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実際のところ、キシリトールは効くのか効かないのか?
逆に身体に害となることはないのか?そんな疑問に答えます。
メディアに踊らされない為に、真実を見つめましょう。
そもそも、キシリトールとは何か
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◆キシリトールって??
ベリー類やカリフラワーにも含まれ、人間の肝臓でも生成されている天然の成分。シラカバやトウモロコシの芯などから取れる、キシランヘミセルロースという成分からつくられます。食品添加物として認可される前から、点滴用の輸液などにも入っていた成分です。
◆なぜキシリトールは歯に良いとされているのか?
キシリトールには、2つの作用があるとされています。
①虫歯の原因にならない。
虫歯菌が糖を代謝して酸に変え、その酸がエナメル質を溶かすことで歯に穴があき、虫歯ができます。キシリトールは菌に代謝されないため、酸がつくられません。
②虫歯の発生や進行を防ぐ。
キシリトールを長期に摂取し続けることで、
- 歯垢中のカルシウムレベルを上げ、歯の再石灰化(虫歯になりかけのところを修復する)を促進する
- カルシウムと結合して歯を硬くする
- ミュータンス菌の体力を消耗させ、活動を抑制する。プラークがついても、サラサラの落としやすいプラークで虫歯の原因になりにくい。
上記の二点のうち、最近の論争の焦点となっているのは②の虫歯の発生や進行を防ぐの部分です。
予防効果については、1980年代からさまざまな研究と発見が行われてきました。
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歯科先進国フィンランドでのキシリトール研究結果(1980年代)
よく引き合いに出されるのが、フィンランド・トゥルク大学とユリビエスカ保健所の出した研究結果です。研究によると、1日10グラムのキシリトールを2年間食べ続けると、歯垢中のミュータンス菌数が減少し、食べるのをやめた後もその効果は4年続くとのこと。また、11~13歳の児童を対象にした研究で、54~61%の齲蝕(むし歯のこと)予防効果がみられたとされています。
日本の幼稚園で行われたキシリトールのこんな実験も
園児たちに100%キシリトールのガムを毎日5粒、20か月噛んでもらうと、虫歯増加数が有意に減少したと報告されています。また、歯垢の減少も見られたとのことです。
一人平均のむし歯増加歯数
1人平均の歯垢増加量
厚生労働省や歯科医師会の「お墨付き」も
キシリトールが虫歯の原因とならないだけでなく、積極的な虫歯予防効果が期待できるという情報により、厚生労働省や歯科医師会も周知と推薦に乗り出しました。
たとえば、
モンデリーズ・ジャパン「リカルデント」
ロッテ「キシリトール+2」
江崎グリコ「ポスカム」
といったキシリトール入りのガムは、歯の再石灰化効果を認められたトクホ(特定保健用食品)ガムとして厚生労働省の認定を受け、
「虫歯の原因になりにくい」「歯を健康で丈夫に保つ」などの表示を許されています。
また、このうちロッテのキシリトールガムは、歯科医師会の公式な推薦商品となっています。
では、キシリトールは効果的だというのが本当のところなのでしょうか。今度はキシリトールが効果がないという研究について、見ていきましょう。
2015年3月 「キシリトールの予防効果証明できない」
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コクラン共同計画によるこの発表から数か月たちますが、ロッテなどの企業や歯科医師会からは、いまだ公式なコメントは出されていないようです。キシリトール製品を売りたい人間が検査を捏造したのかもしれませんし、ただ研究の制度が低かっただけで本当にキシリトールは効果的ということもあるかもしれません。
真相は未だ闇の中です。
現時点でキシリトールについて言えること、まとめ
キシリトールが虫歯の原因とならない(酸を産生しない)ことは、確かに証明されています。それに、キシリトールガムを噛むことによって、天然の抗菌洗浄液である唾液の分泌が促進され、虫歯の予防に貢献することも、れっきとした事実。
とはいえ、それ以上の部分、つまり再石灰化やミュータンス菌の活動抑制などについては、以前考えられていたような効果は現時点では証明できないということになります。
キシリトールは彗星のごとくやってきて、噛んでいれば虫歯を引き起こさないというような印象を多くの人に与えました。しかし、キシリトールにも落とし穴はあります。
何故か知られていない、キシリトールガムの落とし穴
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◆キシリトールの身体への影響は?
①キシリトールは下痢を引き起こすことも
キシリトールには、お腹がゆるくなるという副作用が指摘されています。これは、糖アルコールの弱い下剤効果によるもの。個人の体質によって程度は異なりますが、長期に下痢を繰り返すことで、消化機能や免疫に影響することが考えられるため、体質の合わない人は注意が必要です。
②遺伝子組み換え原料
広告などでは、キシリトールはシラカバから採れるというイメージを広めていますが、実際には遺伝子組み換えを含むトウモロコシやジャガイモも使用されています。遺伝子組み換え食品の摂取により、長期的にみて子孫が免疫や生殖の問題を抱える可能性があるといわれています。普段から遺伝子組み換え食品に気を付けている人にとっては、キシリトールの頻繁な摂取は、隠れたリスクといえるかもしれません。
◆キシリトール 食べるべきか食べざるべきか、結局どうなの?
①虫歯の原因とならない甘味料としての価値は十分
虫歯菌はキシリトールからは酸を作れないということは証明されています。そのため、ガムや飴を選ぶ際、ほかの糖類ではなくキシリトールの入っているものを選ぶのは良いことです。
ただ、食後や寝る前に予防効果を期待してキシリトールを摂取することに関しては、現時点では証明できないというのが現状です。とはいえ、効果が全くないと証明されているわけでもありません。正確な効果のほどは、今後の研究結果が待たれます。
今のところ予防をおもな目的としてキシリトールを摂取することはできないとしても、ガムやタブレットの咀嚼や味覚の刺激によって唾液がたくさん出ることによっても虫歯予防効果があるため、マイナス点に関して自己責任で比較考量したうえで、積極的に取り入れることもできるでしょう。
②キシリトールだけに頼るのはNG
キシリトールに虫歯予防効果が実際どの程度あるかにかかわりなく、キシリトールを食べたからといって自動的に虫歯にならないということは決してありません。
虫歯予防の一環としてキシリトールを取り入れる場合は、きちんとブラッシングやフロスをする、定期的に歯科検診とクリーニングを受ける、といった、ほかの大切な習慣が確立していることが大前提。キシリトールは、もし今後効果があると証明されたとしても、虫歯予防の一環にすぎず、補助的な役割を果たすものです。
③買う前に表示をよく見よう
もうひとつ気を付けたいのは、ガムに入っているキシリトールの含有量。上述したように、ほんの少しでもキシリトールが入っていれば「キシリトール配合」と銘打つことが可能です。企業側からすれば、原価の高いキシリトールはできるだけ少なく配合したいところ。そこで、少しだけキシリトールが入っているものの、それ以上にその他の糖質が入っているため、結局虫歯の原因になってしまうという事態も起こりかねません。
キシリトール入りのガムを買う時は、後ろの成分表示に注目してみましょう。見るべきところは二つ。
ひとつは「糖質」がゼロであるかどうか。ここがゼロでないと、虫歯の原因になる糖が含まれているため、常時食べるのは逆効果です。
もうひとつは、キシリトールの含有量。たとえ同じ会社が出しているガムでも、キシリトール100%のものから、50%のもの、10%のものまでさまざまあります。多少なりともキシリトールの虫歯予防効果に期待して食べるのであれば、なるべく100%に近いもの、最低でも50%以上のものを食べることが勧められています。
表示にある「キシリトール」の量を「炭水化物」の量で割り、100をかけると含有量が出てきます。
- 糖類0g
- キシリトール÷炭水化物×100
一般に、キシリトールの含有量が100%のガムは、歯科医院で購入することが可能です。市販のものは30~70%のものがほとんどですので、計算したうえで購入してください。
今わかっているキシリトールに関する真実 まとめ
- キシリトールが虫歯の原因とならないことは確認されている。
- キシリトールが虫歯の発生や進行を防ぐことは、これまでさまざまな研究が証明してきており、歯科医師会や厚生労働省もこれを認めています。
- 近年新たな研究結果によってキシリトールの虫歯予防効果の根拠に疑問符がつけられる事態となり、現時点では効果が証明できないと言わざるを得ません。
- キシリトールの摂取には、消化器への影響や遺伝子組み換え原料に関するリスクなどのマイナス面もありますが、虫歯の原因にならないことや唾液の分泌を促すことなどのメリットもあり、比較考量したうえで取り入れるかどうか決めると良いでしょう。
- キシリトールを虫歯予防の一環として取り入れる場合は、歯磨きや歯科検診をきちんと行ない、糖質とキシリトールの含有量に注意して選びましょう。
メディアや企業の情報に躍らされること無く、今ある事実をしっかりと自分自身で確かめ真実に迫ることが大切です。
どくらぼでは今後もキシリトールの動向を追っていきます。
最後まで目を通して頂き、誠にありがとうございました。定期的に歯科業界の真実や健康に関することをフェイス・ブックを中心にお届けいたします。今後共どくらぼをよろしくお願い致します。
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