは細菌が消化管に進入するのを阻止するためです。
口腔内には多くの扁桃と呼ばれるリンパ組織が集まっており、消化管に細菌が入るのを防いでいる(みんなの歯学)
生物は口が大切、口は栄養も細菌も入る。だから、口腔ケアや呼吸が大切
「口は命の入り口」だという言葉があります。これは生物の進化を考えるとしっくりきますね。私達は口ありきで今のカラダに至っているということがよくわかります。生物が進化する上で栄養を摂取することがどうしても必要であり、そのために口や腸が発達し、そこから細菌の侵入を防ぐために高い免疫力が備わっているということがよくわかります。
しかし、その入口が汚れていると免疫細胞も細菌の侵入を防ぎきれなくなるわけです。前回お話しした、歯と呼吸のお話(アナタの歯や呼吸が全身に猛毒を運んでいる。口から始まる、恐ろしすぎる現代の病気)などまさに、こことつながってくるわけです。
進化は口から。しかし、私たちは口を軽んじてきた
ヒトの進化や歴史を考えると、すべては口から始まっているということがよくわかります。しかし、私たちはこの生命の始まりとなる“口”を少し軽んじてしまったのかもしれません。
日本人の大半は、「口腔ケア」や「歯科予防」という発想を持たず、歯磨きの正しいやり方も知りません。
口腔ケアを怠ってしまった故に、体内に病原性の細菌の侵入を許し、免疫細胞から守られていない他の器官が攻撃されてしまっているのです。特にお年寄りなどにその傾向は顕著です。高齢化が進むに連れて、肺炎など口腔ケアと密接に関わっている病気での死亡が増加するのです。
また、近年では災害など環境が大きく変化することと口腔ケアの関係性が注目されています。
阪神大震災で230人が適切な口腔ケアが行われずに亡くなった
阪神大震災では死亡者6434名のうち、災害のストレスや震災環境の悪化でなくなった震災関連死は922名にわたり、そのうちの4分の1である230人が肺炎でなくなったとされています。
東日本大震災では、福島県相馬市、南相馬市で震災後1ヶ月で75歳以上の高齢者の死亡率が震災前の同時期と比べて1.5倍に増えたと言われています。死因は肺炎が最も多く、男女とも約3割を占めたといいます。
こうした震災などの大災害で適切な口腔ケアは後回しにされがちですが、口腔ケアほど手軽に人名を守ることができる方法は他にはありません。災害時だからこそ、高齢者や子供の口腔ケアは大切にしなければなりません。
近年では「防災にオーラルケア」を合言葉に震災時のオーラルケア運動広まっている
高齢者の誤嚥性肺炎は歯科の力で未然に防ぐことができる
高齢者を死に誘う病である誤嚥性肺炎から人々を守っている職業があるのです。実はみなさんの苦手な歯科医師が誤嚥性肺炎予防に非常に大きな力となっているのです。
日常的に口腔ケアを行った高齢者はそうでないグループと比較すると肺炎の発症率が39%、死亡率は約53%低いという研究結果が出されているのです。これは、口腔ケアによる口腔内の病原菌を減らすということに加え、口腔に刺激を与えることで飲み込む機能が回復して食事が進み、栄養状態が改善し、免疫力が向上して肺炎を防ぐことができるのが理由だとされています。
口の中のことは、その道のプロが一番良く知っている(本山歯科)
口腔ケアで救われる命がある
口腔内を清潔にすること。こうしたほんの少しの改善で大げさでも何でもなくアナタのこれからの生き方が大きくかわります。人間は、将来の1時間と現在の1時間を比較すると将来の1時間を軽視します。しかし、今の1時間も将来の1時間も同じ1時間としてどちらも大切なのです。
将来の1時間、1日、1ヶ月、1年のために、今アナタの時間をアナタの健康に投資してください。そして、健康への投資は口腔内を見直すことが非常に投資対効果として高いです。
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長くなりましたが、以上になります。まずは歯医者さんに足を運んでみることや歯科の情報収集をオススメします!最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
トップ画像:blood vessel
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今回は最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
参考文献:口を閉じれば病気にならない
:口の中を見れば寿命がわかる
:歯は大切な臓器の一つ