そもそも埋伏歯とは
「埋伏歯」とは、「通常ならば外に出ているべき(生えているべき)歯が、顎の骨、もしくは歯肉の中に埋伏している(埋まっている)歯」のことを指します。埋伏してしまうのは、上下28本の通常の歯である場合もありますし、8番目の歯、いわゆる「親知らず」である場合も存在します。「埋伏歯」という言葉自体は「埋伏している歯」を指す名称ですので、いわゆる病名と呼ばれる言葉ではございません。しかし、埋伏歯の存在によって様々な症状が発症することがあります。
埋伏歯の特徴や症状について
埋伏歯の”埋まり方”には幾つかの種類が存在し、
- 骨の中に完全に埋まっているもの
- 骨からは一部分出ているが粘膜内にとどまっているもの
- まだ外には出ていない(生えていない)もの
まで、そのケースは様々です。そんな中、親知らずによく見られるケースが、「半埋伏」という状態です。「歯が半分埋まっている状態」と解釈してもらえれば分かり易いのですが、半埋伏歯は、歯の一部は外に見えているが、その大部分か未だ、粘膜〜骨の中に埋伏している(埋まっている)状態の歯のことを指します。
埋伏歯にどうやって気付けばよい?
埋伏歯の存在に自分自身で気づくことは、非常に難しいと言えます。先程触れた「半埋伏歯」の場合は、歯の一部分が中途半端に外に出ている(生えている)ため、口の中をよく観察することで埋伏歯の存在に気づくことが可能です。しかし、ただでさえ狭い口の中で、半埋伏歯の存在を自分自身の肉眼で確認することは容易ではありません。さらに、埋伏歯は奥歯に生じることが多いため、さらにその確認(肉眼での)は難しくなります。
埋伏歯の存在を確実に確認するには、
医療機関での適切な検査を受ける必要があります。
専門的な用具を使って口の中を細かに確認してもらえますし、レントゲン撮影を行なうことで、粘膜より下から顎の骨の中までの構造をしっかりと調べることが可能です。
埋伏歯を放置するとどうなる?
歯肉部(歯茎部)の炎症
代表的なケースは、半埋伏歯を放置したことが原因で生じる歯肉部(歯茎部)の炎症です。半埋伏歯は、通常なら生えてくることの無い狭いスペースに存在するため、歯磨きなどの口腔内清掃が行き届かず、周囲の歯肉との間が不清潔になってしまいがちです。埋伏歯を放置したまま、その周囲の不清潔な状況がそのままにされてしまった場合、最近感染などによって過度の炎症が生じてしまうことがあります。
<埋伏歯によって炎症が起こっていた場合の対処法>
埋伏歯によって炎症の症状が出てしまった場合は、その症状がヒドくなってしまう前に、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。痛みがひどい場合は普段使っている痛み止めを服用するのも応急処置の1つですが、あくまでこれは応急的な対処法です。炎症の原因となる埋伏歯の存在にアプローチすることが、根本的な治療となりますので、炎症症状がでた場合はすぐに医療機関にて適切な検査及び処置を行なってもらいましょう。
歯並びの悪化や、萌出の遅れ
また、骨の中に完全に埋まっているタイプの埋伏歯は、その存在によって、他の正常な歯が生えてくる進路やスペースを邪魔してしまうことがあります。特に若年期に埋伏歯を放置してしまうと、正常な歯の発育を阻害してしまい、歯並びが悪くなったり、歯が生えて来るのが遅れてしまったりすることがあります。
埋伏歯の治療にはどんなものがある?
本来不必要な歯の場合
埋伏歯に対する治療では、抜歯が選択されることが少なくありません。埋伏歯は本来不必要な歯(余分な歯)であることが多いため、発見された場合、時期をみて抜歯を行なうことになります。ただ、中には埋伏している状態を改善、つまり、意図的に外に出す(生えさせる)処置を選択するケースもございます。
本来必要な歯の場合
本来生えて来るべきの歯が、何らかの原因によって骨や粘膜のなかに留まってしまっている(埋伏してしまっている)場合は、専門的な処置によって意図的に埋伏歯を引っぱり出すことがあります。
埋伏歯を引っ張りだす、つまり外に出す方法としては、専門的なワイヤーによって物理的な力をくわえてゆく方法が取られることが多いです。力の強さや方向を徐々に変えながら、時間をかけて埋伏している歯を意図的に”生えさせる”こととなるのです。治療にかかる期間は症例によって様々ですので、埋伏歯の存在が疑われている方やはっきりと認識している方がおられましたら、専門的な医療機関にて、「抜歯するべきなのか?それとも牽引(引っ張りだす)する必要があるのか?」という点をしっかり検査・診断してもらい、それらにかかる期間や費用について相談しましょう。
抜歯が必要な埋伏歯とはどんなもの?
抜歯が必要な埋伏歯を一言で説明すると、「本来必要でない、その存在によって不利益が生じてしまっている歯」となります。先に述べたように、埋伏歯の全てが抜歯の対象になる訳ではなく、中には牽引(外に引っ張りだす)ことで利益を得られるケースもございます。埋伏歯のせいで炎症症状が生じてしまっているケースなどは、抜歯が必要な埋伏歯と言えますが、埋伏歯の全てがそうとは限らないため、埋伏歯への詳しい対応については、専門的な医療機関にて相談することが必要です。
埋伏歯を抜歯する手順について
埋伏歯の抜歯は、通常の抜歯と比べ、その手順も抜歯にかかる時間も大きく異なります。
粘膜の下まで出てきているタイプから骨の中に完全に埋まっているものまで、症例によって様々ではありますが、一般的には抜歯にかかる時間は長くなることがほとんどです。
埋伏歯を取り出す(抜歯する)ためには、埋伏箇所まで器具をアプローチさせる必要がありますから、埋伏歯本体までの粘膜や骨に手を加えることとなります。粘膜の切開や骨を削るステップが伴いますので、その分時間がかかるという訳です。治療に際して身体に加えられる侵襲が増えますので、治療後の痛みが強く出てしまったり、予後観察のための通院回数が多くなる場合もございます。また、抜歯する埋伏歯の本数やその他の全身病変の存在によっては、埋伏歯の抜歯手術を全身麻酔下にて行なうケースも存在します。
保険は適用される?
埋伏歯の抜歯には、保険がきくケースがほとんどです。しかし、矯正治療のための埋伏歯抜歯などでは、保険のきかない場合もありますので、詳しくは治療前にしっかりと専門医から情報を得るよう心がけましょう。
埋伏歯について まとめ
最後に埋伏歯について重要な点をおさらいしておきましょう。
<治療の方法>
- 本来不要な歯→基本的に抜歯
- 本来必要な歯→専門的な処置により、意図的に萌出させる
<抜歯の手順>
- 粘膜の切開や、骨を削る
- 抜歯処置を行う
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