そもそも溝状舌とは
溝状舌(こうじょうぜつ)とは、文字通り、「溝状になった舌」のことです。正常とされている舌には通常、溝は存在しません。溝状舌では舌の表側に多数の溝がみられます。溝は左右どちらにも同じようにできていることが多く、溝の深さの程度もさまざまです。薄くスジやシワがついているのように見えるものから、深く切れ込んだ感じのものまであります。先天的(生まれつき)なものと後天的なものがあり、先天的なものは変形症、形成異常というように分類されています。とくにそれで治療の必要性というのはありませんが、溝部分に細菌が繁殖しやすくなりますので、
清潔に保つために努力が必要です。
どれくらいの頻度で発症する?
1989年の東北大学の調査では、日本人においては人口の2.6%ほどに見られたという結果が出ています。世界的には人口の20%に溝状舌を持つ人がいるとされ、男女比では男性に出現することが多いと言われています。
どんな症状が起こる?
溝状舌の表面はとくに傷が付いているわけではないため、溝になっていない部分と同じようなつるんとした粘膜面です。とくにそれで
- 痛みなどの症状があるわけでもなく、
- 味覚に異常をきたすというわけでもありません。
また、年齢とともに進行することが多く見られますが、清潔にしている限り、
溝状舌自体が問題になるということはほとんどありません。
進行したからといって悪性化する、ということもありません。しかし口の中の不衛生が続いた場合、溝部に溜まった細菌が口臭の原因になったり、炎症をおこして痛みや味覚異常を出すこともあります。また、もちろん伝染性などはありません。
溝状舌の原因は?
溝状舌の原因には先天的なものと後天的なものがあります。
先天性のもの
先天性のものは遺伝が関係しているとも言われており、家族内に数代にわたって発生することもあります。
後天的なもの
後天的なものの原因としては、外傷や感染、ビタミン欠乏、腫瘍、また全身疾患(メルカーソン・ローゼンタール症候群やダウン症候群)の一症状として現れることがあります。しかし、はっきりとした原因は突き止められておらず、AAOM(American Academy Of Medicine)によると、舌における溝の発生は、「通常おこりうる舌の変化」だと考えられているということです。つまりあまり病的な側面はないということです。
どんな治療法がある?
溝状舌は、通常それ自体の治療は必要ありません。また、先天的なものに関しては予防する方法もありません。後天的にできるものに関しての予防法としては、外傷や炎症を起こさないように注意することくらいでしょう。しかし、原因がはっきりとわかっていないことからいっても、完全に予防することはほぼ不可能であると言っていいでしょう。
溝を清潔に保つことが肝心
溝にたまる細菌が原因で炎症、感染症などを起こすことがありますが、それを予防することは可能です。とくに溝が深い場合には深部にまで細菌がたまりやすいため、感染を起こす原因となる細菌をなるべく口の中に繁殖させないようにすることが大事です。
そのためには歯磨きの徹底、デンタルリンスを使っての殺菌、舌ブラシなどをつかって舌の表面をやさしくブラッシングして食べカスなどを取り除く、などのセルフケアが必要です。
併発する可能性のある病気はありますか?
溝状舌があることで併発する可能性のある病気としては、
- 不衛生が原因で起こる舌炎、
- また多くの場合地図状舌(ちずじょうぜつ)を併発します。
この地図状舌とは、舌の表面にまるで地図のように縁取られた原因不明の赤斑です。
(画像は溝状舌と地図状舌を併発している例。奥に見られるのが地図状舌の症状)
この赤斑の部分は滑らかで赤い色をしており、正常な舌に見られるような乳頭突起と呼ばれる突起物が欠如しています。ですが、これもとくに症状はないことがほとんどで、無害であり、治療の必要もありません。
顔面麻痺を引き起こす可能性は??
また、もしも舌に感染症が起きた場合、顔面神経麻痺を起こすことがあるとも言われています。しかし頻度としては少ないものなので、そう神経質になる必要もないでしょう。
溝状舌は高齢者がなりやすい?
溝状舌は年齢とともに現れことも多いため、お年寄り、とくに寝たきりのお年寄りのお口の衛生管理にはとくに注意が必要です。というのは、お口の中の細菌が肺炎を起こす大きな原因になっているからです。高齢者は体の反射機能が衰えているため、異物が気管の方に入りやすく、唾液の中の細菌が肺の方に侵入しやすいのです。これによっておこる肺炎を誤嚥性肺炎と呼んでいますが、これが高齢者の死亡原因となっていることが多く、その背景には口の中の不衛生が大いに関係していることが考えられます。自分でお口のケアができない、というような場合には
家族や周囲の人が十分に口腔環境に注意をしてあげることが非常に大切です。
溝状舌について まとめ
最後に溝状舌について重要な点をおさらいしておきましょう。
- 溝状舌は痛みや味覚異常を引き起こすことがない
- 原因はほとんど解明されていない
- 溝状舌は伝染しない
- 溝にたまる食べかすなどから舌炎を引き起こす可能性がある
- 溝の清掃など、口内環境を綺麗に保つことが大切
- お年寄りに多く、介護の方は口腔環境に要注意
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