唾液検査ってそもそも何?
虫歯のできる原因は1つだけではありません。また、皆同じ原因で虫歯ができるわけでもありません。その人のもともとの歯の強さ、唾液の質や量、虫歯菌の数や種類、食事の取り方等様々な要因が重なることで虫歯のできやすさが変化します。その原因は何なのかを知る為に行う検査を唾液検査といい、唾液の量を測定したり、唾液に含まれる虫歯菌の数を調べます。この検査を行うことで
虫歯のできやすい原因を調べ、予防につなげる
ことができます。この唾液検査のことをサリバテストとも言います。
唾液検査でどんなことをやるの?
カリエスリスクを調べる
唾液検査を行えば、虫歯のできやすいカリエスリスクの高い人であれば、何が原因で虫歯のリスクが上がっているかを知り、カリエスリスクを軽減する為に検査結果を使用することができます。また、虫歯がない人でもこれからも虫歯をつくらないようにリスクの高かった部分の改善に使用することができます。
虫歯予防は「歯磨き」しかないように思っている方もいるかもしれませんが、検査結果を使用すれば、虫歯菌の種類によって使用する歯磨き剤を変えたり食事の指導を行うこともできます。
他の用途に使われる唾液検査
<ストレスやうつ病を調べる>
採取キッドの種類によっては、ストレスの度合いを数値化したり、それによりうつ病の診断に役立てられるようなものもあります。身体にかかるストレスによって分泌される「コルチゾール」というホルモンを唾液から測ることで調べます。
<タバコを吸っているかどうか>
生命保険に加入する際等、喫煙の有無を調べるために唾液検査を行うこともあります。唾液中に含まれているコチニン(ニコチンは体内でコチニンという物質に変わります)を検出することで調べます。およそ二、三週間も禁煙すれば反応しなくなると言われています。
唾液検査で何が分かる?
唾液の量
唾液が多ければ自浄作用や緩衝能、歯の再石灰化促進、抗菌作用等の唾液のもつ機能を十分に発揮することができます。
5分間パラフィンペレットをかみ、出てきた唾液を容器に吐き出して分泌された唾液の総量を4段階で測定します。
- class 0 =10ml以上
- class 1 = 6ml以上 10ml未満
- class 2 = 3.5ml以上 6ml未満
- class 3 = 3.5ml未満
唾液の緩衝能
唾液の機能の中に緩衝能というものがあります。歯の表面が脱灰していく酸性の状態を元の中性の状態に戻す作用のことを言います。緩衝の低いお口の中だと虫歯が発症しやすくなります。
採取した唾液を試験紙に落とし、色の変化で4段階に測定します。
- class 0 =即青(pH≧≧6.0)
- class 1 = 青(pH≧6.0)
- class 2 = 緑(4.5≦pH≦5.5)
- class 3 = 黄(pH≦4.0)
ミュータンス菌の量
虫歯を引き起こす原因菌で、歯の表面にプラークを生成します。また、糖類を基質にして歯を溶かす酸を産生します。
舌の上でストリップを数回回転させ、培養試験管に入れて2日間培養します。寒天培地にできた細菌数により4段階で評価します。
- class 0 =0
- class 1 = 10万
- class 2 = 50万
- class 3 = 100万
ラクトバチラス菌の量
虫歯を進行させる原因菌で、強い酸を産生して歯を溶かしていきます。
採取した唾液を寒天培地にかけて4日間培養します。寒天培地にできた細菌数により4段階で評価します。
- class 0 =1000
- class 1 = 1万
- class 2 = 10万
- class 3 = 100万
唾液検査が大切な理由
虫歯ができてしまう原因は「歯磨きがきちんとできていないから」だけではありません。虫歯ができてしまった方の中には「きちんと歯磨きをしていても虫歯ができてしまう」という方もいるのではないのでしょうか。そこで、
唾液検査で何が原因で虫歯になっているのか特定することができれば、その原因に対して対策を練ることができる
のです。何が原因かもわからないまま、闇雲に歯磨きだけを頑張っていたとしても良い結果は得られないかもしれません。 虫歯を全て治療したとしてもまた虫歯を再発させてしまう可能性が高いです。そうならないために、唾液検査をして自身が一番実行しやすい効率的な予防法をみつけていくことができます。
自分でできる唾液検査キットに色々な種類があるらしいのですが、何がいい?
唾液検査には虫歯リスク検査、歯周病検査のキットがあります。ただ、歯周病検査の唾液検査は唾液中の微量なヘモグロビンを検出することで歯周病が発症しているかどうかを調べる簡便なものです。きちんと歯周病の検査をするならば、歯周ポケットの数値や歯の動揺度測定したほうが良いので、あまり歯周病検査キットのみの検査はおすすめできません。歯周病検査に関してはプラークを採取する検査で歯周病原因菌の特定をおこなえるので、プラークを使用した検査と臨床での歯周検査をおすすめします。
唾液検査を歯科医院で行う手順を教えて
- パラフィンペレット(味のないガムのようなもの)をかみ、唾液の分泌を促す
- ビーカーに唾液をいれる
- 試験紙を袋から取り出す
- ピペットを使い唾液を試験紙におとす
- 5分間そのままにする
- 試験紙の色をカラーチャートと比較して緩衝能を調べる
- ラクトバチラス菌の数を調べるため、培養体に唾液をかけて、試験管で保存する
- ミュータンス菌の数を調べるため、歯垢や舌から採取する
- 採取した菌を培養器に入れて、ミュータンス菌は2日間、ラクトバチラス菌は4日間培養する
唾液検査は唾液を採取してから菌を培養するため2回来院が必要になります。この検査結果から虫歯のリスクや原因を探り、患者さん1人1人に合わせた最適な予防法を提供します。
唾液検査に付して行われる診査
唾液検査と合わせて
- 「DMF歯数」…過去の虫歯の状態や治療経験
- 「プラークスコア」…プラーク指数は口腔内の清掃状態を示す指標であるとともに、虫歯、歯周病の発症を予知するのにも有効な指数
- 「関連全身疾患」…幾つかの全身疾患や状態は直接、あるいは間接的に虫歯の発症に関わります。また、薬剤の長期服用は唾液の量や形成不全に影響することもあります。
- 「飲食回数」
- 「フッ素の使用状況」
の情報と合わせることで、より検査の結果は意味のあるものになります。
唾液検査の費用相場を教えて
3000〜4000円程度
で検査を行うことができます。歯科医院によっては、唾液検査とお口のクリーニングや歯科衛生士による歯磨き指導等をコースとして提供している場所もあります。そういった場所だとだいたい1万〜2万程度かかるところもあるようです。 ただ検査して結果に一喜一憂するのではなく次につなげていくためにも、きちんと指導を受けるようにしてください。
唾液検査について まとめ
最後に唾液検査について重要な点をおさらいしておきましょう。
- 唾液検査で虫歯の出来やすい原因を調べ、予防につなげることが出来る
- 歯周病を検査する際は、自分でできるキットは簡易的なものなので注意が必要
- 「プラークスコア」でプラークを採取して歯周病リスクを調べられる
- 歯科医院で唾液検査を行う際は、他の検査を併用することでより詳しく知れる
- 唾液検査の費用相場は3000円~4000円程度
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