親知らずの痛み、とても辛いですよね。歯の痛みは、我慢できない程、辛くなってしまう事もあるでしょう。日頃、歯のケアをきちんとしている人でも、親知らずの痛みは、突然現れる事があります。親知らずの痛みの原因と、対処方法をまとめましたので、参考にしてください。
1 親知らずが痛くなる時に考えられる原因
智歯周囲炎
親知らずの痛みの中で最も多いのは、智歯周囲炎です。これは、親知らずの周囲が細菌によって炎症を起こす事によるものです。
親知らずは、完全に萌出しなかったり、生える位置や方向が悪く、斜めに萌出してしまう事が多いのが特徴です。そのため、歯の周囲の歯ぐきに、汚れや細菌が溜まりやすく、炎症が起こりやすくなります。
歯ぐきの周囲が赤く腫れ、押さえると痛みがあります。ひどくなると、歯ぐきから膿が出たり、口が開けにくくなるなどの症状がでます。
虫歯
単純に、親知らずが虫歯になって痛む事もあります。
親知らずは、歯の一番奥に生えてくるので、とても磨きにくく虫歯になりやすい歯です。完全に萌出していない場合や、斜めに生えている場合などは、さらに磨きにくくなります。虫歯になっても、口を開けても歯が見えにくいので、痛みが出るまで気がつかない事が多いので注意が必要です。
冷たいものが凍みる症状から始まり、徐々に温かいものが凍みるようになったり、ズキズキとした痛みが出るようになります。
萌出時の疼痛
親知らずが生えてこようとする時、出てこようとする力が、周りの歯ぐきや、隣の歯を押すことにより生じる痛みです。親知らずが生えるスペースがある場合には、しばらくすると親知らずが生えて、痛みが治まります。しかし、スペースが無い場合には、隣の歯を圧迫し、無理矢理生えてこようとする力が強くなり、痛みが強くなります。
親知らずがまだ生えていない状態の痛みなので、痛みの原因がわかりにくく、自分では周囲の虫歯を疑うかもしれません。歯科医院でレントゲン写真を撮って診断します。
生え方によっては隣の歯を刺激する
親知らずは、他の歯のようにまっすぐあるべき所に生えてこない事もあります。横向きに生えてきたり、斜めに生えてきたりすると、隣の歯(手前の歯)を圧迫して痛みを与える事があります。圧迫する力が強いと、さらにその手前の歯まで痛みを感じる事があります。隣の歯(手前の歯やその手前の歯)が虫歯になったと感じ、親知らずが原因だと気がつかない場合もあります。
かみ合わせの不具合による痛み
親知らずは、横向きに生えてきたり、斜めに生えてきたりする事があります。そのように生えてくると、しっかりとかみ合う事ができず、余計な所に強く当たってしまったり、粘膜に当たってしまったりする事があります。
かみ合わせの不具合が続くと、顎関節症や、頭痛、肩こりなどを引き起こす事があります。また、歯ぐきや頬の粘膜などに当たり、常に物理的刺激を与えている状態になると、口内炎が出来たり、潰瘍になってしまう事があります。
2 親知らずが痛い時の応急処置~自宅編~
① 患部を冷やす
親知らずが腫れて痛い場合には、頬の外側から、濡れタオルや冷えピタシートなどを使い患部を冷やすのが効果的です。氷は刺激が強すぎて、痛みが増してしまう事がありますので、使わないようにしましょう。歯を直接冷やすのも逆効果です。また、温めるのは厳禁です。血行が良くなり、痛みが増してしまいます。
② 市販の痛み止めを飲む
現在、ドラッグストアで売られている市販薬の痛み止めは、医療機関で出されるものと成分が近く、効果がある場合があります。例えば「ロキソニンS」は歯医者でもらえる「ロキソニン」とほぼ同じ成分です。その他「正露丸」「イブ」「バファリン」なども効果的です。
痛み止めは、胃に負担がかかるので、飲み過ぎは禁物です。薬剤師さんに相談するなどし、用法・用量を守って使用するようにしましょう。
③ うがい薬で消毒をする
「イソジン」や「コンクール」などは殺菌作用が強く、刺激が少ないので、効果的です。歯科の治療でも使用する事があります。コップの水に数滴たらし、ぶくぶくうがいをして使用する他、綿棒などで軽く塗布するのも良いでしょう。
「リステリン」などの、うがい薬は、アルコール成分が多く、刺激が強すぎるので、使用しないようにしましょう。
④ やわらかい歯ブラシで周りを清潔にする
歯ぐきが腫れている時は、強く擦ると、刺激が強すぎてしまい、歯ぐきを傷つけてしまったり、痛みが増してしまう事があります。やわらかい歯ブラシで、優しく汚れを取り除くようにしましょう。刺激を与えないように、痛い歯を避けてみがくのも良いでしょう。
ただし、食べカスが詰まっている場合には、それにより歯の内部の圧力が高まり痛みが増している場合があります。簡単に取り除けそうな場合には取り除くと良いでしょう。
痛みの原因が歯ぐきの炎症によるものの場合、細菌が原因になっているので、みがける部分はみがくようにし、なるべく清潔にしておく事も大切です。
⑤ 安静にして過ごす
歯ぐきの炎症が原因の場合、疲れていたり、体調が悪い時など、免疫力が低下している時に悪化しやすくなります。口の中の細菌の力が、身体の抵抗力より勝ってしまうためです。痛みで食事がとれない場合などは、栄養補助食品などでなるべく栄養をとり、出来るだけ安静にして過ごすようにしましょう。
⑥ 極力その歯を使わないようにする
強く噛むなどの刺激を与えると、痛みが増してしまう事があります。周囲の歯ぐきが原因の場合も、虫歯が原因の場合も同様です。食事がとれる場合には、うっかり痛みのある歯で噛んでしまわないよう、やわらかいものを食べるようにしましょう。
⑦ 運動・入浴・飲酒・喫煙を避ける
身体があたたまると、患部もあたたまり、血行が良くなります。運動・入浴・飲酒・喫煙は、血行を促進し、痛みを増幅させる可能性がありますので、なるべく避けるようにしましょう。入浴は軽いシャワー程度に済ませるのが良いでしょう。
飲酒は、一時的に痛みを忘れる事がありますが、後に強い痛みとなって襲ってきます。飲酒や喫煙は、刺激にもなりますので、我慢するようにしましょう。
⑧ 歯痛に効くツボを押す
歯痛に効くツボとして「歯痛点」「合谷(ごうこく)」があります。少し痛いくらいに押すのがポイントです。気休めのように感じるかもしれませんが、効果がある事もあります。
「歯痛点」は、手のひらの側の中指と薬指の付け根にあります。親指と人指し指でつまむようにして刺激をしてください。
「合谷」は親指と人指し指の付け根の間にあります。ぐっと強く押しこんだり、揉むようにして刺激をしてください。
⑨ 今治水・正露丸を使用する
家庭で使用する薬で“歯の痛みに効く”と昔から言われているものに「今治水」「正露丸」があります。
「今治水」は、液体状の歯痛薬です。虫歯や歯の根の痛みに鎮痛効果があると言われています。綿棒などで、患部に直接塗って使用します。効果がある場合もありますが、親知らずの痛みの原因が、虫歯以外の場合には、効果が期待できません。
「正露丸」も、虫歯の痛みに効果があると言われています。痛み止めとしての服用については「②市販の痛み止めを飲む」に記載のとおりになります。
それ以外に、「正露丸」を虫歯の穴に直接つめて、歯の痛みをとる方法があります。これは効果が期待できる場合もありますが、出来ればおすすめしません。歯の状態によっては、穴の部分に蓋をしてしまう事で、歯の内部の圧力が高まり、痛みが増幅してしまう場合があるからです。つめた正露丸は、自力で取り除く事が難しくなってしまう場合もあるので、自己診断で正露丸をつめるのは止めた方が良いです。
3 親知らずが痛い時の処置~歯医者編~
親知らずが痛い時の治療は、歯を残すための治療をするか、抜歯をするか、その方にとって、親知らずが必要かどうかで判断します。噛み合う歯が無かったり、斜めや横向きに生えていて、今後もトラブルを起こす可能性が高い場合には、抜歯になります。
① 抜歯をする
抜歯をした方が良いと診断された場合でも、実際に抜歯を行うのは、親知らずの炎症が引いてからになります。炎症があると、麻酔が効きにくく、抜歯後に痛みも出やすくなります。ズキズキと強い痛みがあるという事は、急性炎症が起きている状態になります。痛みが強い場合には、まずは、炎症を引かせる処置が先になります。
② 親知らずの周りの炎症を押さえる
最も頻度の多い「智歯周囲炎」の場合には、周囲の歯ぐきが炎症を起こしている状態なので、炎症が起きている部分を洗浄し、患部に抗生物質の軟膏を塗布します。消炎鎮痛剤(ロキソニン・カロナールなど)と抗生物質(フロモックス・ジスロマックなど)を処方する事が多く、服薬をして数日間様子をみます。
③ 親知らずの周りの歯ぐきを切除する
周囲の炎症が治まってから、親知らずの周りの歯ぐきをレーザー等で除去して、周囲に細菌がたまりにくい状態にします。親知らずの上にかぶっている歯ぐきがあると、炎症を繰り返す可能性があります。これで状態が改善され、炎症が起こりにくい状態を維持できるようであれば、無理に抜歯をする必要はありません。
④ 虫歯の治療をする
親知らずの痛みの原因が虫歯の場合には、虫歯の治療を行います。親知らずが比較的まっすぐに生えていて、上下でしっかりと噛み合っている場合は、虫歯の治療をして、歯を残す方向で治療を進める事もあります。
しかし、親知らずが斜めに生えていたり、周囲の歯ぐきの炎症が同時に起こっている場合などは、治療自体も難しく、治療をしても再発をする事が多いので、虫歯治療はせずに、抜歯をする事が多いです。
虫歯が歯の神経に達する程、進行している場合も、治療が難しいため、多くの場合、抜歯になります。
4 親知らずを痛いまま放置するときに起こる最悪の展開
親知らずの痛みを放置すると、激しい痛みがあっても、我慢し続けると、一時的に急性症状が治まり、痛みが治まるように感じる場合があります。しかし、放っておくと全身に深刻な影響を及ぼす場合があります。放っておいて完治をする事がありません。必ず受診をするようにしましょう。
① 炎症・感染が顎の下まで広がる
親知らず周囲だけに起きていた炎症は、次第に広がっていき、口が開けられないほどになります。顎の下部分が膨らみ、発熱や全身の倦怠感が現れます。顎の内部が化膿し、膿が溜まった状態になっている可能性があります。一般の歯科では、診察が難しい場合もあり、口腔外科に行く必要が出てきます。
② 喉の奥まで感染が広がる
顎の下まで広がった炎症は、次第に喉の脇部分にまで進行します。周囲のリンパ腺が腫れるなどの症状が出る事があります。一刻も早い受診が必要です。
③ 感染が心臓周辺にまで拡大
首を伝って胸まで炎症が広がると、すぐに心臓周辺にまで感染が拡大してしまいます。こうなると命に関わります。心臓に感染した場合の死亡率は20%以上とも言われています。
5 親知らずが痛い時の歯医者さんの予約の仕方
Q1 飛び込みで行ってもいいのか、事前に電話が必要か
飛び込みでも受診できる場合がほとんどですが、出来る限り事前に電話をする方が良いでしょう。予約無しの受診は急患扱いとなるので、処置は出来ますが、かなり待たされてしまう事があります。あらかじめ電話をすれば、仮に予約がいっぱいの場合でも、予約の方よりは待たされますが、出来るだけ早く診察できるような配慮をしてくれる場合が多いです。
Q2 いつも行っている歯医者さんでないといけないか
いつも行っている歯医者さんでなくても大丈夫です。かかりつけの歯医者さんの方が、あなたの歯の状態を良く把握していると思いますが、応急処置は、どこの歯医者でもほとんど変わりありません。
応急処置だけを希望し、その後の治療を、かかりつけの歯医者さんで行う場合には、正直にその旨を伝える方が良いでしょう。ほとんどの歯医者さんが快く治療をしてくれますし、処置後スムーズに、かかりつけの歯医者さんで治療を再開できるような治療方法を行ってもらえます。
Q3 仕事や学校ですぐに行けない場合はどうすればいいのか
出来るだけ早く通院する方が良いです。行けない場合でも、最短で行ける日に行きましょう。場合によっては、時間の経過と共に痛みが一時的に治まる事もありますが、改善は全くしていません。むしろ悪化している事もあります。スムーズに診察をしてもらえるよう、あらかじめ、最短で行ける日を電話で予約しておくと良いでしょう。
Q4 夜中に痛んで仕方ない時はどうすればいいのか(緊急の場合どうすればいいか)
住んでいる地域によりますが、多くの場合歯科医師会が『救急歯科センター』を運営しています。休日の救急診療や、20時以降の夜間診療に対応してくれます。近くにある場合には利用すると良いでしょう。対応時間はセンターによって異なります。23時くらいまでの所が多いですが、問い合わせが必要です。
東京などの都心では、個人の歯科医院でも、夜間診療や休日診療を行っている所がありますので、利用するのも良いでしょう。
ただし、どちらにしても、応急処置になります。応急処置のみでは、それほど痛みが緩和されない事もありますし、充分な治療が受けられない事もあります。通常の診察時間まで、どうにか待てるようであれば、診察時間内に受診をした方が、充分な治療を受ける事ができます。
Q5 海外旅行中に痛くなったらどうすればいいか
海外での歯科受診は、不安も多いと思いますので、痛み止めを持っている場合には、まずはそれを服用し、様子をみても良いでしょう。現地の薬局でも痛み止めを販売している場合があります。
有名な痛み止め薬は
- Adville(アドビル)
- Tylenol(タイラノール)
などです。
歯の痛みを英語でPainoftoothといいます。
辛い痛みが治まらない場合は、現地の病院を受診するのが良いでしょう。ツアー会社を通じて旅行をしている場合には、ツアー会社に問い合わせたり、海外旅行保険の電話サービスなどに問い合わせると、受診しやすい病院を紹介してくれる場合もあります。
ただし、自費治療になるので高額になります。また、海外旅行保険も適用されない場合があるので注意が必要です。出来ることなら、あらかじめ歯科医院を受診して対策をしておくのが一番です。
Q6 歯医者に行くまでにした方がいいこと、してはいけないこと
急性症状で大きな炎症を起こしていると、麻酔が効きにくくなるので、抜歯が出来ない事があります。また、治療に大きな痛みを伴う事があります。歯医者に行くまでに出来るだけ症状を落ち着かせる事が大切です。
まず出来るだけ、痛みのある歯の周りは清潔にしておきましょう。軽く汚れが取れるようなら除去し、うがい薬があれば使用するのも良いでしょう。そして、その歯に負担をかけないよう、なるべく使わないようにしておきましょう。また、激しい運動や、長風呂は避け、出来るだけ安静にするようにしましょう。
6 よくある親知らずの痛みに関する質問
Q1 親知らずの痛みにムラがあるのですが(風邪になると痛む、季節が変わると痛む、ストレスがあると痛むなど)これは何故ですか?親知らずは関係ない?
歯の痛み…特に歯ぐきの炎症による痛みは、体調が悪い時に起こりやすくなります。炎症は、お口の中の細菌によって起こります。元気な時は、細菌より自分の免疫力が勝っているので、菌が悪さをしないように押さえ込んでいます。体調が悪い時や、季節の変わり目、ストレスがある時は、免疫力が低下するので、菌を押さえきれなくなって炎症が起こり、痛みが出るのです。
Q2 親知らずが痛い時に運動してもいいですか?
親知らずが痛い時は、できるだけ運動を控えるようにしましょう。身体があたたまり血行が良くなると、当然、歯の周辺の血行も良くなります。腫れが大きくなって痛みが増し、血流が神経を圧迫する事で、痛みが強くなる事があります。
Q3 親知らずが痛い時にお風呂に入ってもいい?
親知らずが痛い時には、簡単に済ませ、長湯は控えるようにしましょう。シャワー程度で済ませると良いでしょう。お風呂は運動と同様、身体があたたまり血行が良くなります。痛みが増す事がありますので、注意をするようにしましょう。
Q4 親知らずが痛い時にお酒は?
親知らずが痛い時には、お酒は飲まないようにしましょう。お酒を飲む事により、体温が上がり、血行が良くなります。当然、歯の周辺の血行も良くなります。腫れが大きくなって痛みが増し、血流が神経を圧迫する事で、痛みが強くなる事があります。お酒を飲む事により、一時的に痛みを忘れる事はあるかもしれませんが、その後に強い痛みに教われます。
Q5 親知らずが痛い時にタバコは?
喫煙者の方は、気持ちを落ち着かせるため、タバコを吸いたくなる気持ちも分かりますが、出来るだけ控えるようにしましょう。タバコは、歯を刺激する成分が含まれており、痛みが増してしまう事があります。また血流が良くなり、神経が過敏になってしまい、痛みや腫れが増す事があります。
Q6 親知らずの痛みが出やすい年代とかありますか?20代が出やすい、妊娠中は痛みやすい??
親知らずが生えてくるのは、18歳から20歳頃が多いと言われています。親知らずの痛みは、親知らずが上手く生えない事が原因になっている事が多いので、20歳以降に痛みが出てきやすくなります。ただし、親知らずが痛みなどの悪影響を及ぼし始める年齢は、20代から50代過ぎまで、様々です。親知らずの抜歯は、年齢が上がるにつれて、歯周病のリスクが上がるなどして、抜歯後の治癒経過が悪かったりする場合があります。
妊娠中については、免疫力が低下するため、痛む可能性のある親知らずがある場合、痛みが出やすい状況になります。出来る限り妊娠を希望する年齢になる前に、親知らずの状況を診察してもらった方が良いでしょう。
【Q&A まとめ】
身体の免疫力が下がっている時は、親知らずが痛みやすくなります。
・ 風邪を引いた時 ・季節の変わり目 ・睡眠不足やストレス など
また女性の場合には、女性特有のホルモンのバランスが悪い時期も注意が必要です。
・ 月経時 ・妊娠中 ・授乳中 ・更年期 など
痛みが出た時には、運動・入浴・飲酒・喫煙など、体温が上がり、血流が良くなる事は避け、出来る限り安静にして過ごすようにするのが良いでしょう。
いかがだったでしょうか。以上が親知らずの痛みに関する答えになります。親知らずは誰でも一度は悩んだことがありますよね。だからこそ、いざ痛くなった時に正しい知識を持っておくことが大切です。
親知らずが痛い時は無理せずに歯医者さんに相談してください。近年は歯科技術が発達しているので、痛みなく抜歯することも医院によっては可能ですよ!