まず、大前提として歯科治療には、
- 保険診療
- 自由診療(=自費診療、保険外診療)
の2つが存在しています。
下記の記事に医療保険制度の中でわかりやすく解説をしておりますので、是非こちらもご一読下さい!
関連記事:医療保険制度を知れば、歯医者さんの費用が見えてくる!
簡単に申し上げると
保険→銀歯など
自由→セラミックなど
となります。
そうなってくると、ある一つの疑問が湧いてきます。それが今回のタイトルになってきます。
「腕の良い保険医」の銀歯と「腕の悪い自費診療医」のセラミックのどちらが本当に良い治療なのか。
これは、結論から行きましょう。
「腕の良い保険医の銀歯」のほうが断然良いです。
どんなに良い材料で高い治療費を受け取っていたとしても「腕が悪い」とそれなりの治療結果になってしまいます。高いお金を支払って作ったセラミックの歯がすぐに割れてしまったり、完治したはずの歯の部分に痛みがあったり、予後があまり良くない場合が多いです。
噛み合わせを計算していないとセラミックを入れてもすぐに割れることも
歯科医の腕が悪い自由診療だとどういったことが起こる?
自由診療でメインとなるセラミックは、治療の終盤の処置です。セラミック挿入以前には
- 歯の神経を抜く処置
- 歯の形成の仕方
- 噛み合わせの調整
など歯科の基本となる下準備のようなことを行わねばなりません。
これらの治療が良くなければいくら良い材料を使ったところで、意味がありません。
基礎工事をやっていない、土地の上に豪華な家を建てるようなものです。
土台がまずはしっかりしていないと、上は簡単に崩れる。住まい探しの役に立つブログ
腕の良い歯科技工士がいても、歯科医師の技術が未熟だと危険
自費診療の技工物は熟練の歯科技工士さんが担当してくれることが多いのですが(銀歯等の保険治療の技工物は新人の歯科技工士さんが担当することが多いです)、いくら腕の良い歯科技工士さんが作成してくれても、歯科医師の腕が悪く
- きちんと形成できていない
- きれいな型を取れていない
- 治療する箇所以外の部分の治療や噛み合わせの調整がおろそか
などの場合、良い被せ物の歯はできません。
結局のところ、「銀歯が良いか」「セラミックが良いか」、それは治療してもらう歯科医の腕次第だと言えます。
腕が悪い歯科医が作ったセラミックの歯であればその何倍も安価な腕の良い歯科医が作った銀歯の方が持ちが良かったりします。
腕がよければ銀歯治療でもセラミックと同じ効果なのか
それでは、腕さえよければ保険の銀歯治療であっても腕の悪い歯科医の作ったセラミックと同等、もしくはそれ以上に長持ちするように思いますが、腕の良い歯科医が銀歯の治療とセラミック歯の治療を行った場合、どちらの方に軍配があがるかというと「セラミック」歯になります。
それにはやはり「保険」で限定された材質で行える治療と「自費」でよりよい材質を使える治療で持ちにも差が出てしまいます。
銀歯とセラミック、見た目と値段以外に違いはあるのか
保険適応の銀歯は平均寿命7年程、それに比べて自費診療で使用するセラミックの歯は約8〜10年になります。(きちんとしたメンテナンスをおこなっていれば20年以上持つ人もいます)この差は何なのか、歯科医の腕以外での要因は何なのかについて「生体親和性」と「接合・接着」の観点からまとめてみました。
関連記事:セラミックを歯に使用しようと考えているアナタへ、歯科医の私からのアドバイス。
セラミックの利点①生体親和性に優れている
セラミックは銀歯と比較して身体になじみやすい材料で、歯科以外でも人工関節等にも使用が認められています。人体に無害な成分であることを「生体親和性」に優れていると言います。具体的には下記のようなことが銀歯を装着しているとみられ、セラミックを使用しているとそのような現象が起きません。
ガルバニー電流が起きない
銀歯が入っている人で、銀紙やアルミホイル等を誤って噛んでしまった時に「キーン」とした嫌な感じがした経験があるかと思います。これは2つの異なる種類の金属が触れ合うことで流れる電流で「ガルバニー電流」と言います。この電流は身体のあらゆるところに不調を来し、体の痛み・疲れ・不眠・イライラといった様々な神経症状を引き起こします。
お口の中は常に唾液で潤いが保たれている状態なので1種類の歯の金属が存在するだけでもこの電流が流れやすくなってしまいます。
イオン溶解が起きない
保険で使用する銀歯は「金銀パラジウム合金」でできており、先ほどの「ガルバニー電流」や普段の飲食、歯磨き等によって金属が溶け出す現象が起きます。
金属イオンが溶けることによって銀歯の周りの歯茎が黒く変色する「メタルタトゥー」を引き起こし、歯茎の見た目も悪くなります。
歯茎を黒くするメタルタトゥー 代官山デンタルサロン
人によっては長年虫歯治療で使った銀歯が原因で「金属アレルギー」を起こし、手足に皮膚疾患の症状が現れることもあります。
銀歯による金属アレルギーは国が危惧する問題に・・・。opera
関連記事:世界で禁じられた金属『アマルガム』がアナタの口に入ってます。本当に怖い、銀歯という歯の詰め物。
プラークがつきにくい
銀歯は加工がしやすい分、銀歯自体に細かい傷がつきやすいです。そのため、プラークが付着しやすく、歯と銀歯の隙間に付着したプラークが原因で二次虫歯になりやすくなります。セラミックは銀歯に比べ表面が硬いため、傷が入りにくく、プラークも銀歯と比較すると付着しにくくなります。
前歯の天然歯に比較し、セラミックの歯は歯垢が付いていない。宮崎歯科医院ブログ
腐食が起きにくい
治療した後、その歯に問題がなければ何年も同じ銀歯をつけた状態になります。金属のイオン溶解により、長年使用し続けた銀歯は腐食がおきて銀歯が黒く変色したり、銀歯を装着している部分に隙間が生じて2次虫歯になってしまいます。
関連記事:歯を削り、詰めて安心する日本人。しかし銀歯の下は虫歯菌まみれ。根本から違う日本人の虫歯の考え方。
セラミックの利点②接着と合着の違い
保険の銀歯で使用するセメントと自費のセラミックで使用するセメントの種類にも違いがあります。保険で使用するセメントは「合着」といい、歯と銀歯は一体化してくっついているわけではありません、歯と銀歯の隙間をセメントで埋めている状態です。そのため、飲食をして時間が経ちセメントが劣化してくると、歯と銀歯の隙間に徐々に細菌が侵入し、2次虫歯を作りやすくなります。
銀歯を外すと、銀歯の下に劣化したセメントが。そのセメントの下はむし歯だらけ・・・。サニー歯科クリニック
一方、セラミックはレジンセメントを使用して、歯とセラミックを完全に一体化させて「接着」します。隙間なく接着させるため、時間が経ってもレジンセメントが劣化して隙間ができることもありません。
レジンセメントで完全に接着させてからセラミックを入れる。中川歯科
時折、ガムやお餅等の粘着性の強い食べ物を食べていると銀歯が外れてしまったと来院する患者さんがいますが、それは上記のようなことが起こって銀歯と自身の歯の間に隙間ができることで外れやすくなってしまうのです。セラミックの歯の場合は、セラミックが欠けてしまう以外では粘着性の食べ物を食ベる位では外れてしまうことはありません。
セラミックで治療していれば最悪腕の悪い歯科医でも大丈夫か?
まずは前述した通り、土台の治療がきちんとなされていなければ何の意味もありません。また、本当に腕のよい歯科医であれば自費治療で治したほうがよいのか、それとも保険治療で安く済ませておいたほうがよいのかまできちんと判断してくれます。(歯の状態によってはどんなに治療をおこなっても長持ちしない場合もあります。)
よい歯科医院を見抜く方法
でも実際には治療を行って予後を見てみないとその歯科医が本当に腕の良い歯科医かどうかはなかなか判別がつきにくいかと思います。治療をはじめる前に、腕の良し悪しを見抜くポイントを5つ書いていきたいと思います。
①◯診察室がきれい
診察室やユニット(診療台)等のお掃除は歯科助手さんや歯科衛生士さんが行う仕事ですが、診療室が汚れていたり、ユニットに前の患者さんの治療で使用した器具が残っているような歯医者は注意した方が良いです。
診療室の整備等は歯科医の仕事ではないですが、日常のそういった細かい汚れや不具合等に気づくことのできない歯科医の治療は丁寧ではありません。治療も雑な仕上がりになることが多いです。
また、整備の行き届いていない診療室をそのままにしているということは歯科助手さんや歯科衛生士さんの指導が行き届いていない、プロ意識の低い歯科医院の可能性があります。1人1人その歯科医院に勤めている全員がプロ意識が高ければ、自然ときれいな診療室になります。
②☓歯科医の白衣や靴が小汚い
①の部分とかぶる内容ですが、自分の見た目や衛生面に心配りができない歯科医は良い仕事はしてくれません。身につけているものは小汚いが患者さんのお口の審美にはうるさい、なんて人はまずいないでしょう。きちんとした歯科医であれば自分の身なりにも気をくばることができるはずです。
③問診の際にきちんと話を聞いてくれるか
いきなり口の中を見るのではなく、レントゲン写真や問診票と合わせ見て、患者さんと対面してきちんと話を聞いてくれるかどうかも大切なポイントです。話もろくに聞かないうちに治療を始めたりすると、自分が望んでいないような治療をされる可能性もあります。
④勤務している歯科衛生士の人数
売上至上主義に走っている歯科医院だと給料の高い歯科衛生士さんよりも給料の安い歯科助手さんを好んで多く採用する歯科医院もあります。(また、そういった歯科医院は歯科衛生士求人を出しても中々集まらない傾向が強いです)歯科医師の助手をやっているのは歯科衛生士さんなのかどうかを確認してみるのも良いかと思います。
なぜなら、歯を削った後の仮歯を付けたり、歯型をとったりする役割は助手の方が担当します。本来なら患者さんのお口の中に手を入れる場合は国家資格の歯科衛生士さんが行う必要がありますが、そういった内容までも資格を有しない歯科助手さんにやらせる歯科医院もあります。いくら腕の良い歯科医が歯を削ったとしても、歯型がうまく取れていなければ仕方ありません。
また、セメントを使用して歯に「合着・接着」する行為は歯科医が行わなくてはいけないのですが、患者数が働いている医療従事者の割合にあっていない歯科医院等はその医療行為を歯科助手にやらせるところもあります。最後の最後で、歯と金属がきちんとはまっていなかったり、セメントがきちんと練れていなければ2次虫歯のなりやすさは格段に上がってしまうでしょう。
⑤腕の良い歯科医は治療と同時に予防歯科も進めてくれる
いくら腕の良い歯科医が治療をおこなっても「メンテナンスをきちんとおこなっている人の銀歯」と「メンテナンスを全く行わない人のセラミック」のどちらがより持ちが良いかと言われると前者の方が良い状態を保てます。
本当に腕の良い歯科医は「予防歯科」の重要性も熟知していますので、治療と並行して予防歯科にも取り組んでくれます。(歯科衛生士さんの歯磨き指導や口内清掃等)
また、治療が終わっても定期的なメンテナンスを進めてくれる歯科医は信頼して良いかと思います。
良い治療を受けるためにオススメの方法
もしも複数の歯科医がいるような歯科医院で、そこで一番腕のよい歯科医に治療してもらうには歯科衛生士さんに聞いてみるのが一番です。何人もの歯科医の補助をして治療の様子をまじかに見ているので、その歯科医が何の治療が得意で、どの治療が不得意なのか把握しています。
また、ベテランの歯科衛生士さんであれば他の歯科医院の歯科医と比較してその医院の歯科医レベルもわかっている方もいますので、本当に腕のよい歯科医を探して治療を受けるためには、歯のメンテナンス目的で一度歯科医院に来院して歯科衛生士さんとお話ししながら実際のところを探りに行くのがベストです。
治療目的でいきなり来院してしまうとその時ついたはじめの歯科医が担当になってしまいますので、まずは歯のクリーニングを主訴として来院してみるのがよいかと思います。そうすれば歯科衛生士さんとの距離も縮まるので、歯科医の腕の良し悪しも教えてもらうことができます。
まとめ「腕の良い保険医の銀歯と腕の悪い自費診療医のセラミックどちらが良いのか」
被せ物の材質だけでいうとセラミックの方が質が良くより長持ちしますが、複合的に考えると「腕の良い保険医の銀歯」の方が良いです。
いずれの治療を受けた場合でも、より長持ちさせるにはきちんとした治療後のメンテナンスが必要となってきます。「腕の良い歯科医」とは虫歯の治療だけでなくその後の患者さんの口内環境を整えることもきちんと治療計画に入れて治療を進めてくれます。
歯科治療は歯1本単位で考えるのではなく、患者さんの1口腔単位で治療を考えていきます。なので、信頼できる歯医者さんを見つけたら、「この歯医者さんでは自費治療を」「こっちの歯医者さんでは保険治療を」というふうに歯科医院を使い分けるのではなく、1箇所の歯科医院できちんとメンテナンスまで見てもらうようにするのがオススメです。
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