.インプラントのクラウンを製作する材料で一番考えなければならないのが強度です。なぜ、強度を考えなければいけないのでしょうか?
その秘密は顎の骨にあります。
前歯のインプラントはクラウンに衝撃が伝わりやすくなっている。
前歯のインプラントのクラウンと天然歯のクラウンを比較すると、衝撃に差がでます。
天然歯のクラウンの場合
天然歯にクラウンを被せた場合、歯の根っこ(歯根)と顎の骨(歯槽骨しそうこつ)の間には歯根膜(しこんまく)というものが有り、数十μm歯が動きます。
歯根膜が噛んだ時にクッション替わりにもなるので、ある程度衝撃を和らげる働きもあり、クラウンに衝撃がかかりにくくなっています。
前歯のインプラントのクラウンの場合
インプラントは顎の骨に直接チタンでできた人工根を埋め込むため、がっちり固定されます。
しかし、歯根膜のようにクッション替わりになるものがなく、衝撃が直接クラウンに伝わり破折や破損の可能性が出てきます。
そのため、強度の強い金属が前歯のインプラントのクラウンには適しています。
しかし、前歯に金属を使うと目立ってしまい、審美的にきついものがありますよね。
前歯のインプラントのクラウンに金属を使用せずとも強度の高い素材が開発された
金属並の強度を持つ素材が、ジルコニアという素材です。
これは、より天然の歯にクラウンを近づけるだけでなく、生体親和性にとても優れています。
また、金属を使用しないので金属アレルギーの方でも安心して口腔内にクラウンを装着できるという利点があり、近年臨床でも広く使用されてきています。
ジルコニアの問題点は曲げの強度、伸びの強度が弱いのでかみ合わせの調整が難しいこと
ジルコニアなどのセラミックを前歯のインプラントのクラウンに利用することのデメリットは、金属と異なり曲げ強度や伸び強度が弱いため、ヒビが入ったり最悪割れたりという問題が出てくることです。
よって、的確な噛み合わせを付与しなければならないという高度な技術と知識が必要になってきます。
しかし、材料と噛み合わせ等のしっかりとした知識を持っていれば、患者の口腔内環境によって適した材料を選択することにより、より自然な歯に似たインプラント治療を受けることが可能です。
歯科技工士(前歯のインプラントクラウンを作成している人)のオススメする素材
歯科技工士がオススメしたい。前歯のインプラント治療に適したクラウンは、審美を一番に考えるならば、
- インプラント体(人工根)の上にジルコニアで製作したアバットメント(人工土台)を装着
- その上にジルコニアでフレーム(裏打ち)を製作
- ポーセレン(陶材)にて天然の歯のような色形を模写したクラウンを装着する
この組み合わせが良いと思います。
土台をジルコニアで作成
中はジルコニアで外はポーセレンセラミック
もし、破損等のトラブルの可能性を少しでも減らしたい方は、
- インプラント体の上にチタンなどの金属で製作したアバットメントを装着
- 金属でフレームを製作してポーセレンにて天然の歯のような色形を模写したクラウンを装着
この組み合わせが良いと思います。
チタンのアバットメント
中身が金属、外がポーセレンセラミック。
中が金属で外がセラミックだと根元が黒くなることもある
インプラントの前歯へのクラウンですが、最終的には、きちんとした知識と経験がなければ、良い材料を使用しても壊れることもあります。
大切なことは、患者の噛み合わせやアレルギー、そして歯茎、埋めたインプラントの具合によって適した材料を選択できる歯科医師と出会うことです。
それがトラブルを少なくして自然で長持ちするインプラント治療を受ける上で何よりも大切です。