歯の神経を抜く。誰でも一度はこのセリフを耳にしたことがあると思います。しかし、この歯の神経を抜くというセリフ、実は歯の死刑宣告だったのです。アナタの知らない歯の神経について本日はわかりやすく解説致します。
歯の神経は歯髄(しずい)と呼ばれ、次のような働きがある
1.痛みを感じ、異常を知らせる
歯に加わる様々な刺激を感知し、痛みとして虫歯などの異常を脳に知らせます。
2.細菌や刺激などに対する防御機能
歯髄の中に存在する免疫細胞が細菌に抵抗したり、炎症の刺激に対して内側から象牙質(歯の内側にある層)の層を形成して歯髄を細菌や刺激から守ります。
3.歯へ栄養を供給する
歯髄の中に入っている毛細血管が歯に栄養を行き渡らせて、歯に適度な弾力性をあたえて衝撃で割れにくいようになっています。
歯の神経を抜くと、どんなマイナスなことがあるのか?
神経を抜いてしまうと次のようなデメリットがあります。
1.歯の寿命が短くなる
神経を抜くことで、血管も取り去られてしまいますので、歯に栄養が行かなくなって枯れ木のようにもろくなり、衝撃で欠けたり割れたりしやすくなります。結果的に歯の寿命は短くなります。
2.歯の色が変色する
歯に栄養が行かなくなることにより、象牙質内のタンパク質が変質し、変色してきます。一般的にグレーや茶色っぽくなってきます。
3.歯の異常を感知できなくなる
異常を知らせるセンサーがなくなりますので、歯にばい菌が入ってきても感知できません。そのため、感染が進み、根の周囲にまで感染が及んで痛んだり、歯を抜かなければならなくなることもあります。
4.治療期間、費用が余計にかかる
神経の治療になると何度も歯科医院に通わなければならなくなります。なかなか治らない場合は数ヶ月に及ぶこともあります。その分だけ治療費もかかってしまいます。
歯の神経を抜かないといけない時はどんな状態の時か?
いくら神経が大事とは言え、神経を取らなければならない場合もあります。それは次のような場合です。
1.虫歯が進行して神経に感染を起こしてしまった場合
この場合はすでに激痛がでています。
2.神経が感染を起こし、死んでしまっている場合
虫歯が神経に達して激痛がするのを治療せずに放置した後は痛みがなくなってきます。これは治ったのではなく神経が死んだことによります。神経は腐っていますので取り除かなければなりません。
3.歯が折れたり、ぶつけて脱臼した場合
歯が折れて神経が露出した場合は神経が感染を起こしてしまいます。また、ぶつけたときに歯がグラグラしたり抜けてしまった場合においては、神経が根元から断ち切られてしまっている状態になっており、神経は取らなければなりません。
4.歯に亀裂が入って神経まで及んでいる場合
強い力がかかったりすることで歯にヒビが入って神経にまで及んでいる場合には感染している神経を取る、またはヒビが歯全体にわたっている場合には抜歯をしなければならないこともあります。
歯の神経を抜く治療の手順
では、実際に歯を抜く際の手順にはどのような段階があるのでしょうか詳しく解説致します。
1.麻酔
歯茎に局所麻酔をします。
2.虫歯を削って歯の上から穴を開ける
虫歯ある場合は虫歯をしっかりと取り除き、機械で削りながら神経の入っている髄腔まで到達させます。
3.根の管の場所を確認する
歯の種類によって根の本数が違います。(1〜4本)それぞれの根の管の入り口を見つけ出します。
4.神経を取り除く
細い針のような器具を使って神経を取り除いていきます。
5.根の管を器具で拡大する
根の管は実は複雑な形をしています。単純な管状ではないことも多く、神経や汚染された部分を取り残さないようにしっかりと拡大し、その後薬を入れるスペースを作ります。
6.薬を入れて仮の詰め物をする
神経を取り、根の管の形を整えたら消毒をし、薬を詰め仮の蓋をする。
7.症状が取れるまで、内部の洗浄、薬の交換を繰り返す
通常、約1週間ごとの消毒、薬の交換を続け、症状の落ち着きを待ちます。
8.最終的な固形の薬を詰める
症状が取れたら固形の最終的な薬を詰め、その後は詰め物やかぶせ物の処置に入ります。
歯の神経を抜く最新の治療法
神経の治療は歯科の治療の中でも非常に難しい治療の一つです。その理由として、根の形態の複雑さ、また歯茎の下に埋もれている場所であるため、治療を行う術者は、レントゲンの情報を元に手の感覚を頼りにしながら手探りで行わなければならないためです。しかし、近年、最新の機械を使うことにより、これまでの手探りの治療からうってかわって、なるべく根の状態を確認しながらの治療が可能となってきました。
最新治療1:CTを用いた精密な診断
従来のレントゲンだけでは2次元的なイメージしか得られないため、歯根の形が正確に把握できません。CT撮影を行うことにより3次元的に根の状態を確認することができ、病変がある場所も確実に捉えることができるようになりました。
最新治療2:マイクロスコープを用いた治療
マイクロスコープとは手術顕微鏡のことです。これにより、見たい部分を拡大して(3−20倍)見ることができるようになり、また、奥の暗い部分を明るく照らして深い部分まではっきりと見ながらの治療が可能となりました。この技術により、神経の治療の治療成績が格段にアップしました。アメリカでは根の治療はマイクロスコープを使った治療が義務付けられていますが、日本ではまだ普及率は低いのが現状です。また、マイクロスコープを使った治療は保険適用でないことが多いようです。
最新治療3:ミクロン単位で作業可能な器具の使用
マイクロスコープを使った根の治療を行うためには、従来の器具よりもより細い、ミクロン単位での小さな器具を用いる必要があります。これにより、より精密で正確な治療が可能となります。また、拡大鏡などを使用することで治療の制度をより高めることが可能です。
歯の神経を抜いた後の歯を少しでも長持ちさせるには
神経を抜いた歯は弾力性に乏しく、割れてしまいやすいため、過剰な力がかかるのを避ける必要があります。また、再感染を起こさないように注意を払わなければなりません。少しでも長持ちさせるには次のことを意識するとよいでしょう。
1.硬いものを噛まない
神経が入っている歯と違って弱いですから、意識して硬いものを神経のない歯でかまないようにしましょう。
2.マウスピースの使用
夜間時の歯ぎしりは歯に非常に強い力がかかります。これが原因で歯が割れるケースも多いため、就寝時にマウスピースをつけることをお勧めします。また、スポーツで歯をくいしばることのある人も、スポーツ時のマウスピースを使うとよいでしょう。マウスピースは全体の歯を守る為にも非常に有効です。
3.歯科医院での定期的な検診・クリーニング
神経がない歯は、再度虫歯になったり、ばい菌が感染しても痛みを出さないため、感染が進みやすいですから、歯科医院での定期的な検診、また、クリーニングを受けて虫歯予防に注意を払う必要があります。
歯と神経 まとめ
歯の神経の役割
- 異常を知らせるセンサーの役割
- 細菌や刺激などに対する防御機能
- 歯へ栄養を供給する
歯の神経を抜くデメリット
- 歯の寿命が短くなる
- 歯の色が変色する
- 歯の異常を感知できなくなる
- 治療期間、費用が余計にかかる
歯の神経を抜かないといけない時
- 虫歯が進行して神経に感染を起こしてしまった場合
- 神経が感染を起こし、死んでしまっている場合
- 歯が折れたり、ぶつけて脱臼した場合
- 歯に亀裂が入って神経まで及んでいる場合
歯の神経を抜く手順
- 麻酔
- 虫歯を削って歯の上から穴を開ける
- 根の管の場所を確認する
- 神経を取り除く
- 根の管を器具で拡大する
- 薬を入れて仮の詰め物をする
- 症状が取れるまで、内部の洗浄、薬の交換を繰り返す
- 最終的な固形の薬を詰める
神経を抜く最新の治療法
- CTを用いた精密な診断
- マイクロスコープを用いた治療
- ミクロン単位で作業できる器具の使用
神経を抜いた歯を長持ちさせる方法
- 硬いものを噛まない
- マウスピースの使用
- 歯科医院での定期的な検診・クリーニング
歯と神経について以上になります。ここまで書いて思いましたが、結局は歯の神経を処置するまで歯の病気や虫歯を放置してはダメなんです。痛くなる前に歯医者へ!とかそういうことは当然なんですが、そもそも歯が痛くなるってこと自体が異常なことだってもっと皆さんは考えなくてはいけないです。
歯を守る考え、今歯科は予防の考えが主流ですよ!
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