親知らずを抜こうと歯医者さんに行っても、「口腔外科で抜いてください」と断られる場合があります。どうしてそこでは抜くことが出来なかったのでしょうか?
さらに町の歯医者さんの看板を注意深く見ていると、「口腔外科」が標榜されているところと、標榜されていないところがあります。大学病院や総合病院にも口腔外科がありますが、いったい口腔外科って何なんでしょうか? 普通の歯医者さんと何が違うのでしょうか?
知っているようで知らない、親知らずと口腔外科について、これから詳しくご説明します!
親知らずは口腔外科で抜いたほうがいいの??
親知らずの生え方によっては、困難な手術になってしまう場合があり、口腔外科を勧められることがあります。ということは、口腔外科医のほうが上手なのでしょうか?
そもそも口腔外科って何??
口腔外科とは
口腔外科とは、口の中、もしくはその周囲に外科的な処置を行う科のことを言います。
具体的な治療内容は、親知らずの抜歯や、口の中の腫瘍や嚢胞と呼ばれる膿の袋の摘出、顎変形症と呼ばれる顎の骨の手術、口唇口蓋裂の治療、口の中の感染症の治療、歯肉癌や口腔癌の治療などが挙げられ、多岐に渡って治療を行います。日帰りで行う事のできる手術もあれば口腔癌など数カ月の入院が必要になる治療もあります。そのため、患者さんの全身状態のコントロールも重要になる、歯科の中でも特殊な科です。
大学病院や総合病院の口腔外科医には種類がある?
大学病院の口腔外科医は、教授、准教授、講師、助教、臨床助手、研修医などの段階に分かれているのが一般的です。口腔外科では様々な治療を行いますが、手術によって難易度が違うため、全ての手術を全員が出来るわけではありません。特に口腔癌の手術は患者さんの生死と直接かかわる重大な治療ですから、教授、准教授が最も大事な腫瘍の切除や頸部廓清(けいぶかくせい)と呼ばれる首のリンパ節や組織の除去を行い、講師や助教が移植や再建手術を担当します。臨床助手はこれらの手術のアシスタントをしています。口腔癌の手術は12時間以上を要する長丁場の手術になることもありますから、それぞれが交代で休憩をしながらチームで治療に取り組むのが一般的です。
親知らずの抜歯は口腔外科医にとっては練習?
親知らずの抜歯は口腔外科領域において比較的簡単な処置に入ると思われます。また、親知らず抜歯には、歯ぐきの切開や骨の削除、縫合など口腔外科領域において最も基本的で重要な処置が含まれていますから、研修医や1,2年目の臨床助手が外科的な技術を上げるためのステップとして処置するのが一般的です。一般歯科医院に標榜されている口腔外科は、このように大学病院の口腔外科で研修を積んだ歯科医師が開業していることが多いです。
口腔外科医と一般の歯医者さんは何が違うの?
口腔外科を名乗るのに特別な免許は必要なく、どちらも歯科医師免許だけですから、双方に違いはほとんどありません。一般的に口腔外科医は歯科医師国家試験合格後、大学病院の口腔外科や総合病院の口腔外科などへ勤務し、そこで手術や患者さんの全身コントロールを勉強し、高い技術や知識を身に付けていきます。
一般の歯科医師は歯科医師国家試験合格後、一般の歯科医院に勤務しそこで一般歯科治療の技術や知識を身に付けていきます。
町の歯医者さんが掲げている口腔外科と大学病院の口腔外科はどう違う??
大きく違うところは入院施設と手術室の有無です。また、放射線治療の施設や集中治療室が大学病院には必須です。口腔外科で最も困難な治療は口腔癌の手術ですが、口腔外科医は口の中だけの手術をするわけでは無く、癌を取り除いた後に顎や舌を再建するため、お腹や背中、手首などから組織を移植する必要があります。さらに癌は口の中だけに限局させるわけではありません。口の中から進行して鼻や目、咽頭や喉頭などにも広がっていきます。そのような場合には耳鼻科や眼科、脳外科などとの合同のチームを組んで手術が必要になるため、医科の先生も必要になってくるのです。一般の歯科医院ではここまでの設備を取り入れることは出来ないため、親知らずの抜歯や良性腫瘍、嚢胞の摘出などの手術に限定されます。
口腔癌など、大きな手術は総合病院や大学病院の口腔外科でないと出来ない。
親知らずを抜く場合、口腔外科の方がいいと聞いたのですがそれはなぜ?
親知らずの抜歯には、口腔外科がおすすめ!
親知らずを抜く場合、一般の歯科医院よりも口腔外科のほうが適しているのは、口腔外科医のほうが圧倒的に処置に慣れているからです。
親知らずが横向きに歯茎の中に埋まっている場合、歯茎の切開や骨を削る必要があります。大変困難な手術に聞こえますが、口腔外科手術の中では簡単な部類に入ります。それ以上に難しい手術すら処置する口腔外科医に任せたほうが安心です。
口腔外科を掲げる町の歯医者で抜歯するのがおすすめ!
同じ口腔外科でも、「口腔外科を掲げている一般的な歯科医院」と「大学病院や総合病院」のどちらで抜歯をしたほうが良いのでしょうか?個人的には口腔外科を標榜している一般歯科医院で抜く方が良いと思います。なぜなら口腔外科を標榜している一般歯科医院の多くは大学病院の口腔外科で技術的な研修を積んでから開業するのが一般的ですので、外科的な処置に慣れています。
それに対して大学病院や総合病院では、先述のように、国家試験を合格して間もない新人の先生が、外科処置の技術向上を目的に抜歯をすることが多くあります。
親知らず抜歯に一番適しているのは、口腔外科を標榜している、町の歯医者さん!
親知らずを抜く場合、どういった環境が整っている歯医者さんを選ぶべき??
親知らずを抜く場合は、レントゲンさえあれば抜歯が可能です。しかし親知らずの位置や状態によってはCTスキャンが必要になる場合もあります。必ずしも口腔外科の専門医や指導医を持っている歯科医師に抜歯をしてもらう必要はないと思いますが、どの歯科医院を選べばよいか解らない場合はそれを判断基準にすることは良いと思います。
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大学病院の口腔外科で親知らずを抜く際のあれこれ
親知らずの生え方は人によって千差万別ですから、極端に悪い生え方をしていた場合には、大学病院や総合病院のように施設が充実していないと抜歯出来ないこともあります。
大学病院で親知らずを抜歯する際の手順
大学病院や総合病院で親知らずを抜く場合、まずは一般的な歯科医院を受診しましょう。そこで紹介状を書いてもらって下さい。保険証と紹介状を持って病院へ行き、レントゲンを撮影します。このレントゲンを元に、必要であればCTの撮影をします。ほとんどの場合はレントゲンだけで抜歯を行います。もしCTが必要な場合はCTの予約が必要ですから、後日再度受診する必要があります。大学病院や総合病院では初診時に抜歯を行わないのが一般的です。レントゲンを元に抜歯の方法や抜歯後の不快事項、合併症、注意事項の説明があり、後日抜歯の予約を取ります。抜歯を行った後は、翌日消毒を行い一週間後に抜糸をします。
大学病院で親知らずを抜歯する際にかかる費用
初診時に4000~5000円前後の費用がかかり、抜歯時にも同額程度の費用が必要です。消毒や抜糸時には1000円以内の費用です。
保険は適応されますので、保険証を持っていくことを忘れないでください。
入院はする??どんな手術の場合入院が必要?
一般的に親知らずの抜歯では、入院や全身麻酔の必要はありません。しかし、極端に歯が顎の骨の深い位置にある場合や、神経や血管との位置関係が危険な場合、上下左右4本の親知らずを同時に抜かなければいけない場合、歯科治療に著しい恐怖心を抱いている場合には、全身麻酔が必要になる場合も稀にあります。
まとめ
親知らずと口腔外科の関係について重要なことをおさらいしておきましょう。
- 口腔外科とは、口内や口腔周囲の外科的な処置を行う科のことを言う。
- 一般の歯科と口腔外科の違いは大学病院や総合病院で口腔外科の研修を受けているかどうかの違い。
- 大学病院や総合病院の口腔外科は癌治療など難しい治療を行う。
- 親知らずを抜く場合は口腔外科を標榜している一般歯科医院が良い。
- 親知らずの抜歯はレントゲンがあれば可能だが、場合によってはCTも必要になる。
- 大学病院や総合病院で親知らずを抜歯する場合には、事前に紹介状を持って受診することが望ましい。
- 費用は4000円~5000円前後。
- 基本的に入院は必要ない。
- 親知らずの抜歯は保険の適応になる。
親知らずの抜歯には激痛が伴うと聞くし、手術なんて言われてしまうと、なんだか怖くなってしまいますよね。ですが放っておいても良いことはありませんから、是非今回の記事を参考に、
口腔外科を標榜している町の歯医者さん
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