そもそも味覚異常ってどんな症状??
味覚異常と言っても、次のようにいろいろなパターンがあります。
1.味覚低下(減退)・味覚消失
味が薄く感じたり、全く味を感じなくなります。
最も多く見られる症状で70~75%の患者さんに現れるとされています。
2.錯味症(さくみしょう)・異味症(いみしょう)
本来の味と違うように感じるものです。例えば甘いものを苦く感じたりします。
3.自発性異常味覚
何も食べていないのに口の中から苦い味がする、という症状で、2番目に多く見られる症状です。
4.解離性味覚障害
ある特定の味覚だけ失われている状態です。例えば苦味のみ分からない、などです。しかし一つの味覚だけではなく、他の味覚も低下していることがほとんどだと言われています。
5.悪味症(あくみしょう)
何を食べてもおいしくないと感じる症状です。
味覚異常の原因について
近年増加傾向にあるという味覚異常、その原因にはどのようなものがあるでしょうか。考えらえられるだけ挙げてみました。
1.食生活に問題がある(亜鉛不足)
特に若い人を中心に味覚障害が増えている背景に、この問題が大きく関わっていることが指摘されています。これは体の新陳代謝にとって必要な「亜鉛」が不足することで起こるとされています。栄養バランスのとれていない食事を続けることで、亜鉛が不足してしまうのです。またこの他、若者の大好きなファーストフードやファミリーレストラン、スナック菓子などや便利な加工食品には多くの食品添加物が含まれており、これが、食べ物に含まれている亜鉛の体内への吸収を阻害してしまうと言われています。
2.老化現象
ヒトは年齢を重ねるにつれ、体の細胞は老化していきます。これは舌の上にある味の受容体である「味蕾」細胞に関しても同様であり、年齢とともに味蕾が減少したり萎縮してしまいます。最近では60代~70代をピークに味覚障害を訴える人が増加しており、味覚異常の患者さんの半分くらいが65歳以上だとされています。
3.風邪や副鼻腔炎
風邪で鼻が詰まったり、副鼻腔炎によって匂いの通り道が塞がってしまうと、鼻の最も特にある匂いを感じ取るセンサーに匂いが届かなくなるため、風味が分からなくなり、味覚障害が起こりやすくなります。
4.唾液の減少
唾液が少なくなると、味成分を味の受容体である味蕾細胞へうまく運べなくなるため、味を感じにくくなります。この唾液の減少は老化や生活習慣、食習慣の乱れによっても起こります。最近若い人にもドライマウスが増えてきています。
関連記事:口の中が乾くときに考えられる11の原因と、ドライマウスについて
5.舌の異常
舌の表面に付着している舌苔が厚くなったり、舌に炎症を起こすと味を感じにくくなります。舌苔は体調不良やストレスなどによってたくさん付きやすくなります。また、カンジダ菌によって起こされる口腔カンジダ症で、舌の表面がカンジダで覆われると味覚が鈍くなります。
6.薬の副作用
多くの薬に含まれる成分と食物中の亜鉛が結合してしまい、亜鉛が体内に吸収されなくなってしまうことで亜鉛不足を起こします。血圧を下げる薬、鎮痛解熱剤、抗アレルギー剤、向精神薬・・など多くの薬がこの性質を持ち、長期服用で味覚異常を引き起こすことがあります。また、薬の多くは副作用として口の中の乾燥を招くため、それがさらに味覚異常を悪化させるものと考えられます。
7.全身疾患に伴うもの
全身の病気が原因で味覚異常を引き起こす場合があります。また、頭頸部のがん治療で化学療法を受けている人の半数近くに味覚異常が現れることが分かっています。
8.心因的要因
味覚は味覚受容体から受け取った情報を脳が感知しているため、心因的なものにも大きく左右されると言われています。
味覚異常がある場合に考えられる病気は?
味覚に異常をきたす病気には次のようなものがあります。
1.亜鉛欠乏症
亜鉛は体の新陳代謝に不可欠の元素です。そのため亜鉛が不足すると味覚障害のみならず、体のあちこちに異常が出ます。亜鉛の少ない食事内容や薬物摂取に伴う亜鉛不足、消化器官に問題があって亜鉛が吸収されない、腎臓に問題があって亜鉛が多く排泄されてしまう、など様々な理由で引き起こされます。
2.ドライマウス(口腔乾燥症)
ドライマウスは様々な原因で引き起こされます。原因は主に二つで、唾液の分泌が低下してしまうことと、口呼吸により口の中が乾燥してしまうことです。唾液の分泌低下を起こす原因としては、老化現象やストレス、やわらかいものばかりたべる食生活、薬の副作用などがあります。また、ドライマウスを引き起こす全身的な病気としては、シェーグレン症候群や糖尿病があります。
3.舌炎
味覚の情報を受信する舌が炎症を起こすと味覚異常を起こすことがあります。舌炎は咬んだり尖がった歯や入れ歯の金具で傷つけたり、やけど、ウイルスによる感染によって引き起こされる可能性があります。また、貧血によっても舌が赤く炎症を起こすことがあります。
4.口腔カンジダ症
口腔カンジダ症で舌がカンジダで覆われると味覚異常を起こすことがあります。
5.糖尿病
糖尿病で味覚異常を起こす理由はいくつかあります。まずは糖尿病が進行すると、合併症として神経障害を起こすことがあり、味覚を伝える神経が障害されると味覚異常を起こします。2つ目の理由は糖尿病によって糖尿病性腎症をきたし、腎機能が低下して亜鉛が多く排泄されるようになるためです。そして先ほど触れたように口の中が乾燥することも味覚異常につながります。
6.慢性副鼻腔炎
風邪やアレルギーなどによって鼻炎を起こし鼻がつまると、味がわかりにくくなります。風邪やアレルギーが長引くと慢性副鼻腔炎になってしまうことがあり、ひどい場合には完全に嗅覚を失ってしまい、味覚にも影響が出てしまいます。
7.顔面神経麻痺
顔面の筋肉を支配する顔面神経が麻痺を起こすと、味覚異常を引き起こすこともあります。
8.脳の障害
脳の外傷、病気などにより味覚を司る神経が障害されると味覚に異常を起こすことがあります。
9.うつ病などこころの病気
うつ病や、心にストレスを抱えすぎることでも味覚異常を起こすことが分かっています。
味覚異常の治療法治療法は?
治療を行うにはまず原因を知ることが必要です。原因に合わせて次のような治療法が行われます。
亜鉛不足が疑われる場合
亜鉛製剤を服用します。3ヶ月~半年くらい摂り続けることでほとんどの患者に効果が現れるとされています。もちろん、薬だけに頼らず、普段の食事内容でも亜鉛を多く含むものを積極的に取ることはとても重要です。また、加工食品など、添加物を多く含むものを摂りすぎないようにしましょう。
唾液減少が原因の場合
自然に唾液を出すよう、繊維質のものなどもほどよく取り入れた食生活をしたり、ガムを咬んだり、唾液腺のマッサージをすることが勧められます。どうしても改善が見られない場合には唾液分泌促進剤の投与がなされることもあります。
全身疾患が原因の場合
原因の病気を治療することが必要です。
舌の異常が原因の場合
舌の炎症が起こっている場合には、とがった歯や入れ歯が舌を傷つけているならその原因の排除、貧血による舌炎の場合には鉄剤の投与が効果的です。カンジダによるものの場合には抗真菌剤の投与がなされます。
薬剤の副作用の場合
薬剤の変更や中止、それが困難であれば、亜鉛を含む食品を多く摂取するようにしたり、亜鉛製剤の服用などが勧められます。
心因性の場合
心療内科などでのカウンセリングが効果的なこともあります。
何科に行けば良い??
味覚異常は耳鼻科や内科、歯科口腔外科などで診てもらえます。場合によっては味覚異常を専門に扱う大学病院などの医療機関に紹介される場合もあります。
味覚異常について まとめ
味覚異常は本来の味がわかりにくくなるため、とても不愉快であるばかりか、味付けが必要以上に濃くなったりすることで、塩分をとり過ぎ、高血圧など他の病気を引き起こしかねないところが怖いところです。少しでも異変を感じたら早めに医療機関で相談してみましょう。
「味覚異常」関連記事: