はじめに
こんにちは。歯科医師の高木です。誰もが経験する親知らず。親知らずは抜歯するときにとても痛いとか、後ですごく腫れるとか、色々と噂を聞いたことがある方も多いかと思います。
実は、親知らずには生え方により、抜歯時の痛みや腫れ方にとても違いがあるのです。今回は、親知らずをタイプ別に分けて、抜歯の難易度や痛み・腫れの度合いについてご解説します。
親知らずって何?
親知らずとは、「智歯」「第3大臼歯」ともいい、一番最後に生えてくる歯です。他の永久歯はおおむね中学生までに生え揃いますが、親知らずは19歳以降〜大人と遅れて生えてくる事が多いです。昔の人はその頃すでに親が亡くなっている事も多かったので、「親知らず」といわれてきました。
本来なら上下左右4本生えてきますが、現代人は顎が小さくなってきているので、歯ぐきの中に埋まったまま生えてこなかったり、斜めに生えてきたりしている人がとても多くなっています。
親知らずのタイプと抜歯の難易度
親知らずは、生え方によって痛みや腫れ方が違ってきます。当然、抜歯の難易度も違ってきます。
1)まっすぐ生えている親知らず
他の永久歯と同じように、まっすぐ垂直に生えている親知らずは、比較的腫れにくいです。特に上の親知らずは、上あごの骨が柔らかいため、抜歯する際にもスッっと楽に抜けます。そのため、術後の痛みもほとんどありません。
親知らずを抜いたけど楽だったという方は、このタイプが多いです。
2)斜めに生えている親知らず
下の親知らずに多いのですが、斜めに生えて第2大臼歯を押している格好になっている親知らずがあります。最近は顎が小さいため、このような親知らずを持っている方がとても増えています。この場合、前の歯と親知らずの間に隙間があり、物がはさまり不潔になりやすく、とても腫れやすくなります。「智歯周囲炎」といって、「親知らずが腫れて痛い」と歯医者に駆け込んでくる方はこのタイプが多いです。
抜歯する際は、このままだとまっすぐ引っ張って抜く事ができませんので、歯ぐきを切開し、歯を縦に2分割してからパーツに分けて抜く必要があります。
骨を削ることもあるので、術後の痛みや腫れがとても大きくなります。「親知らずを抜くのが大変だった」といわれることが多いケースです。
斜めに生えている親知らずは要注意
3)歯ぐきに埋まっている親知らず
歯ぐきに完全に埋まっている親知らずは、症状が無ければ必ずしも抜く必要はありません。特に、まっすぐ垂直に埋まっている親知らずはさほど心配ありませんので、そのまま様子をみていくだけで良いでしょう。しかし、まれに完全に横に向いて歯ぐきの中に埋まっているケースがあり、しかも隣の歯を押して悪影響を及ぼしているものがあります。
この場合は、斜めに生えている親知らずと同様、歯ぐきを開いて分割してから抜かなければなりません。難易度が高く、腫れや痛みもとても強くなります。大学病院の口腔外科などに紹介されるケースが多いです。
親知らずを悪化させないために
いかがでしたか?親知らずの抜歯が痛くて腫れたといわれる方は、「下あごの斜めに生えている親知らず」であることがほとんどです。まっすぐ生えている親知らずや、上の親知らずの抜歯は、さほど難しくなく、痛みも少なく抜けます。
ご自分の親知らずがどのタイプなのか、一度鏡でチェックしたり、歯医者さんでレントゲンを撮ってもらうとよいでしょう。どの親知らずにも共通して言えることですが、虫歯や腫れを防ぐためには注意深く歯磨きをして清潔にしていることが大切です。
悪化させないためにも、少しでも違和感があればすぐに歯科医院で診察を受けてくださいね。