そもそも歯肉炎とはなんですか?
歯肉炎はプラーク、いわゆる歯垢が歯に付くことから始まる歯肉の炎症のことを言います。具体的には歯肉が腫れる事や痛む事、そして赤くなる事が起こります。一般的な症状はそれに加え、歯周ポケットの深さを測る検査として器具を入れた際に血がでることもあります。つまり血が出やすい状態であるという事です。また歯周ポケットの深さも正常より深くなります。しかしながら歯周病とは異なり、歯と歯肉が剥がれていっているという状態ではありません。歯肉が腫れてできた深さの分だけポケットが深くなっている状態です。つまり歯肉炎は歯周病のように歯と歯肉が付着している部分が剥がれているという問題が起こっている状態でなく、歯肉の一部にだけ炎症が起こっている、歯周病の前段階と言えます。
<歯肉炎は子供もなる>
歯肉炎は子供にも起こります。歯肉炎を持つ子供の割合は3歳から7歳におよそ右肩上がりに増えていき80%に達します。その後17歳まで横ばいであるというデータがあります。そのため子供の歯肉炎は身近なものであると言えます。
歯肉炎になる原因
歯肉炎は上記の通り歯周病同様にプラークが原因となります。プラークを原因とした歯肉の炎症が歯肉炎です。歯肉炎は最初、プラークが歯に付いてから24時間以内に症状が現れます。これは肉眼で見えるものではありませんが、炎症の際が起こっている状態を顕微鏡で観察することができます。2日~4日経つと炎症の症状は明確になっていくため、このプラークが付着してから症状が現れるまでを初発期歯肉炎(しょはつきしにくえん)と呼びます。
そしてプラークが付いてから4日~7日の時期には歯肉の腫れや赤み、そして炎症がある場所にしみ出る液体が見えるようになります。これは初発期歯肉炎が進んだもので、急性歯肉炎(きゅうせいしにくえん)と呼びます。そこから進んでくと慢性歯肉炎(まんせいしにくえん)と呼ばれる状態になります。これは最初にプラークが付いてから2週~4週後に起こり、腫れている歯肉の中が壊されていきます。この状態になると歯肉炎が定着していると言えます。
自宅でできる歯肉炎の治し方
歯肉炎を予防、あるいは自宅で治療するためには原因であるプラークを取り除く必要があります。まず多くの方が思い浮かべると思われる歯磨きについて記載します。どのような歯ブラシを使用するにせよ、最も重要な事は自宅でのプラークの染め出しです。最近ではドラッグストアやインターネットでも販売されているため、容易に入手できます。そこで日々染め出しをしながら磨きにくい、磨き残しのある場所を確認し、歯科医院でのブラッシング指導が受けられない場合は試行錯誤して正しい歯磨きを習得する事が有効です。
さらに最新の研究では次のような事が報告されています。これは電動歯ブラシの有効性についてです。一般的には手動で磨く歯ブラシを使用している方が多いかと思いますが、米国の歯科医師会推奨の歯ブラシに対して、フィリップス社のソニッケアーという電動歯ブラシはその3倍のプラークを取ることができ、さらにブラウン社のオーラルBという電動歯ブラシでは手動歯ブラシの6倍のプラークを取ることができるという事です。尚、これらは全て最上位機種です。
歯磨き粉については特に有効な製品は海外の物しかありません。しかしながらウォーターピックという水流の歯間ブラシがあります。これは上記フィリップス社の同様の製品であるソニッケアー・ウルトラフロッサーよりも優れているという報告もあります。口のケアにとって有益な情報であると考えています。
歯科医院で受ける治療
スケーリング
歯科医院で受ける最初の治療がスケーリングと呼ばれるもので、これは歯石をとる治療です。歯石はプラークが石灰化して石のようになったものです。歯肉炎に限らず歯周病にも該当しますが、歯石の表面はざらついた粗いものです。そのため非常にプラークが付きやすいものであるため、歯肉炎を悪化させます。また歯石はプラークが付きやすい場所にできやすいため、その上にプラークが付きやすいということは容易に考えられます。このように歯肉炎の原因であるプラークが付きやすい場所を減らし、プラークの量を減らす事で歯肉炎を改善させる治療がスケーリングです。
PMTC
ゴムでできたカップに研磨剤を入れ、歯の表面を滑らかにするように磨く治療です。上記の歯石のように、粗い面にはプラークが付きやすくなります。そのため歯を粗い状態から滑らかな状態に磨くことでプラークが付きにくい状態にします。スケーリングで歯に粗い部分、つまり弱点がない状態にした後に、歯を全体的に防御することがPMTCの役割です。この治療は2段階~3段階に分かれていて、まず粗い研磨剤で歯を磨き、続いて細かい粒子が入った研磨剤で磨き、最後に仕上げのペーストで歯を磨くという工程があります。
ブラッシング指導
これまでの治療で、プラークが付きにくい状態に口の中を準備するという治療を終えました。しかしながら歯肉炎の原因はプラークで、これは歯磨きの方法が悪いと日々蓄積していき、歯肉炎を引き起こします。そのためプラークの染め出しを用いながら歯磨きの技術を学び、プラークを取り除く歯磨きを覚えて歯肉炎に対する治療が完了します。
歯科医院で実際に治療を行う場合の、治療期間と予算
治療期間について
歯科医院では、上記の3つの治療を主に行います。まず初回の治療の例を並べて記載します。
- 口の中に虫歯などが無いか、あるいはどのような治療がされているかのチェック
- 口全体のレントゲン写真撮影
- 歯周ポケット検査
- 診察
- ブラッシング指導
- スケーリング
- PMTC
順序は異なる事がありますが、主に上記のように診察が進みます。以下にそれぞれについて記載します。まず口の中のチェックについてですが、こちらは歯肉炎と特に関係がないと感じる方が多いと思います。ここでは虫歯などの有無だけでなく、過去に治療した後がどの程度あるのかについて調べます。治療した痕跡が多い方は、それだけ歯を掃除する技術が低い可能性があるため、歯肉炎から歯周病に移行する可能性も高いと考えられます。
続いて口全体のレントゲン写真を取る事が多いです。これは歯肉炎治療に限って言えば、歯を支える骨が溶けていないかを判断します。理由はそういった症状がある場合は歯肉炎でなく歯周病であるためです。歯周病でない事を判断して、歯肉の腫れや赤み、出血を加味して歯肉炎と診断します。そして歯周ポケット検査で歯肉炎の程度を診ます。そして支所の診察の時点での歯磨きの状態を調べ、改善点を指導します。始めの時点を調べる事で、以降の変化を見る基準とします。これらの情報をもとに診察があり、上記のような治療が行われる事が一般的です。
2回目の診察では再度歯周ポケット検査が行われ、歯肉炎が良くなったかを確認します。間隔は1週間程度ですが、ご都合の良い日時で問題ないと思います。その後ブラッシング指導でプラークが付いている程度(プラークコントロール)が改善され、歯肉炎も落ち着いた場合は3カ月に1回程度様子を診てもらいながら、上記の3つの治療を行っていきます。
費用について
費用についてですが、初回はレントゲン写真を取るため高くなります。高く見積もって4000円~5000円程度かと思います。歯肉炎以外の治療を行うとより高くなります。その後は2000円程度が目安になります。初回は10000円、二回目からは5000円程度持っていけば問題ないと思います。早期に歯肉炎を治療して、歯周病を予防して頂きたいと思います。
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