舌のしびれという症状を起こす原因には様々なものがあります。しかし、原因不明なものも多く、見た目では何も異常がないのに舌がしびれることもあります。今回はこの「舌のしびれ」について解説していきます。
病気以外で舌のしびれの原因となるもの
病気ではないのに舌のしびれを起こすものとしては次のようなものが考えられます。
1.やけど
これは誰でも経験をしたことがあるでしょう。通常はやけどをしてしびれが出ても、数日で落ち着いてきます。
2.ドライマウス(口腔乾燥症)
粘膜を保護する役目を果たす唾液が少なくなると、舌が敏感になり、しびれを出すことがあります。
3.ビタミン・ミネラル不足
ビタミン、鉄分、亜鉛などが欠乏すると舌のしびれを起こすことがあります。
4.薬の副作用
一般に処方される薬の80%ほどが副作用として口の中の乾燥を引き起こすと言われています。口の乾燥は舌のしびれの原因となりえます。
5.舌を刺激するものがある
尖ったり、ざらざらするものが口の中にある場合、例えば欠けている歯、歯石、詰め物やかぶせ物の段差や入れ歯の段差などがあると、舌を刺激したり、または気になって舌でいじりすぎてしびれを起こすことがあります。
6. 薬物、毒物による中毒
薬物や毒物による中毒の初期症状として舌のしびれが出ることがあります。
舌のしびれを起こす病気
1.舌痛症
主に40〜60歳代の女性に多く見られる原因不明の舌の痛みやしびれを伴う病気です。
2.うつ病
うつによる気分の変化と共に唾液の量も変化することや、抗うつ剤の副作用として口腔乾燥もあることから舌のしびれを引き起こすことがあります。
3.糖尿病
糖尿病の合併症として、舌のしびれが見られることがあります。
4.口内炎
口内炎の中でも、とくにカンジダ性口内炎で舌のしびれが起きやすくなります。抵抗力が落ちた場合などにカンジダ菌が異常繁殖して口の中の粘膜にカンジダ症を発症し、ピリピリしたりしびれる症状を引き起こします。
5.ベーチェット病
ベーチェット病の一症状として口の中にアフタ性口内炎がでます。しかしこの場合はしびれるというよりピリピリ痛む症状の方が強いと考えられます。
6.金属アレルギー
口の中の金属(詰め物、かぶせものなど)のアレルギーで舌がしびれることがあります。
7.舌ガン
舌ガンの症状でしびれを伴うことがあります。見た目はアフタ性口内炎のような潰瘍の形で現れますが、ガンの場合は痛みをそれほど感じず、しびれや違和感として現れることが多いようです。
8.脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など
舌がしびれる感じがあって、長く続く場合、脳の病気が原因になっていることがあります。
9.神経麻痺
舌神経麻痺や顔面神経麻痺においては舌のしびれが起こります。
舌のしびれの治療方法~自宅でできるセルフケア~
1.バランスの良い食事
ビタミンや鉄分、亜鉛などが不足しないよう、バランスの良い食事を日頃から心がけましょう。ファーストフードや外食、インスタント食品には亜鉛が不足しがちです。できれば自炊をして栄養のバランスを整えましょう。
2.ビタミン剤などのサプリメント
不足しがちな栄養はサプリメントから取るのも良いでしょう。具体的にはビタミンB12、鉄、亜鉛です。
3.口のケアをしっかりとする
虫歯で尖っているところやザラつく歯石、段差のある詰め物、合わない入れ歯などを放置しておくと舌を傷つけたり、お口が不潔な状態だと口内炎ができたりなどのトラブルが起こりやすくなります。
4.心身の健康を心がける
リラックスする時間をなるべく取るように心がけ、適度な運動をすることでストレス解消、気分転換を図りましょう。
5.唾液をよく出す
食べるときはよく噛む、また食事以外でも唾液を出す目的でガムを噛んだりするのも良いでしょう。また、よく喋ることも唾液を出すには非常に効果的です。
舌のしびれの治療方法~病院で行うケア~
舌のしびれを起こしているのが病気である場合は、その治療を行う必要があります。病気以外が原因で起こっている場合は、舌を刺激する原因となる物を排除する、などのそれぞれに合わせた対処法を行います。
■何科で治療する?
しびれを起こしている原因が口の中の物理的な刺激である場合には、一般の歯科医院でも対処できますが、なるべくであれば口腔外科医のいる歯科医院の方が舌に関する知識も深く、幅広く治療を行っているため、あらゆる原因に対して治療を受けられるでしょう。
また、舌痛症などの心因性のものからお口の中に症状を出しているものを専門に扱う「心療歯科」を設けている歯科医院もあります。もし近くにない場合には大学病院や歯科口腔外科のある大きな病院に相談する、またはかかりつけの歯科医院に舌の治療を行っている医療機関に紹介状を書いてもらうのも良いでしょう。
しかし、しびれを起こしている原因の病気がある場合にはその病気の専門の診療科での治療を受けることになります。
■どんな治療法?
虫歯や歯周病に関連して症状が出ている場合には、一般の歯科の治療、舌痛症や心因性のものに対しては症状に合わせて薬物療法およびカウンセリングなどの心理療法、全身の病気の一症状として出ている場合は病気の治療を行います。
■どんな薬が出される?
薬物療法として出される薬には次のようなものがあります。
1.抗うつ剤
慢性の痛みを軽くする目的で処方されます。早ければ4−5日から症状が緩和していきます。
2.抗不安薬
不眠を伴う場合などに出されます。
3.漢方薬
漢方薬が効果的な場合があります。副作用がほとんどないことから使われるケースが増えてきているようです。舌のしびれの症状に出されるものは20種類ほどにものぼり、それぞれのケースに合ったものが処方されます。
4.抗胃潰瘍剤
舌の血流を改善することにより、舌痛症に効果的な場合があります。
舌のしびれと舌癌
■舌のしびれに味覚症状が伴う場合は、舌癌初期?
舌ガンの場合、見た目にアフタ性口内炎のように潰瘍があったり、しこり、出血、舌の一部が赤い、などの症状が出ます。初期のうちは見た目の割には痛みをあまり感じることがなく、自覚症状はあるとしても、違和感やしびれのような症状で現れます。また、ガンが進行してくると、味覚が鈍くなる、特定の味覚を感じなくなる(特に塩味)などの味覚の変化も現れてきます。
ですが、しびれや味覚症状があるからといって舌ガンとは限りません。舌のしびれや味覚症状を起こすものとしてはドライマウスやミネラル不足などもありますので、すぐに「ガンではないか?」と悩む必要はありません。なによりも、舌ガンの場合は見た目に明らかな異変が現れますので区別がつきやすいでしょう。心配な人は歯科医院で診てもらうと安心です。
■なぜ舌癌でしびれが起こるの?
ガンが進行して内部に進むと、舌に張り巡らされている神経が侵されてしまい、障害された神経が支配する場所にしびれが現れます。
まとめ
■病気以外で舌のしびれの原因となるもの
- やけど
- ドライマウス(口腔乾燥症)
- ビタミン・ミネラル不足
- 薬の副作用
- 舌を刺激するものがある
- 薬物、毒物による中毒
■舌のしびれを起こす病気
- 舌痛症
- うつ病
- 糖尿病
- 口内炎
- ベーチェット病
- 金属アレルギー
- 舌ガン
- 脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など
- 神経麻痺
■舌のしびれの治療方法
自宅でできるセルフケア
- バランスの良い食事
- ビタミン剤などのサプリメント
- 口のケアをしっかりとする
- 心身の健康を心がける
- 唾液をよく出す
病院で行うケア
- 病気が原因の場合はその治療
- 病気以外の場合はそれぞれの原因に合った対症療法
■病院でどんな治療があるか
何科で治療する?
- 歯科医院(なるべくなら口腔外科医のいる所)
- 心療歯科
- 大学病院
- 歯科口腔外科のある大きな病院
- 病気の一症状として出ている場合には、その病気の専門の診療科
※どこで診てもらえばいいかわからない場合はかかりつけの歯科医院に舌の治療を行っている医療機関に紹介状を書いてもらうことをオススメします!
治療法
- 虫歯や歯周病が原因→一般の歯科の治療
- 舌痛症や心因性のもの→症状に合わせて薬物療法、カウンセリングなどの心理療法
- 全身の病気の一症状として出ている場合→病気の治療
どんな薬が出される?
- 抗うつ剤
- 抗不安薬
- 漢方薬
- 抗胃潰瘍剤
■舌のしびれと舌癌
舌のしびれに味覚症状が伴う場合は、舌癌初期?
- 舌のしびれや味覚症状があるからといって舌ガンとは限らない
- ドライマウスやミネラル不足なども舌のしびれ、味覚症状を起こす
- 心配な人は歯科医院で診断を受ける
なぜ舌癌でしびれが起こる?
ガンが進行して舌の神経が侵され、 しびれが現れる
以上になります。一言で舌のしびれといっても原因や病気は人それぞれです。少し様子を見て、そこから気になるようであれば受診をオススメします。このところ歯科医院でも口腔癌や舌癌診断を積極的に行なっている歯医者さんもございますので気になる場合は是非相談してみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。