親知らずの抜歯後に痛みが強くなる原因
抜歯は麻酔をして行います。麻酔の方法は抜歯予定の歯の周囲だけに効かせる浸潤麻酔と顎の神経の根元に麻酔をする伝達麻酔の2つの方法があります。麻酔が効いている間は痛みを感じませんから、痛みが出るのはむしろ抜歯後なのです。そこで抜歯後に痛みが強くなる原因として考えられるケースについて説明していきます。
麻酔が切れてきた
抜歯中は麻酔が効いているため、当然痛みは感じません。時間と共に麻酔の効果が薄れていき浸潤麻酔の場合でだいたい2時間くらいで切れるようです。この頃から少しずつ痛みを感じるようになります。抜歯は人工的に傷を作った状態にありますので麻酔が切れると痛みが出てくるのは避けられませんね。
切開した場合
親知らずが横を向いていたり歯茎や骨に埋まって生えている場合には歯茎を切開して抜歯することがあります。こういったケースでは歯茎を切って骨から剥離(剥がす)するためその部分の組織にダメージが加わり痛みが出やすくなります。
骨を削った場合
親知らずの根が曲がっていたり複数ある場合には歯槽骨という顎の骨に引っかかってなかなか抜けないことがあります。その場合引っ掛かっている骨を削って歯を抜く必要があるため痛みが起こりやすくなります。また、腫れや痛みを何度も繰り返していると歯と骨が癒着してくっついてしまうことがあります。年齢が高くなるにつれ骨が硬くなるため癒着しているケースもあります。そういう場合歯と骨ががっちりくっついていて抜くのが困難なため周囲の骨を削って抜く必要があります。骨を削ることで組織を傷つけることになり痛みが起こりやすくなります。
ドライソケット
抜歯後の傷の治りが悪く歯槽骨という骨が剥き出しの状態になって強い痛みが続く状態です。抜歯後の穴は血餅という血液の塊で塞がれ保護されるはずですが、何らかの原因で血餅が取れてしまい生傷が露出してあらゆる刺激が痛みを誘発します。根本的な治療法はなく自然治癒を待つしかありません。
抜歯後の飲酒や運動、入浴など
抜歯をした後は血行が良くなるようなことは避けるよう注意を促します。血行が良くなると痛みが出やすく出血が起こったりなかなか止まらなくなるのがその理由です。大丈夫!と油断して注意を守らなければ痛みが酷くなることがあります。
親知らず抜歯後はどんな時に痛む?いつまで続く?
さて、親知らずの痛みに悩みを抱えている患者さんが最も知りたいであろうことの一つ、どんなときに痛むのか、いつまで続くのか、解説いたします。
親知らず抜歯後はどんな時に痛むのか
抜歯の後の痛みは通常1~3日くらいがピークと言われています。当日はそれほど痛みを感じなかったのに朝起きたら腫れてずんずんと痛みがあった、という場合も例外ではありません。これは体の免疫機能によるもので、体が傷を治すために活発に働いている証拠だといえます。このような痛みはある程度想定内ですので抗生剤や鎮痛剤を飲みながら徐々に回復するのを待つことになります。もちろん日常生活の中で痛みを感じることはあるでしょう。例えば、
- 傷に触った
食事中などに誤って抜歯した側で噛んでしまい傷に食べ物が当たったり、歯ブラシや舌で触ると痛みを感じることがあります。
- 飲酒や運動、入浴など
血行が良くなると痛みが起こりやすくなります。
- 薬を飲み忘れた
処方された抗生剤は必ず飲みきるようにしましょう。
- うがいしたら血の塊が出てきた
うがいなどで傷を塞いでいた血餅という血の塊が出てくることがあります。血餅が取れてしまうと生傷が剥き出しになり場合によっては骨が露出してドライソケットという状態になり強い痛みを感じるようになります。
- タバコを吸っている
タバコは傷の治りを阻害します。また吸うという動作で血餅が取れてドライソケットを誘発することがあります。
親知らずの抜歯後の痛みはいつまでつづく?
抜歯後の痛みが治まる期間は個人差があります。抜歯の状況や体調にもよりますが、大体3~4日、長くても1週間程度かけて少しずつ治まっていくのが一般的です。ただ切開したり癒着していた骨を削るなどの処置をした場合にはもう少し長くかかることもあります。また、糖尿病や腎臓病などの病気がある人や内科的な薬の影響によって傷の治りに時間がかかる人もいます。タバコを吸っている人は傷の治りが悪いともいわれています。切開後に縫合した場合には、縫い合わせた部分が突っ張ってチクチク痛むこともあるようですが、抜糸すると楽になります。
ただし、数日後から痛みがどんどん酷くなるドライソケットという状態になることがあります。これは抜歯後の歯槽骨が露出して炎症を起こした状態で、強い痛みが2週間から1ヶ月くらい続くことがあります。冷たいものや熱いもの、風などの刺激にも敏感になるため日常生活に支障を来すほどです。ドライソケットの強い痛みは鎮痛剤の効果も長続きしないことが多いようです。基本的には自然治癒しかありませんので、少しでも早く治るよう栄養や休養を取るなどしてやり過ごすことになります。
強い痛みが抜歯後2週間以上続いたら、ドライソケットかも!?
関連リンク:絶体絶命!親知らず抜歯後に迫り来るドライソケットの罠
親知らず抜歯後の痛みを抑える方法
抜歯後の痛みは憂鬱なものです。学校や仕事に行かなくてはいけないのにずんずんと痛む…。なんとかしてこの痛みから少しでも解放されたいですよね。痛みを抑えるにはさまざまな方法がありますが、効果が期待できるものを挙げてみましょう。ただ状態次第では向かない方法もありますので、どうしても痛みが強くて我慢できない時は歯科医院を受診して診てもらうことをオススメします。
鎮痛剤を飲む
親知らずの抜歯をしてまず最初に痛みがやってくるのは麻酔が切れてからです。麻酔が効いている間は何も感じませんでしたが、徐々に疼くようになり2時間もするとほぼ麻酔の効果が消えて痛みが露わになってきます。そこでおすすめなのは麻酔が切れる少し前に鎮痛剤を飲んでおくことです。鎮痛剤は、頓服薬(とんぷくやく)といって痛みがあるときだけ服用するよう指示があります。よく処方されるものとしてはロキソニンやカロナール、少し効き目の強いものでボルタレンなどがあります。ロキソニンやボルタレンには消炎効果もありますのでよく効きます。処方されたものを飲み切ってしまった時は、市販薬でもロキソニンSなどが販売されています。ロキソニンやボルタレンは1錠で効果がありますが効き目が弱い時はあと1錠までは追加して飲んでも構いません。服用の際には水やぬるま湯を多めに飲むようにしてくださいね。続けて飲むときは4~5時間は間を開けて飲むようにしましょう。
鎮痛剤は、ますいが切れる前に飲むべし!
抗生剤を飲む
通常抜歯の際には抗生剤が処方されます。炎症が長く続いていて抜歯後の経過がよくないことが予想されるケースなどは抜歯前日から飲むよう指示されることもあります(前投薬)。抗生剤は抜歯後の感染を防ぎ腫れや痛みを抑える効果があります。メイアクトやフロモックス、クラリスなどいろいろな種類があり歯科医院によっても扱っている薬が異なります。また炎症の度合いや抜歯の状況によって担当の歯科医師の判断でどの薬を処方するかが決められます。場合によってはロキソニンなどを鎮痛剤としてではなく消炎剤として抗生剤と一緒に内服薬として処方することもあります。頓服薬が痛みのあるときだけ服用するのに対して内服薬は朝・昼・夜の毎食後など定期的に服用するよう指示がありますので忘れずに飲むようにしてくださいね。鎮痛剤があるからと油断する人がいますが、抗生剤が効かなければ痛みがなかなか治まらないこともあります。
止血処置を確実にする
抜歯後には丸めたガーゼを30分は噛んでおくよう指示されます。これは圧迫止血といって傷を圧迫することで止血する方法です。たまにガーゼを噛んだり緩めたりする人がいますが効果が弱まりますのでしっかり噛んだままにしておきましょう。止血すると同時に抜歯後の穴に血餅という血の塊でできてかさぶたのような役目をしてくれます。この血餅が傷口を保護してくれるため痛みを和らげる効果があります。出血が治まらなければ血餅ができにくくなるため痛みが出やすくなります。
冷やす
抜歯などの外科処置をした後は冷やすと楽になります。特に抜歯当日は冷やすと末梢血管が収縮して痛みが軽くなり出血も止まりやすくなります。この時あまりにキンキンに冷やすのはNGですよ。市販の熱さまシートや冷えピタなどのシート状の冷却剤や濡れタオル程度がよいでしょう。ただし冷やすのは丸1日程度でそれ以上長い時間冷やし続けてはいけません。
血行が良くなることを控える
抜歯後しばらくは飲酒や入浴、運動を控えておきます。特に親知らずの抜歯は傷が大きいこともあり痛みが長く続きやすいものです。飲酒や長風呂で血行が良くなったり運動による振動も痛みを増長します。アルコールと運動は2~3日は控えて、お風呂もシャワー程度にしておくようにしましょう。
うがいをしない
血の味がするので気持ちが悪いものですが、その日はうがいをできるだけ避けるようにしましょう。うがいを何度もすると出血が止まりにくくなりますし、抜歯後の穴に溜まっていた血液が取れてしまいます。穴に溜まった血液は血餅いう血の塊になり傷を保護する働きを持っています。うがいによって血餅が抜け落ちてしまうとぽっかりと穴が開いたままになってその中の歯槽骨という骨が露出した状態になってしまいます。そうすると痛みがなかなか治まらないばかりか細菌に感染しやすく、また術後数日たってから非常に強い痛みが続くドライソケットという状態になりかねません。
頭を低くしない
横になるとき頭が低くなると血液が頭の方に上がっていくため、抜歯後の傷から痛み、出血や腫れが出やすくなります。枕をいつもより少し高めにするなどして血液ができるだけ頭の方から下へ下がっていくような体勢をとるようにしましょう。
咀嚼は控えめに
抜歯直後からいきなり硬いものや歯応えのあるものをバリバリ食べると刺激が伝わるだけでなく、食べ物が傷に当たってしまうことがあります。できれば当日は栄養価の高いゼリーや消化吸収の良いお粥やうどんなどがオススメです。栄養のある物をとることで体力をつけ傷の治りを促してくれます。
ストローは使わない
ストローで飲むと傷に触れないのでよさそうに思えますが実は思わぬ事態が起こることがあります。ストローを吸うと口の中が喉の奥へと吸い込まれて行くためマイナスの圧力がかかります。すると飲み物だけでなく傷の中にできていた血餅も吸い取られてしまうことがあるのです。血餅は傷を保護する役目をしているため取れてしまうと生傷が露出して骨が剥き出しになってしまうので痛みが出ることがあります。中にはドライソケットになって強い痛みが続くことにもなりかねませんので気を付けましょう。
タバコを控える
タバコは末梢血管を収縮する作用があります。そのため抜歯後の傷の治りを妨げてしまうといわれています。できるだけ早い回復が痛みを抑える最良の方法ですのでタバコは控えるようにしましょう。
温める
抜歯してしばらくは冷やす方がいいのですが、翌日あたりからは冷やさないようにするのが大切です。冷やすという行為は血管を収縮させるため血液の流れが悪くなり栄養も届きにくくなります。その状態を長く続けると逆に治りが悪くなりますので今度は血行を促進するために温める方がよいのです。あまり暖め過ぎるのもよくありませんから蒸しタオル程度にしておきましょうね。
親知らず抜歯後の痛みに関してやってはイケないことは?
抜歯後には気を付けなければいけないことについて歯科医師や歯科衛生士から注意をうけます。意外と聞き流してしまうものですが、実はこの中にとても大切なことが含まれています。あらためて抜歯後に注意しなければいけない、あるいは、してはいけないことについて詳しく説明します。
飲酒
アルコールは血液の循環が促進される行為の代表格です。血行が良くなると出血が止まりにくくなりだらだらと続くことになります。血液はたんぱく質からできているため細菌の格好の餌になり口の中の細菌が増えて炎症や細菌感染が起こりやすくなります。また処方された薬の吸収が早くなり効きにくくなります。そのため痛みがなかなか取れませんし、いったん感染してしまうと治りも悪くなるため治るのに長く時間がかかってしまう恐れがあります。
運動
運動は血行が良くなり出血が起こりやすくなります。また、切開や抜歯の際に骨を削ったケースでは周囲の組織にダメージを与えているまた運動による振動が刺激になることもありますので、抜歯後最低でも2~3日は運動を控えた方がいいでしょう。
薬を中断する
抜歯後に処方された抗生剤は、感染防止や腫れ、痛みを抑えるために必要な日数と量で出されています。もう痛くないから大丈夫だろうと勝手に判断して飲むのをやめてしまう人や飲んだり飲まなかったりする人がいますが、これは絶対にやめましょう。抗生剤は血液の中の濃度を保つことでしっかり効果を持続させるために服用する時間が決まっていてそれを過ぎると効果が半減してしまいます。正しい飲み方をしなければ数日たってから痛みが酷くなったり化膿することも考えられます。
うがいをする
抜歯当日のうがいは痛みが起こる原因となります。抜歯後は傷の中に血の塊ができてこれがかさぶたの役割をして傷を保護しています。うがいを何度もしたり強くするとこの塊が取れてしまい穴が剥き出しになります。そうすると歯があった部分の歯槽骨が露出してしまうためずきずきする痛みや冷たいものや風などでも痛みを感じるようになります。またうがいによって出血も止まりにくくなるため痛みがなかなか治まりにくくなります。
傷を刺激する
口の中に傷があるとどうしても気になって舌で触ってしまいがちです。中には指でいじる人もいますがこれは絶対にNGです。触ることで刺激になり再び出血したり、細菌が中に入り込んで炎症を起こしたり化膿することもあります。また歯ブラシも傷に触らないようにするのが大切です。早く治るように口の中を清潔にしなければと一生懸命歯ブラシをする人がいますが、歯ブラシが傷に当たって傷の上に傷を作るようなものです。ですから歯ブラシをする時は傷に触れないよう優しく磨くようにしましょう。アルコールの入った刺激の強い歯磨き剤やマウスウォッシュも2~3日は控えた方がいいですよ。
抜歯した側で噛む
食事をする際に抜歯した側で噛むのはやめましょう。食べ物が傷に当たるだけでなく不潔にもなりやすいです。また硬いものは傷に当たって刺激することがありますのでせめて当日は避けてください。消化が良く栄養価の高いものを抜歯した側の反対で噛むようにします。また、抜歯当日は麻酔が切れてから食事をするようにしてください。唇や舌まで痺れているため誤って噛んでしまったり、傷に食べ物が当たっても感覚がないため知らず知らずのうちに新たな傷を作っていたり出血を起こしてしまうことがあります。
吸う動作
抜歯後は傷が気になり血の味がするのでつい傷を吸ってしまう人もいます。また、食事がしづらくてストローで飲む人もいますが、こういった吸うという動作は避けましょう。吸うことで口の中が陰圧になり、傷の中にできた血餅を吸い出してしまうことがあります。そうすると傷が露出して痛みが出たり感染しやすくなり、時には強い痛みを伴うドライソケットになることがあります。
親知らず抜歯後の痛みが1週間経ってもとれない原因はドライソケット?
そもそもドライソケットとは
ドライソケットとは、抜歯後の傷の治りが悪く長期間強い痛みが続く状態をいいます。特に下の親知らずの抜歯後に起こりやすくその発生率は2~4%といわれています。根本的な治療法や劇的な治療法はなく、基本的には自然治癒を待つしかありません。ドライソケットになると痛みが強いばかりか、露出した骨から感染して骨炎や骨髄炎を起こすことがあります。そうなると治るのにとても時間がかかり場合によっては入院を余儀なくされることがあります。
ドライソケットの症状
ドライソケットの症状として目で見た時に抜歯後の穴が白っぽくなっています。抜歯から数日はそれほど痛みもなくどちらかというと治まっていくかに思えていたのに2~3日してからどんどん痛みが酷くなってきます。痛みは非常に強く治まる気配がありません。鎮痛剤を服用しても1~2時間は効果があってもすぐまた痛みがぶり返してきます。そんな痛みが2週間以上続くこともあり、中には治るまで1ヶ月くらいかかる人もいます。ずきずきと何もしていないのに痛むだけでなく、冷たいものや熱いもの、口を開けた時や話をする時の風の流れ、舌で触れるなどちょっとした刺激でも強い痛みを感じます。
ドライソケットを防ぐには
ドライソケットは、抜歯後に歯があったはずの傷から歯槽骨が露出しているために起こると考えられています。抜歯をすると必然的に出血しますが、血液は抜歯後の穴の中に溜まって塊になり傷を保護する役目を持っています。ところが何らかの原因でこの血の塊が取れてしまうと傷が剥き出しになるためドライソケットになるとされています。ですから血の塊が取れるような行為を避けることが大切です。それには「うがいをしない」「ものを吸う動作をしない」「血行がよくなることは避ける」「舌や指でいじらない」「タバコは控える」などを心掛けましょう。また傷の炎症もドライソケットの原因ですので、処方された抗生剤は必ず飲み切るようにします。それでも痛みが強くなってくると感じたら早めに歯医者を受診することが大切です。
関連リンク:親知らずの痛みに関する情報盛りだくさんの記事
ここで全て解決できる!!親知らずが痛い時の対象法 完全まとめ