歯周病を薬で治せると聞いたのですが、どういうことですか?
歯周病治療といえば、痛い、血が出る、時間がかかる、なかなか治らないなど、つらいイメージを持っている人も多いのでは。薬を飲んでサクッと治せたらいいのに、という願いにこたえる「歯周内科」が最近じわじわ話題になっています。
歯周病を薬で治す「歯周内科」は、歯周病の最新治療法です。従来の歯石取りや歯周手術などの方法をメインにするのではなく、歯周病を引き起こしている菌の種類を特定し、薬を飲んで除菌することで歯周病を改善させようというものです。
この方法は痛みがないうえ、原因となる菌を根本的にやっつけることができるため、腫れや出血、膿などの症状が1週間ほどで劇的に改善し、再発もしにくいのが特徴です。
歯周病に効果的な薬を教えて下さい
歯周内科治療で使われる代表的な薬は以下のものです。
ジスロマック(飲み薬)
歯周病嫌気性細菌に対し強い抗菌力を発揮する、マクロライド系の抗生物質です。
<使い方>
1日1回2錠を3日間服用することで、一週間の効果が望めます。
<副作用の心配>
内科では風邪の治療などの際に、一般的に使用される薬です。副作用の少ない薬とされていますが、下痢や腹痛、吐き気、皮膚のかゆみや湿疹といった副作用がみられる場合があります。また、ワルファリンなど他の薬との飲み合わせに注意が必要ですので、服用中の薬がある場合はあらかじめ相談してください。
ハリゾンシロップ(うがい薬)
真菌つまりカビを殺してくれる薬です。
<使い方>
シロップを50~100倍に薄めたもの(シロップ5~10mLを500mLの精製水で希釈したもの)を1回約50ml、1日3~4回,できるだけ長くクチュクチュうがいします。
<液体歯みがき剤としての使い方>
毎食後、1日3回、ハリゾンシロップ1mlを小皿に取り、新しい歯ブラシにたっぷりとつけて、歯と歯茎の境目をていねいにみがきます。上の歯と下の歯を各5分ずつ。次に、シロップをつけずにもういちど歯をみがきます。
<副作用の心配>
もともと腸の中のカビを取る飲み薬として作られたもので、多少飲み込んでも吸収されにくく、心配する必要はほとんどありません。
ペリオバスターN(液体歯磨き剤)
真菌つまりカビの除去を目的として、漢方の天然素材から作られた歯磨き剤です。これをジェル状にして使いやすくした「ペリオバスタージェル」と併用することもあります。
<使い方>
ペリオバスターを4プッシュ(2cc)口に入れ、30秒ほどクチュクチュしていきわたらせます。そのあと新しい歯ブラシで口全体を歯みがきします。これを朝昼晩1週間行い、1週間目に位相差顕微鏡で菌の数を再確認。そのあと歯ブラシを取り換えて、2週間目からは2プッシュ(1cc)で朝昼晩みがきます。
<副作用の心配>
ヒノキやアロエ、ニンジンなどの天然素材から作られているため、たとえ飲み込んでも問題ありません。まれなケースでヒノキにアレルギーのある人は湿疹などが出る可能性があります。
市販薬で歯周病の薬は購入可能なのですか?
ジスロマックとハリゾンシロップは、基本的には処方箋が必要なお薬ですから、歯科医院で処方してもらいましょう。また、ペリオバスターも歯科医院でのみ購入できます。
注意するべきこと
これらのお薬をインターネットなどで購入できる方法を知っている人もいるようですが、歯周病の治療を目的として使用する場合は、まず口の中にどんな菌がどれくらいいるかを顕微鏡検査で調べてから、それに応じて薬の種類や用法を決めていきます。また、服薬に並行して、プロによる口腔内の清掃や歯石の除去などの処置をして初めて、長期的な効果が期待できます。薬は自分で入手したとしても、必要な検査や処置なしに服薬だけするのでは、メリットよりリスクが大きいと言わざるを得ないでしょう。
歯周病で薬を使う場合の治療手順を教えて下さい
一般的な流れとしては、以下の通りです。
1、位相差顕微鏡を使っての検査
口の中の微生物にはたくさんの種類があり、細菌、真菌(カビ)、原虫など、合わせて300から400種類の菌がいるとも言われています。位相差顕微鏡で口の中の菌を観察することにより、菌の数や種類、動きの活発さなどがリアルにわかるため、今患っている歯周病の原因が正確に突き止められます。
2、除菌
原因菌に効果のある抗生剤を内服するとともに、カビ取り洗口液やジェルを毎日使用して除菌を行います。
3、再検査
1週間から2週間後に再度、位相差顕微鏡を使った検査を行い、除菌の状況を確認します。
4、歯石除去
除菌した後は、菌の巣窟である歯石を除去して、再び菌が増えないように環境を整えます。
5、メンテナンス
例えば除菌によって菌がもともとの1%まで減らせたとしても、そのあとメンテナンスをきちんとしなければどんどん増えてしまい、いつの間にか元の木阿弥に。そのたびに薬を飲めばよいのかというと、そうではありません。そのようなことを繰り返していると、菌に耐性がつき、だんだん薬が効かなくなってしまうからです。
そこで、いったん除菌したなら、数か月ごとに検診とメンテナンスを行うのがベスト。歯周内科で最も大切なのは、実はこのメンテナンスの部分といえるかもしれません。
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