そもそも奥歯は虫歯ができやすい??
奥歯は前歯と比べてずっと虫歯ができやすいと言えます。それは次のような理由によります。
<1、奥歯の溝に汚れが停滞しやすい>
奥歯のかむ面には溝があります。溝の汚れは汚れが溜まりやすく、意識をして歯ブラシを当てなければ汚れが取れません。とくに、生えたばかりの6歳臼歯や12歳臼歯は、溝の深さがとても深く、より虫歯になりやすいと言えます。
<2、歯と歯の間に汚れが停滞しやすい>
歯と歯の間は前歯でも虫歯になりやすいところではありますが、奥歯の歯と歯の間はとくに汚れが停滞しやすいため、虫歯になりやすい傾向があります。
<他にも虫歯になりやすい歯は?>
虫歯になりやすい歯のランキングでは、第一大臼歯(前から6番目の歯、「6歳臼歯」とも)が第1位、第二大臼歯(第一大臼歯の後ろの歯、12歳臼歯とも)が第2位となっています。とくに、1位の第一大臼歯は、6歳という低年齢で生えてきて、なおかつ乳歯列の後ろから生えてくるために、生えてきたこと自体に気づかれなかったり、などの理由で歯磨きがおろそかになりがちで虫歯になってしまいやすく、またのちに悪化しやすいのです。
また、18歳以降くらいで生えてくる第三大臼歯(親知らず)も、歯ブラシが届きにくいなどの理由から非常に虫歯になりやすい歯です。
奥歯のこんな症状は虫歯?
奥歯に次のような症状があると虫歯だ!と決めつけがちですが、違うこともあります。
ケース1;奥歯に黒いところがあるんだけど、虫歯?
「黒い=虫歯」と思っている人が多いですが、そうでない場合もあります。例えば、歯の溝には飲食物の色がつくこともあります。例えばコーヒーを飲む人などは、溝に黒い着色がつきやすくなります。また、体質的に歯の表面に黒いステイン(着色)が広範囲につきやすいタイプの人がいます。このような着色は歯ブラシではなかなか落ちませんが、歯科医院でクリーニングをすると落とすことができます。また、かつて使われていた銀歯の材料であるアマルガムも長期に詰めてある場合、虫歯でないのに周囲の歯が黒変していることがあります。
ケース2;奥歯が痛いんだけど、虫歯?
歯が痛いと虫歯かな?と不安になってしまいますが、そうでない場合もよくあります。例えば、歯ぎしりによって強い力がかかったり、治療中の仮の蓋や新しく入れた詰め物の高さが高かったりすることで歯に異常な力がかかると痛むことがあります。また、顎関節症の筋肉の痛みや副鼻腔炎、またその他の全身疾患などによっても奥歯が痛く感じることもあります。
ケース3;奥歯に穴があるんだけど、虫歯?
穴が開くと虫歯以外の可能性などなさそうですが、実は虫歯でなくても穴が開くことはあります。例えば、歯と歯がこすれ合うことによって起こる咬耗、歯ブラシや歯磨き粉によっておこる歯の磨耗、酸性食品や胃液の逆流による歯の酸蝕、歯ぎしりが酷い場合に見られる歯の根元のくさび状欠損などが挙げられます。
奥歯の虫歯の治療法と、治療期間は?
奥歯の虫歯の治療法は虫歯の程度によっても変わってきます。
1.軽い虫歯の場合
虫歯を取り除き、コンポジットレジンという歯科用プラスチックの材料を詰める治療で一回の治療で終わります。
2.やや大きめの虫歯の場合
虫歯の範囲が広い場合は、虫歯を削った後に型を取り、銀歯やセラミックなどの材料を詰めます。通常2回の治療で終わります。
3.神経がやられてしまった虫歯の場合
虫歯が神経まで行ってしまった場合は神経を取る治療が必要となります。神経の治療が終わったら、詰め物やかぶせ物の治療に入ります。神経の治療が2回~8回くらい(状態によってはもっと長くなることも)、詰め物やかぶせ物の治療で2回~4回ほどかかります。
4.ボロボロで残せない虫歯の場合
ボロボロで残せない場合には抜歯となります。抜歯は1回、その後ブリッジを入れる場合には3回、インプラントを入れる場合には最終的に歯が入るまで数か月かかります。入れ歯の場合は3~4回かかります。
奥歯の虫歯の治療費、相場は?
保険内(3割負担の場合)
<白い詰め物・被せ物>
- 詰め物:コンポジットレジン;700円~1000円程度
- 被せ物:硬質レジンジャケットクラウン(小臼歯のみ);約4500円
- 被せ物:CAD/CAM冠(小臼歯のみ); 約8500円
<コア(土台)>
- メタルコア(金属の土台);600~750円程度
- レジンコア(プラスチックの土台);450~480円程度
<金属の詰め物・被せ物>
- メタルインレー(銀歯の詰め物)、メタルクラウン(銀歯のかぶせ物);2000~4000円
- ブリッジ(1歯のみ欠損の場合);9000円程度
<入れ歯>
- 5000円~1万円程度
<根の治療>
- 1500~3000円程度
<抜歯>
- 800円~1500円程度(抜歯のみの料金)
保険外
<白い詰め物・被せ物>
- 詰め物:セラミックインレー;3~5万円
- 被せ物:セラミッククラウン;8~15万円
<コア(土台)>
- ファイバーコア(グラスファイバーの白い土台);1万~3万円
- ゴールドコア(金合金の土台);1万~3万円
<金属の詰め物・被せ物>
- ゴールドインレー(金合金の詰め物);3万~5万円
- ゴールドクラウン(金合金の被せ物);4万~12万円
<ブリッジ>
- セラミックブリッジ(1歯欠損の場合);24万~45万円
<入れ歯>
- 1万~150万円
<インプラント>
- 15万~50万円(被せ物まで全て含む)
治療後も痛みが続くんだけど、治ってない?
奥歯の治療をした後に痛みが続くケースとしていくつか考えられます。
ケース1;虫歯を削った後に冷たい物や熱い物でしみる
虫歯を削った後は削った刺激が神経に伝わっていますので、一時的に冷たい物や熱い物でしみやすくなります。とくに銀歯を入れた後は熱を通しやすいため、しみるのが強く感じやすいですが、様子を見ているうちにほとんどの場合は治ってきます。
ケース2;虫歯を削った後、噛むと痛い
虫歯を削って詰め物が入るまでの間の仮づめ、また詰め物や被せ物を入れた後にかむと痛くなる場合があります。こんな場合は仮づめや詰め物のかみ合わせが高いことが考えられます。高さを調整することで痛みは治まります。
ケース3;神経の治療や根の治療の後に痛みがある
神経や根の治療で、根の奥の治療をした後は、かむと痛かったり、うずいたりなど一時的に痛みが出る場合があります。これは神経をちぎり取った部分の傷口が痛んだり、根の奥が刺激されるために起こる症状で、大抵の場合は自然に落ち着きます。
ケース4;麻酔の注射をした部分が痛い
麻酔をして削った後、歯に痛みを感じる場合、実は麻酔を打った歯茎が痛い、ということがあります。麻酔を打った場所が口内炎になることも珍しくなく、その場合結構強い痛みを感じることもありますが、口内炎が落ち着くと痛みもなくなります。
虫歯が痛い場合に、虫歯の他に考えられる病気はある?
奥歯が痛いからといって必ずしも歯に原因があるわけではない場合もあります。例えば、副鼻腔炎(上顎洞炎)、顎関節症、偏頭痛、群発頭痛、帯状疱疹、心疾患(心筋梗塞や狭心症)、三叉神経痛、精神疾患などでも歯に痛みを感じることがある、ということが分かっています。
奥歯の虫歯を放置するとどうなる?
奥歯の虫歯を放置すると、根の奥を伝って歯の周囲に感染が広がり、歯茎が大きく腫れて強く痛み、熱が出たりすることもあります。上の奥歯の場合は感染が上顎洞と呼ばれる副鼻腔の一部に広がり上顎洞炎(副鼻腔炎)を起こしてしまうことがあります。また、下の歯の場合には骨髄炎を起こして骨が腐ってあごの骨を大きく切除しなければならなくなったり、虫歯菌が血管を通して全身に回って心臓や脳で悪さをして命が危険にさらされることもあります。
奥歯の虫歯について まとめ
奥歯は物をかむときに要となる歯です。奥歯を虫歯で失うと、それをきっかけで前歯に負担がかかりすぎて全体がボロボロになってしまうこともあります。前歯に関してもそうですが、虫歯はできてしまったら早めに治すことが肝心です。ただ、奥歯の虫歯は気づきにくく、虫歯のかかりはじめは無症状であることも多いため、定期的に悪いところがないか検診を受けることをお勧めします。
「奥歯 虫歯」関連記事: