そもそもプラークスコアっていったい何?
プラーク(歯垢)の付着状況を評価する指数です。この指数には様々なものがありますが、歯科医院で用いられているものでは、オレリーのプラークコントロールレコード:通称PCRが最も一般的です。PCRは、歯周疾患の程度を表わすものではなく、口腔内の清掃状況を評価する指数です。したがって、重度歯周病の人でも、PCRの結果が良好なこともありますし、逆に全く歯周病の傾向はなくても、歯磨きをしていない状態ではPCRの結果は悪くなります。
<基準について>
PCRを作ったオレリーは基準値(目標値)を10%以下としていますが、現実的に10%以下というのはかなり難しいです。PCRでのチェックを行う歯科医院の多くは20%以下を目標として設定しているところが多いです。特に、インプラントや歯周外科、矯正治療を行う患者に対しては基準を厳しく設けることもあります。
<平均について>
現実には、歯科医院に来院される方では40~70%が多いです。PCRでは歯頸部のプラークの付着をチェックするので、普通の歯磨きの仕方では近遠心面の歯頸部にプラークが残ってしまっていることが多いためです。(近遠心面の歯頸部のプラークはフロスや歯間ブラシを使わないと取れないことが多いため)
これはあくまで、歯科医院に来院し、PCRチェックを受けている人の平均値であり、歯科医院に定期検診に行かない、歯磨きチェックをしたことがないというような人ではPCR70%~になるのではないかと思います。
プラークスコアがどのくらいだと、どうなのですか?
パーセンテージに応じた状況をそれぞれ解説いたします。
90~100%
初診時や、子供には100%という方も意外といます。磨いた状態でこれでは、ほぼ歯肉炎にはなっていると思って間違いありません。この状態が慢性的に続いているようであれば、歯石も大量に付着している可能性があります。プラーク量もかなり多いので、プラーク由来の口臭の可能性もあります。(子供の口臭の原因は多くはプラークです)かなりの清掃不良ですが、PCRはあくまで清掃状況を表す指数なので、歯周病の進行具合はわかりません。
70~90%
これぐらいの方も良くいらっしゃいます。今は歯周病や虫歯がなくても、この状況が続くようであれば、今後確実に歯周病にはなると考えられます。すでに歯肉炎にはなっているでしょう。歯磨きの指導、練習、短い期間での定期健診をお勧めします。
50~70%
定期健診で毎回チェックをしていてもこれくらいの人は多くいます。年に数回チェックを受けクリーニングをしていれば、急激に口腔内の状況が悪化するということはないでしょうが、免疫力の低下などと重なると、歯周病が一気に進行する可能性もあります。補助清掃用具(歯間ブラシ、フロス)の使用を積極的に行うことをお勧めします。
30~50%
頑張って磨いていても、これぐらいのスコアが限界という方もいます。特に子供の場合は、自分で磨いていてこのくらいであれば、かなり頑張っているほうだと思います。
20~30%
このくらい磨けていて、定期検診もきちんと受けていれば歯周病が進行する可能性は低くなってきます。
10~20%
清掃状態は良好です。この状態が維持できていれば、口腔内環境も良好に保てる可能性が高いです。
~10%
素晴らしいです!歯科衛生士でもこれだけ普段から磨けている人はいないのでは?
プラークスコアとはどのように計算し、測るのですか?
染めだし方法
- 専用の染めだし液を使ってプラークを染めだします。歯磨き後の状態をチェックするのが基本ですので、歯磨き後の歯面に、綿球にしみ込ませた赤い染めだし液を塗っていきます。唾液が多いとプラークがうまく染まらないので、唾液が多い場合には少し乾燥させてから行います。
- 歯全体に染めだし液の塗布が終わったら、軽く1,2回水でゆすいでもらいます。
- 歯に染めだし液の赤い色が残っている部分が歯に付着したプラーク(磨き残し)です。
評価方法
1歯を、次のように4分割します。
- 頬側(唇側)
- 舌側(口蓋)
- 近心
- 遠心
4か所の歯頸部についたプラークをチェックしていきます。
チェックがついた数÷(歯数×4)
例:チェックがついた数 28か所÷(歯28本×4)=0.25=PCR25%
まとめ プラークスコアで知っておくべき情報について
- PCRは「清掃状況」を表す指数です。「歯周疾患」の程度とは関係ありません。
歯周病の主な原因はプラークですが、それに咬合力などの要因が加わると、ごく少量のプラークであっても、重篤な歯周病を引き起こすことがあります。そのためPCRが良好=歯周病にならない と、簡単には言えません。PCR良好=歯周病になりにくい、進行しにくい 程度に考えていただいた方がいいでしょう。
- インプラント、歯周外科、矯正治療を行う場合には厳しい基準を。
このような処置が控えている場合には、PCRを確実に20%以下に出来るような歯磨きのテクニックを患者自身に身につけてもらう必要があります。PCRが高い状況で処置を行うと、治療結果にも悪影響を及ぼします。(矯正の場合は、治療期間中の齲蝕リスク、歯周病リスクを回避することが困難と考えられます。)
- 同じPCR値でも、プラークの量によって状況は大きく異なる。
PCRが100%に近くても、歯頸部にのみ少量プラークが残っていて100%なのと、歯冠部分や咬合面にまでたっぷりプラークが付着していて100%なのでは全く状況は違います。歯科衛生士(歯科医師)はPCRの値だけにとらわれることなく、全体のプラークの付着状況と、口腔内の状況に応じた口腔衛生指導を行うことが必要です。
- 最近「リアルタイムPCRシステム」という遺伝子検査システムを採用している歯科医院もあります。
最近「リアルタイムPCRシステム」という遺伝子検査システムを採用している歯科医院もありますが、これはここでいうPCRとは全く別物です。
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