そもそも歯肉炎とはなんですか?
歯肉炎とは、口腔内の菌が増えることによって、歯茎が炎症を起こす状態のことを言います。炎症によって、出血や口臭などの症状が出てくるのが特徴です。
歯肉炎の原因
歯肉炎の原因は、菌がつくる歯垢(プラーク)です。歯肉炎は十分に歯磨きが行き届いていなかったり、お口の中で自浄作用が十分に働かなかったり、砂糖が入ったものをたくさん摂取することによって菌が増えてかかりやすくなります。歯肉炎のうちに治しておかなければ、歯周病という取り返しのつかない段階に進んでゆく可能性もあるので注意が必要です。
どんな症状が出たら歯肉炎?
- 歯磨きをした時に歯茎から出血する
- 歯茎が熟したトマトのように赤い
- 口臭がきつくなる
などの症状が出たら、歯肉炎が疑われます。小学生くらいになると、歯の生え変わりや歯磨き不足、ジュースやお菓子によって、また、ホルモンバランスの変化によって、多くのお子さんが歯肉炎にかかります。
健康な歯茎と違って、スティップリングがなくなり、特に歯と歯の間がぶよぶよします。また、ブラッシング不足が原因となる場合があるので、腫れた歯茎と歯の間や隙間には、たくさんの歯垢が溜まっていることが少なくありません。歯磨きをした時に出血しても、痛みを感じないで進行する場合がほとんどです。
歯肉炎と歯周病は違う?
歯肉炎と歯周病は、罹患している部位が異なります。歯肉炎は基本的に歯肉、つまり歯茎に限定して炎症が起きている状態です。歯周病になると、歯茎だけでなく、歯の周囲組織全体に影響が及びます。歯肉、歯根膜、骨も歯周病菌によって溶けてゆきます。歯肉炎がひどくなると歯周病になる可能性が高くなります。歯周病になると、歯茎の腫れがおさまって、歯肉炎の症状が顕著には出なくなることもあります。
歯肉炎の治し方について
歯肉炎を自宅で治すには
1.丁寧な歯磨き
毛先の細い歯ブラシで、歯と歯茎の間に歯ブラシの毛先を入れるようにして、毎日丁寧な歯磨きを行うようにしましょう。歯肉炎の直接的な原因となるのは、口腔内に常在する菌たちです。それらを取り除くことによって炎症を治すための土台を据えることができます。
2.補助的清掃用具の使用
歯間ブラシやフロスなどを、自分に合ったサイズで使うようにしましょう。最初は、歯間ブラシを通すだけで歯茎から血がにじんでくるので、怖いと感じるかもしれませんが、それは炎症を起こした歯茎から血が出ているからです。その周りについている歯垢を、歯間ブラシやフロスで取り除くことによって、初めて歯肉炎が改善されます。
3.鼻呼吸を意識する
口呼吸によって口腔内が乾燥していると、常在菌が爆発的に増加します。歯肉炎の原因はそれら常在菌なので、鼻呼吸を意識して口腔内が唾液で湿潤しているようにすると、抗菌作用・自浄作用が働き、歯肉炎が起きにくい環境を作り出すことができるのです。
4.食生活の改善
砂糖の多い食品をだらだら食べていたり、1日に何度も砂糖の多く含まれたジュース類を口にしていると、口腔内の菌が活発に活動し、数もどんどんと増えてしまいます。だらだら食べをしない、飲み物はお茶かお水にする、などルールを決めて食事をするなら、歯肉炎をおさえることができます。
5.免疫力を高める
歯肉炎は、免疫力が下がって、普段から口腔内に存在する菌に体が負けてしまうことで生じます。定期的な運動や規則正しい生活によって、体全体の免疫力を高めるなら、歯肉炎もおさえることができます。
その他、歯肉炎の治し方にまつわる噂について
<塩で歯肉炎が治るってほんと?>
基本的に、塩で歯肉炎が治るということについて、学術的な結果は出ていません。一般には塩が歯肉炎に良いとされていますが、歯科の世界でそれが一般的なものではありません。塩を使えば歯肉炎が治るのではなく、丁寧に歯磨きをすることで、物理的に歯垢が取り除かれて歯茎が引き締まるという効果は期待できます。それは普通の歯磨き粉を使っても、同じ結果になります。また、塩分を吸収しすぎる可能性があるので、塩で毎日歯磨きをするよりも、普通に歯磨き粉を使用したほうが、良いと言えるでしょう。
<抗生剤で歯肉炎が治るってほんと?>
一言で抗生剤と言っても様々な種類があります。普通の歯肉炎は、抗生剤を飲むことで治すことはありません。もちろん健康状態が改善されることである程度の効果は期待できるかもしれませんが、やはり直接的に歯垢や食渣を取り除かなければ、意味がありません。
抗生剤を使用した、塗り薬として歯肉炎や歯周病の治療として使われているものもありますが、それは、その薬の効果を最大限に引き出すために、何よりもまず、丁寧に歯磨きをして歯垢を取り除くことが大前提です。
歯肉炎を歯医者さんで治すためには
1.歯石除去とPMTC
まずは、歯肉炎の原因となっている歯垢を取り除くため、歯磨きの邪魔になっている、歯石を歯医者さんで全部取ってもらいましょう。お掃除は何回かに分けて行われる場合が多いですが、最後まで丁寧に取ってもらい、表面を研磨するPMTCが終わった後は、口がとてもすっきりします。お掃除の後は、歯の表面がつるつるしていて、歯垢や歯石がつきにくく、歯肉炎を治すためにうってつけの環境になります。
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2.歯磨き指導を受ける
いくら歯医者さんで丁寧に掃除をしてもらっても、家で歯垢がたまりやすい歯磨きをしていたら、意味がありません。自分の口の状態に合った歯磨きの方法を、歯医者さんで教えてもらいましょう。口の中は、人によって大きく異なります。歯並びや、歯の向きによって歯ブラシの当て方が変わってくるのです。だからこそ、上手に歯磨きをするコツや、自分の癖を歯医者さんで教えてもらう必要があるのです。
その他、最新の方法
最近では、専用の薬を使うことで、歯肉炎を改善していく方法がとられています。以下のようなお薬を使って歯肉炎を抑える方法は、日本中の多くの歯科医院・病院で開始されています。
<ジスロマック>
ジスロマックというお薬は、歯周病の原因菌に対して抗菌力を発揮してくれるので、菌が活動しにくい口腔内の状態を作り出すことができます。
<ハリゾンシロップ>
ハリゾンシロップというお薬を洗口、または歯磨き剤として使用することで、歯茎全体の最近の増殖・活動を抑え、歯肉炎を改善する効果が期待されています。
治療しにくい歯肉炎と対処法
薬物性歯肉炎
薬の副作用で歯茎が炎症を起こしたり、腫れてしまうことがあります。例えば、抗てんかん薬のフェニトインや、高血圧治療薬のカルシウム拮抗薬、自己免疫の病気で使われるシクロスポリンなどは、副作用として歯肉炎や歯肉増殖を引き起こすと言われています。
これらは、病院との相談が何よりも大切になりますが、自分でできる対処法としては、すべて歯垢が多いと重症化しますので、毎日の丁寧な歯磨きを心がけることで、歯肉炎の重症化をおさえることができます。
妊娠性歯肉炎
妊娠中は、ホルモンバランスの崩れによって、歯肉炎や歯周病が発生しやすくなります。また、つわりなどが原因で、歯磨きを思うようにできないことも歯肉炎を重症化させる要因となります。妊娠性歯肉炎の場合はできるだけ、妊娠前に歯科医院で歯磨き講習を受けておき、重症化の要因となる埋伏歯をあらかじめ抜歯しておくことが、大切になります。
急性ヘルペス性歯肉炎
急性ヘルペス性歯肉炎は、家族との接触感染や飛沫感染などによって、単純ヘルペスウイルスが感染します。風邪と同じような症状が出て、口内炎が多数発生します。これを予防するには、口内炎ができている人と一緒に食事をしないこと、接触を避けることが大切になります。また感染してからも口の中を清潔に保って歯肉炎を重症化させないように気をつけることが大切です。
急性壊死性潰瘍性歯肉炎
急性壊死性潰瘍性歯肉炎は、紡錘菌やスピロヘータなどの菌が感染して、歯肉辺縁部に壊死性潰瘍をともなう歯肉炎を発症します。これは、免疫力の低下が大きな原因となります。また、日頃の清掃状態が悪い場合にも起こりやすいとされています。普段から丁寧な歯磨きを心がけること、免疫力を高める食生活、運動をすることなどが、この歯肉炎に感染しないようにするためのポイントです。
慢性剥離性歯肉炎
これは、歯茎の表面の皮がはがれ、痛みが生じる病気です。女性に多く、ホルモンバランスの崩れによって生じることがあります。ホルモンバランスが崩れやすい、閉経後や整理不順の時期には、丁寧な歯磨きや補助的清掃用具の使用を心がけましょう。また、精神的なストレスも要因になることがあるので、ストレスをためないように、健康的な食生活・規則正しい生活を心がけることも大切です。
歯肉炎の治し方について まとめ
最後に歯肉炎の治し方について重要な点をおさらいしておきましょう。
<自宅で行う方法>
- 丁寧な歯磨き
- 補助的清掃用具の使用
- 鼻呼吸を意識する
- 食生活の改善
- 免疫力を高める
<歯医者さんで行われる治療>
- 歯石除去とPMTC
- 歯磨き指導を受ける
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