親知らずの抜歯・手術について
親知らずの抜歯は列記とした手術ですが、その内容はケースバイケースで多岐にわたるため、なんだか釈然としないように思えます・・・。そこで今回は親知らずを抜歯する際の手術・入院に関して正しい知識を身に付けていただけるよう、詳しく丁寧に解説いたします!
どのような親知らずの場合手術や入院が必要になる?
手術について
初めに手術についてですが、歯を抜く場合の抜歯術は全てが手術に当てはまります。そして抜歯術は難易度によって通常3段階に分かれています。この難易度の最も高い抜歯術が入院や全身麻酔などを必要とすることになります。
埋伏智歯
親知らずのことを智歯と言いますが、これが顎の中に埋まっている状態の場合入院下での抜歯になる場合があります。病名としては水平埋伏智歯や完全埋伏智歯などで抜歯の難易度が最も高い抜歯術になります。しかし顎の骨の中に埋まっているからといって必ずしも入院が必要な訳ではありません。入院や全身麻酔での手術が必要かどうかは担当歯科医師と話し合って決定していきます。
入院・手術の具体的な流れを初診から抜糸まで教えて!
1、入院施設のある歯科医院や口腔外科のある総合病院などを受診する。
まずは初診で問診を行い、レントゲンや検査をしてもらいます。どこの医院を受診して良いか解らない場合には近くの歯科医院で相談をするのが良いでしょう。
2、検査結果の説明を聞く。
初診時の検査によって治療方法や入院下での抜歯の必要性などについて説明がありますので良く聞きましょう。医院の説明や治療方法に納得が出来ない場合や不安が残る場合はセカンドオピニオンを求めても良いでしょう。この段階で必ず入院が必要なのか、入院しないで抜歯をする方法はないのか、全身麻酔で行うのか、静脈内鎮静法で行うのか、入院日数は何日間になるのか、などしっかりと担当の先生と話し合うことが重要です。
3、入院時手術時検査を行う。
治療方法や入院下での抜歯の必要性に同意した場合には、入院時や手術時に必要な検査を行います。尿検査や血液検査、胸部レントゲン検査など入院時検査は病院によっても内容が異なる場合があります。
4・入院
入院時検査後、入院となります。入院後は看護師から病室の案内や病院での注意事項の説明、検温などがあります。全身麻酔を行う場合や静脈内鎮静法を麻酔科の先生が行う場合には麻酔科の先生の問診があります。問診時に全身麻酔や静脈内鎮静法を行う場合には、注意事項の説明や麻酔のかけ方、危険性や麻酔による不快事項の説明などがあります。皆さんは全身麻酔は痛みも感じることもなく、寝ているだけなのでとても楽なイメージがあるかもしれませんが、実際は自分で呼吸が出来ない状態になる為、かなりの危険性があります。簡単な手術でも全身麻酔の事故で亡くなってしまう患者さんもいます。麻酔科の先生の話を十分に聞いて不安なことや心配なことは確認しておきましょう。
5、手術
病院によっても違いがありますが入院当日に手術を行います。手術室で手術を行う場合にはストレッチャーに乗って手術室へ移動し、全身麻酔や静脈内鎮静法を行います。全身麻酔の場合は手術室に入ると手や足から点滴をします。通常はこの点滴から眠くなる薬が入りその後の記憶はありません。薬が入った後は気道確保のために鼻からチューブを入れます。このチューブに人工呼吸器を接続することで自分で呼吸が出来ない状態でも呼吸管理が出来るようになります。その後、顔や口の中の消毒を行い手術用のドレープをかけて手術を開始します。全身麻酔をかけていても局所麻酔を行います。全身麻酔中でも人は痛みを感じますので血圧の上昇や心拍数の増加などに反映されます。その為局所麻酔を行い抜歯をしていきます。抜歯の方法は4本同時抜歯の項目に記載した通りです。手術の後、覚醒し自分で呼吸が出来るようになったことを確認して病室のベッドへ戻ります。外来で手術を行う場合には歩いて外来へ行き、手術を行い歩いてベッドへ戻ってきます。
6、診察
手術翌日、入院患者専用の処置室がある病院では処置室で診察を行います。処置室が無い病院では外来で診察を行います。抜歯した部位の止血状態や傷の治癒状態などを確認して、消毒を行います。大学病院などで抜歯をするとテレビなどでよく見る教授回診などもある場合があります。若手の医師が入院患者さんの状態を一人一人教授に説明をしていきます。
翌日は麻酔科の先生の診察も行われます。
7、退院
術後の経過がよければ退院となります。通常は1泊の入院で退院となります。また静脈内鎮静法を利用する場合などは日帰りの場合もあります。費用は通常は退院時に支払うことになります。
8、退院後
退院後は外来での経過観察を行います。通常一週間前後で縫った糸を取ります。その後は抜歯した部位の治癒状態によって通院終了となりますが、長くても抜歯後1カ月ぐらいの経過観察で終了となります。
入院して手術と聞くと腫れや痛みがひどい気がしますが、実際はどうなの??
痛みに関して
全身麻酔をして抜歯をすると先ほどもお話したように術中は全く痛みはありません。しかし術後の痛みに関しては局所麻酔を使って抜歯をした場合と同じ痛みがあります。全身麻酔をしたからといって抜いた後の痛みが軽減されることはありません。通常痛みのピークは術後24時間ぐらいで、そこから徐々に痛みが落ち着いてきます。親知らずを抜いた後は我慢しないで痛み止めを飲みましょう。痛みが出てきてから痛み止めを飲むと痛み止めの効き目が薄くなってしまいます。痛み止めの種類や体重などによって効き目も違いますが、抜歯後24時間以内は痛みのピークになりますので、
6時間から8時間間隔で痛み止めを飲む
ようにしましょう。痛み止め効果の隙間を作らず、それほど痛みが強くなることはないでしょう。また抜歯後の痛みを軽減する方法としては、24時間以内は軽く冷やしてください。
腫れに関して
残念ながら全身麻酔をしても、局所麻酔で抜歯をしても腫れは必ず出ます。特に骨を削るような大変な抜歯の場合は腫れも大きくなってしまう事が多いです。入院下で抜歯した場合や全身麻酔で抜歯した場合はステロイドなどを用いて腫れを少し和らげるような薬を使ってくれることもありますが、完全に腫れを抑えることはできません。腫れのピークは48時間ぐらいと言われていますが、1週間ほど腫れが残ることも珍しくはありません。抜歯後の痛みを軽減させる場合と同様に腫れに対しても
少し冷やしてあげることは効果的
です。しかし冷やし過ぎは抜歯後の治癒を遅くしてしまいますので、氷をタオルに包んで頬に当てる程度にしましょう。また抜歯後にアザが出来る場合があります。これは冷やし過ぎによるものではありません。アザは内出血斑ですので、抜歯時の侵襲や術後の出血などによってできます。アザは1週間ぐらいで黄色のアザに変わり徐々に首のほうへ下がっていきながら約2週間ぐらいで消えてなくなります。
入院して親知らずを抜歯する際は必ず全身麻酔なの??
入院して親知らずを抜歯する場合に、必ずしも全身麻酔をするわけではありません。入院して抜歯をする場合には以下の5つの状態が考えられます。この中で患者さんの術中の痛みが強くなる可能性がある場合や長時間の処置が必要な場合は全身麻酔が必要になります。
- 下顎の埋伏歯で深くに埋まっている場合
- 全身疾患などが原因で止血が困難な場合
- 歯科恐怖症などが原因の場合
- 上下左右4本の親知らずを同時に抜く場合
- 親知らずの感染が強い患者さんの場合
特に①、④、⑤の場合が全身麻酔の適応となることが多いでしょう。また③の場合は静脈内鎮静法で抜歯をすることが多いと考えられます。気持ちがリラックスした状態であれば抜歯をすることが可能ですので全身麻酔の必要性はありません。しかし長時間静脈内鎮静法を行う事は困難ですので、抜歯術が1時間以上かかる場合は全身麻酔下で抜歯する場合もあります。②の場合は全身麻酔も静脈内鎮静法なども用いることは無く、術後の出血の状態をいつでもコントロールできるようにするために入院下で抜歯を行います。
入院しての親知らずの抜歯手術の場合、保険はきく?費用はどれくらい??
手術料金
まず親知らずを抜く金額は難易度によっても違います。
- 歯が真っ直ぐ萌出していて簡単な抜歯の場合→およそ1,000円程度
- 歯が斜めに萌出していて比較的抜歯が困難な場合→およそ1,500円程度
- 親知らずが完全に骨の中に埋まっているような難しいケース→およそ3,500円程度
これらは全て健康保険を使った場合の3割負担の金額です。
入院費用
入院費用は一泊で20,000円ぐらいです。目安として1日10,000円だと考えてください。1泊2日の入院であれば入院日数は二日間になりますので20,000円となります。
麻酔料金
- 全身麻酔→およそ30,000円程度
- 静脈内鎮静法→およそ約3,500円程度
局所麻酔の金額は抜歯術の金額に含まれていますのでかかりません。全身麻酔料も静脈内鎮静法も使用する薬剤や使用量によって金額が変わってきますので事前に担当医と相談しましょう。
トータル料金
よって埋伏している親知らずを4本一泊二日の入院で全身麻酔下で抜いた場合の金額は3,500×4+20,000+30,000=64,000円ぐらいで、その他の処置料や検査料が加わります。
トータルでは70,000~100,000円ぐらいになります。
保険適応
上記の金額は保険適応での金額になりますが、全ての患者さんが入院し全身麻酔下で抜歯を出来るわけではありません。例えば矯正治療のために親知らずを4本抜かなければいけない場合などは保険適応にはなりません。また全身麻酔を患者さんが望んでも歯科医師がその必要性が無いと判断した場合には全身麻酔の適応にはなりません。もしどうしても全身麻酔で受ける場合には自費診療になり、高額な治療費がかかります。
親知らずの手術 まとめ
最後にまとめとして、入院して親知らずを抜く際に口腔外科や一般歯科などどの病院を選べばよいのか、病院選びのポイントを説明します。まず第一に入院が必要となりますので入院施設のある病院を選ばなければいけません。
入院施設のある病院は
- 入院施設のある開業歯科医院
- 入院施設のある開業医院
- 大きな総合病院の口腔外科
- 大学病院の口腔外科
以上の4つが考えられます。静脈内鎮静法などで抜歯をする場合は①を全身麻酔下で抜歯をする場合には③、④をお勧めします。親知らずを全身麻酔で抜歯する場合のメリットは抜歯中の痛みを感じないという事と、数本の歯の抜歯を同時にすることが出来ることです。しかし全身麻酔はリスクも伴いますので、必ず主治医と麻酔科の担当医と十分に相談することをお勧めします。
1、入院施設のある開業歯科医院
➀は入院施設を持つ開業歯科医院は元々大学病院などの口腔外科の先生が開業した場合が多く抜歯の技術は信頼がおけますが、全身麻酔の経験はそんなに多くは無いと考えられます。またこのような歯科医院自体が少なく探すのが非常に困難です。
2、入院施設のある開業医院
②は個人の開業医の中で歯科がある場合ですが、口腔外科の技術があるかどうかは不明なため抜歯の技術に疑問が残ります。全身麻酔のケースは他の診療科でのケースもありますので比較的安心して麻酔を受けられると考えられます。
3&4、大きな総合病院の口腔外科と大学病院の口腔外科
③は④は技術的な問題や全身麻酔の問題点も少なく最も推奨される病院だと考えられます。しかしこれらの病院は非常に混んでいるため入院がいつになるか解らなかったり、重症患者さんなどがいると延期になったりすることがあります。
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