徹底検証! 親知らずは歯並びに悪影響を与えるか!?
歯の矯正を検討していると、親知らずの抜歯をしなくてはいけないと言われることがあります。たかが歯並びを直すためだけに、歯を抜く必要なんてあるのでしょうか?
親知らずが歯並びに影響を与えるのか。「与える」と言う歯科医師と「与えない」と言う歯科医師、意見が真っ二つに分かれています。
そもそも歯は常に動いている?
親知らずが歯並びに与える影響について説明をする前に、皆さんに一つ覚えておいて頂きたいことがあります。それは歯は常に動いているという事実です。
歯の根っこは、歯槽骨と呼ばれる骨に囲まれていますが、その骨と歯根の周りに歯根膜というクッションのような組織があります。この組織を介して食べ物を咬んだり咬み合わせたりすると少しだけ歯が動いて、力がかからない状態になると元の位置に戻ります。歯周病が進んで歯槽骨が減ってくると咬み合わせの力で動く歯の量が多くなり歯並びが崩れてくることもあります。さらに成長や口の中の環境の変化に合わせて歯は少しずつ移動をしています。歯を抜いたままにすると、隣の歯が傾いて来たり、咬み合わせる歯が挺出してくることもあります。
歯は、加わる力によって、常に動いている!
親知らずが歯並びに影響を与える派の言い分
親知らずは第二大臼歯までの永久歯列が完全に萌出した後の17歳~24歳ぐらいの間に萌出してきますが、歯並びに影響を与えると考えている歯科医師も、全ての親知らずが歯並びをわるくすると考えているわけではありません。まず上顎と下顎の親知らずに分けて考えなければいけません。
下顎の親知らずの場合
下顎では横向きに(第二大臼歯方向に)傾いている親知らずが歯並びに影響を及ぼすと考えられています。真っ直ぐ萌出することが出来なかった親知らずが第2大臼歯に押し出す力をかける為、その力がどんどん前の歯に伝わっていき、最終的に前歯の歯並びを悪くすると考えています。下顎の親知らずは正常な萌出をする人でも、はじめは第二大臼歯の方向に傾いた状態で萌出が起こり、少しずつ真っ直ぐに歯の位置が修正されてきます。横向きになったまま親知らずが萌出してこない人は顎の大きさが少なく、親知らずが萌出するスペースが無い人に多くみられます。最近は食生活の変化の為か、顎の大きさが小さい人が増えているようです。
上顎の親知らずの場合
上の親知らずが正常な萌出をする場合は、第二大臼歯とは反対の方向に向かって頬側に傾いて萌出してきます。そのため第二大臼歯を押して前歯に影響を与えるということは考えにくいです。しかし頬側に向かって萌出してきた親知らずは、頬の圧力や咬み合わせた時の下顎とのスペースの不足などが原因で萌出が止まり正常な位置まで萌出しない事が多くあります。このため前歯の歯並びは悪くなりませんが親知らず自体の歯並びや咬み合わせが悪くなってしまいます。上顎も下顎も基本的には顎の大きさが小さく親知らずが萌出するスペースが不足するため萌出がうまくできなく歯並びを悪くすると考えられています。
親知らずを抜歯すれば元に戻るのか?
また下顎の親知らずによって押し出されて歯並びが悪くなった場合、親知らずを抜歯すると元に戻るのではないかと考える方も多いと思いますが、親知らずを抜いても完全に元に戻ることは少ないようです。歯並びが変わる場合には長期間の時間を要しています。その間に咬み合わせや舌、頬、唇などと調和を取りながら歯は移動していきます。抜歯をすることで多少の改善はあるかもしれませんが完全に戻ることは期待し無いほうが良いでしょう。
親知らずが歯並びに影響を与えない派の言い分
歯並びを悪くしているのはもっと別の原因?
親知らずが歯並びに影響を与えないと考える歯科医師もいます。
それは、そもそも歯の萌出力に歯を移動させるまでの力が無いと考えているからです。普通は人間の歯は歯根が完成すると萌出力はなくなります。しかし親知らずの歯根が完成した後でも歯並びが悪くなることがあります。その為親知らずが歯並びを悪くしている訳では無く、歯周病や歯ぎしり、癖などが原因で歯並びが悪くなっているのではないかと考えています。
さらに親知らずが原因であれば、親知らずを抜歯した後は時間をかければ歯並びが戻ることも考えられますが、実際にはあまり戻ることは無いことも理由の一つと考えられます。
抜歯のリスクが大き過ぎる?
さらに親知らずを抜歯する危険性から考えて歯並びに影響はないと説明する歯科医師もいます。横向きに埋伏している親知らずを抜歯するには、歯茎の切開を行い親知らず周囲の骨を削る必要があります。そして歯冠部分を切断し、歯根を取り出します。この処置は患者さんの負担が大きく、術後の腫れや痛みも伴います。さらに親知らずの位置によっては下歯槽神経と呼ばれる、唇の感覚をつかさどっている神経に麻痺が残る場合があります。これらのリスクを考えると親知らずを安易に抜歯することはできないためです。
矯正と親知らず
矯正治療をする場合に親知らずは抜いた方が良いのか抜かない方が良いのか考えてみましょう。
親知らずを残しておくと、矯正してもまた歯並びが戻ってしまう?
親知らずを残したまま矯正治療をすると、終わってから数年後に歯並びが悪くなってしまう場合があります。その為、親知らずは矯正治療前に抜いて置いた方が良いという考え方があります。
しかし親知らずの抜歯は先述の通り、非常に困難な場合や、麻痺が残る場合があります。そこまでのリスクを負ってまで親知らずを抜歯をするかどうかという問題があります。さらに親知らずを抜いても、矯正治療を行った後に歯並びが元の状態に戻ろうとする動きが起こり歯並びがズレることだってあるのです。これらの理由から親知らずは虫歯や智歯周囲炎と呼ばれる感染が起こっていない場合は抜かない方が良いと考える歯科医師もいます。
親知らずを残しておくメリット
さらに親知らずを残しておくことで、将来的に大臼歯が虫歯などの理由で抜歯が必要になった場合、親知らずを移植することが出来る場合があります。このことも親知らずを抜かない理由の一つなります。
10歳前後で矯正治療を行う場合
また10歳前後で矯正治療を行う場合は、親知らずの歯胚と呼ばれる歯の卵のようなものを抜歯することがあります。この歯胚抜歯も歯茎の切開が必要ですが、子供の骨はやわらかく歯の根が出来ていないため比較的簡単に抜歯をすることが出来ます。そして最も問題となる神経麻痺の可能性も低いので、この時期に抜歯をする歯科医師もいます。
最終的には、歯医者さんとよく相談して決めましょう
これらの理由から矯正治療における親知らずの抜歯は患者さんの矯正を始める時期や矯正を始める時の親知らずの状態などを考えて、担当歯科医師と十分にメリットデメリットを考えた上で決定していくのが望ましいと考えます。
親知らずが歯並びに与える影響 まとめ
最後に、親知らずと歯並びの関係についておさらいしておきましょう。
- 歯は咬み合わせや成長、口の中の環境の変化などによって常に動いている
- 親知らずが原因で歯並びが悪くなるという考えがある
- 親知らずを抜いても歯並びが戻ることは少ない
- 親知らずが原因で歯並びが悪くなることはないという考えもある
- 歯並びが後から悪くなるのは歯周病や歯ぎしり、癖などによるものが大きい
- 矯正治療をする時に親知らずを抜くかどうかは担当医と十分に話し合って決定する!
以上です。確かに、歯並びが良いに越したことはないし、せっかく矯正した歯列が元に戻ってしまうなんて嫌ですよね。しかし、親知らずの抜歯にはそれ相応のリスクが伴うこともあると今回の記事でお分かりいただけたのではないでしょうか。まずは歯医者さんへ行き、相談してみてください!私どもの運営する”どくらぼ”では、皆様の大切な歯に関する記事が盛りだくさんです。是非他の記事にも目を通していただき、知識を深めてくだされば幸いです。最後までご覧頂きありがとうございました!