虫歯がかなり進行したいわゆるC3になると、神経を取る処置をする確率が高くなります。神経を取るという処置は、簡単に言うと顎の神経から歯に伸びている神経の枝を根の先で引きちぎることになります。この状態では既に細菌に感染して炎症を起こしていることが多く、神経が入っている根管とよばれる歯の根の中をきれいになるまで消毒しなければいけません。これが根の治療と呼ばれる処置です。
消毒によって無菌の状態になったら神経が入っていたはずの根の中を封鎖し、最終的には詰め物や被せ物をして咬み合わせや見た目を修復します。これで治療完了!のはずですが、中には神経を取ったのにまた痛みが出てくることもあります。
今回はこの、神経をとった歯にも関わらず痛みが出る原因について解説致します。
神経をとった歯が痛むことはある?
神経の中で起こっている感染や炎症は、たやすく目で確認できるものではありません。そのため、どれだけ慎重に治療を行っても炎症や感染した部分が残っていることもあり得ます。中にはレントゲンでも確認しづらいくらい小さな側枝という神経の細い枝が横に伸びていて根の中に残っていることもあります。
また、既に炎症が周りまで波及し始めている場合などでは後に痛みが出てくることがあります。神経を取った直後でなくても、長年少しずつ炎症が起こって腫れや痛みが起こることがあります。こういったケースでは、治療後の被せ物の経年劣化や新たな虫歯によって歯の中に再び虫歯菌が入り込み根の先まで感染が進んでいることがあります。歯根膜炎という状態でレントゲンを撮ると根の先にぽっかりと黒い影が写っていることも多いのですぐにわかります。
代表的な症状としては、コツコツと歯を叩くとひびく、噛むと痛いといったことがあります。また、歯周ポケットと呼ばれる歯茎の周りから細菌が奥へと入り込んで炎症を起こしている場合もあります。この場合、歯周病との関連も出てくるので単純に神経の処置では改善せず歯周病の治療や適切な指導を受けることが必要です。
それ以外に考えられる原因としては、神経を取って最終的に被せ物や詰め物をしたけれど、噛み合わせが合っていない、あるいは強く当たるところがあると一時的に歯の周囲が打撲のような状態になって痛むことがあります。この場合は、噛み合わせの調整をすることで痛みは治まります。
いずれにしても神経を取った歯が痛む場合は、歯そのものの痛みというよりは歯の周囲の痛みを表しているといえるでしょう。治療に時間がかかるケースも少なくありませんので、神経を取ったからといって安心せず定期的な検診やレントゲン撮影による経過観察なども必要です。